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[選手権予選]鹿島内定コンビ擁する大津、野田延長V弾で2年ぶりV!:熊本

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[11.23 全国高校選手権熊本県大会決勝 ルーテル学院0-1大津 KKウイング]

 第91回全国高校サッカー選手権熊本県大会決勝が23日、熊本県民総合運動公園陸上競技場(KKウイング)で行われ、ルーテル学院と大津が激突。延長後半2分にMF野田卓宏(3年)が決めた決勝FKによって大津が1-0で勝ち、2年ぶり15回目の全国大会出場を決めた。大津は12月30日開幕の全国大会1回戦(12月31日)で北海道代表の旭川実と対戦する。

 試合終了の笛が鳴り響いた瞬間、AFC U-19選手権日本代表の注目CB植田直通主将(3年、鹿島アントラーズ加入内定)が両拳を空へ突き上げ、イレブンたちが歓喜の抱擁を繰り返す。100分間の激闘の末、昨年敗れたルーテル学院との「熊本頂上決戦」勝利。15日に父・重徳さんを78歳で亡くした平岡和徳監督の安堵感に満ちた表情も非常に印象的だった。帝京高(東京)主将として全国制覇を成し遂げている指揮官にとって今年は大津監督就任20年目、そして同校は創立90周年の節目の年でもある。「ホッとしましたね。父の他界があって、昨日が初七日で。(慌ただしい中)とにかく前に行くしかないと思ってやってきました。ボクは尊敬していましたから。たくさんのことを教えてくれた父ですから。繰り返し、恩返ししていくしかない。(きょうも)きっどこかで見てくれているでしょう」と選手たちのはしゃぐ姿を遠目で見つめながら、平岡監督も静かに優勝の喜びを噛み締めていた。

 決勝は互いに隙を見せない緊迫した展開となった。大津は前半7分、野田の右CKを植田が頭で合わせ、17分にはMF土肥大輝(3年)の右クロスから鹿島アントラーズ加入内定のエースMF豊川雄太(3年)がヘディングシュートへ持ち込んだ。対して、立ち上がりから前への姿勢を見せていたルーテル学院はともにファーストDFを冷静に外す技術を持ち、バイタルエリアでは決定的な仕事もしてのけるMF牧野慎太郎(3年)とMF竹脇大稀(2年)のダブルボランチが存在感を発揮。2人のゲームメークからスペースへ飛び出すFW谷川望(3年)や右MF中原輝(1年)が仕掛けるが、植田を中心とした大津の守りは非常に強固で前半はシュートを1本も放つことができなかった。

 一方、大津は中盤の底の位置からボールを左右に振り分けるMF児玉卓也(3年)の展開から、右サイドを打開する土肥のドリブルやダイレクトのパスワークでゴールへ迫る。29分には左CKのこぼれ球から連続シュートを放つなどスタンドを沸かせる場面もあったが、相手に楔のパスを狙われ、またサイドアタッカーにマンマーク気味にDFをつける相手を崩しきれず。9月の鎖骨骨折から急ピッチで仕上げてきた豊川も時折輝きを見せるものの万全ではなく、試合の流れを傾けるには至らなかった。

 ともにリスクを避けたロングボールが増え、ボールが落ち着かない展開。その中でよりボールを動かしていた大津に徐々に流れは傾いた。10分には野田のインターセプトからチャンスをつくり、右の山下純平、左の村上順哉(ともに3年)の両SBが攻撃参加する回数も徐々に増えていく。そしてセットプレーではサイズの差を活かしてゴールへなだれ込もうとした。だが、大津も、MF三北啓矢主将(3年)のドリブル突破をアクセントに攻めるルーテル学院も、決定打を撃ちこむことができず、スコアは動かない。

 後半終了間際には中央でわずかに空いたスペースを逃さなかった大津・野田のドリブルシュートがゴール右ポストを直撃。相手をシュート2本に封じながらも12本のシュートで点を奪えない大津は延長戦へと持ち込まれた。それでも延長後半2分、大津は右FKで前線へ上がっていたCB毛利栄佑(3年)がセカンドボールを左タッチライン際で粘ってFKを獲得。これを野田が右足でゴール方向へと放り込むと、クリアしようとしたDFの頭をかすめたボールはそのままゴール右隅へと吸い込まれた。

 92分に生まれた待望の先制ゴール。青の名門は応援席の前で喜びを爆発させた。その中でいち早く自陣に戻った植田は「ここで点を取られたら一緒。ここからが自分たちの勝負だと思った」。気を緩めることなくルーテル学院の反撃を迎え撃った大津は、PAまでボールを放り込まれてもシュートを打たせず1点を守り1-0勝利。ライバルを僅差で上回り、全国切符を勝ち取った。

 今年の大津はプリンスリーグ九州1部で2連覇を達成。1年生大会から、新人戦、総体予選、天皇杯予選、そして選手権予選と熊本県内のタイトルをことごとく獲得してきた世代だ。Jリーグ、そして大学サッカー界にも多くの好選手を輩出している大津。植田と豊川にどうしても注目が集まるが、「一人ひとりの精度を上げていくことに尽きますね。あとはストロングポイントを磨く」平岡監督の指導の下、今年もGKから前線までポテンシャルを秘めた選手がピッチ、ベンチにもズラリと並ぶ。九州のタレント軍団は「プロになれたのも平岡先生のおかげ。今できる恩返しは平岡先生を日本一の