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eFootballを「世界で一番やり込んだ」男…世界制覇を果たした東京ヴェルディeスポーツTakaki、その努力の軌跡とは

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東京ヴェルディeスポーツのTakaki

 東京ヴェルディeスポーツ eFootball™部門に所属するTakakiは、8月13、14日に行われた公式大会『eFootball Championship Open 2022』の世界大会「World Finals」で優勝。同タイトルにおける最高位の冠を手にした。ゲキサカではeFootballの頂点に立ったTakakiにインタビュー。現在の心境や大会の振り返りをうかがった。

 全世界のユーザーが対戦するeFootballシリーズ最大規模の公式大会『eFootball Championship Open 2022』は、今年6月からオンライン対戦をスタート。TakakiはSTEAM版のラウンド1、2、3を勝ち進む。ラウンド4はアジア大会だが、日本人勢が5人出場。Takakiは準決勝で、ライバルでありともに練習を積んできたうでぃを撃破する。決勝に駒を進めたTakakiはまたしても日本人選手のししを破る。世界大会「World Finals」には、Takakiとししの出場が決定した。

「World Finals」はSTEAM、PlayStation、XBOX、Mobileのプラットフォーム4部門ごとに6人が出場し、3人ずつの2グループで総当たり戦を実施。2グループから上位1人ずつが決勝に進み、世界No.1を決める。Takakiはグループリーグを2連勝で突破。決勝は4-0と快勝し、世界の頂点に立つ。日本人の優勝は、2020年のあるとに続く2人目となった。


世界制覇を振り返って


──優勝おめでとうございます。優勝した瞬間の思いを聞かせてください。
「めっちゃ叫んでしまいました。すごく嬉しかったです。一年間でつらいこともあって、やりこんでいる上でイライラすることもありました。そういうのが全部こみ上げて涙が出てきました」

──昨年は日本勢のみのサーバーに出場し、そこでエビプール選手に敗れて準優勝でした。
「昨年は日本のサーバー、アジアサーバー、ヨーロッパサーバー、南米サーバーのそれぞれで1位を決めていました。大会の位置づけとしては実質の日本一を決めるもの。エビプールさんに決勝で負け、悔しい思いをしました」

──世界大会「World Finals」のグループリーグはいかがでしたか。
「Bグループは、アジア1位の僕と、ヨーロッパ2位の選手、南米2位の選手の3人総当たりでした。初戦が本当に大事ですね。3人だけなので初戦で負けると2試合目を勝っても突破できない可能性が出てくる。まずは引き分け以上、最低限引き分けを狙って、しっかり勝ちに行くけど負けないことが大事というメンタルで臨みました」

──グループリーグ突破で、次は優勝決定戦でした。
「待ち時間が長かったので、グループAに出場していた日本人のしし選手から、決勝の対戦相手について聞きました。ボールをよく蹴ってくるとは聞いていて、実際に試合をすると、その通りボールを蹴ってきてくれました。僕としてはやりやすかったです」

──決勝はかなり優位に試合を運んでいましたね。
「結果的には4-0で圧倒したんですけど、相手の選手がちょっと緊張しているなという感じがしました。ロングボールの対策を練って、僕は落ち着いてしっかりボールを持って攻めていこうと。先制点を取られると、ロングボールを蹴られて守備的な形に持っていかれるので、先制点を取ることが大事だと思いました」

──対戦相手は南米ペルーの選手でしたが、大陸別でプレーに違いはあるんでしょうか。
「ヨーロッパと南米でやってくるサッカーは少し違います。南米の選手は、少しでも負けそうになるとガンガン攻めてくる。前にガンガン来て、負けていたら攻守レベルは全部上げる。点を取られてもいいから点を取りに行こうという感じでした。ヨーロッパは逆に、点を取られてもそんなに来ない。落ち着いている印象があります」

──クラブ選択はモナコにされていました。このチョイスは“鉄板”なんでしょうか。
「世界大会の出場者でいうと、僕ともう一人だけ。バイエルンやバルセロナが多い印象ですね」

──なぜモナコを選ばれたんですか。
「実在するプロクラブ同士の対戦であるeFootball Proでモナコが優勝していたんです。メンバーは昨シーズンのもので南野拓実もまだいないんですが、DF陣もフィジカルや高身長の選手が揃っていました。レアル・マドリーに移籍したオーレリアン・チュアメニなど使いやすい、スキルを持った選手もいます。3トップも、足が速いウィサム・ベン・イェデル、ケビン・フォラント、マイロン・ボアドゥといった特徴を持った選手たち。ベン・イェデルはすごく使いやすいです。最初はシンプルにベン・イェデルを使いたいと思っていたんですが、チームの能力を見ていくうちに全体的に戦力が揃っていることに気づきました」

たゆまぬ努力は裏切らない


──優勝までの道のりは大変でしたか。
「去年の大会でエビプール選手に負けてからずっと悔しかったんです。負けた後もめちゃくちゃやり込んで、eFootballが出てから僕が世界で一番やり込んでいるんじゃないかというくらいでした。トップレベルの人を見ても、試合数は倍以上はやり込んでいましたし、実力的にも精神的にも、自分だったら負けないという自信はつきました」

──練習時間は嘘をつかないことを証明しました。
「ただやっているだけじゃ駄目だと思うんです。自分なりに工夫して、いろいろ考えながら僕もやっているんですけど、でもやっている時間が人より多いと、それだけ自信にはなりますね。あと大会の場数も経験になりました。去年も東京ヴェルディeスポーツで タイを配信拠点に開催されたアジアリーグに参加しましたが、真剣勝負の大会の場数を踏むことも大事だなと思いました」

──eFootballは昨年9月の配信時にバランスの悪さやバグが見られ、今年4月のリニューアルまでブランクがありました。
「その間は何もせず、今年4月からやり込みました。PS版だけで750時間、STEAM版を含めたら800時間くらいですね。試合数だと1500から2000試合はやっています」

──配信スタートの4月から大会までどのような生活でしたか。
「一日5、6時間プレーをしていて、大会前は12時間ですね。僕は夜勤でも働いているので、午後11時に家を出て帰宅が午前5時。帰宅後1、2時間やって寝て、午後1時に起きてまた2時間。その後は走って筋トレして、帰ってまたプレーする。ごはん食べてまた仮眠して、仕事に行くという形です。夜勤は、終電が終わった後に駅設備を回る仕事で少し肉体労働。体を動かすほうがいいですね」

──今回の賞金は1万3000ドルということですが、使い道は考えていますか。
「お世話になったプレーヤーたちとごはんを食べようかと考えています」

──eFootballを始め、サッカーゲームのeスポーツ選手たちはライバルとの仲がいい印象です。
「強い人と対戦してそこからつながる。仲がいいプレーヤーからほかのプレーヤーへ。そこからだんだん仲良くなって、大会の調整を行ったりもしますね。いま一番仲がいいのはうでぃさんで、毎日ボイスチャットをつないでeFootballをやるくらいです」

──東京ヴェルディeスポーツに2020年春に加入。この2年で日本を代表するプレーヤーまで上り詰めました。
「2年前は、まず日本代表にならないといけないという目標があって、やっと代表になれて世界で戦えて……という感じでした。2年経って日本代表になるのは、自分の中では当たり前になってきています。あとは世界でしっかりと結果を残さないといけない。そういう気持ちで毎日練習しています」

──eFootball Openの後は、プロサッカークラブが選手を選抜して戦う大会『eFootball Pro』があります。
「eFootball Proで活躍して、日本人のレベルの高さを海外に知らしめないといけない。今回eFootball Proに選ばれなかったとしても、継続して世界で活躍することを目標に頑張っていきたいです。日本人の選手がもっとeFootball Proに出られるように。それが僕の目標です」

──9月には『全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2022 TOCHIGI』や『eJリーグ』も控えます。国体では出身でもある神奈川県代表として戦いますね。
「国体では、なかなか県の代表として戦うことがないので、そういう意味でも神奈川県代表として優勝したいです。楽しみですね」

(取材・文 石川祐介)

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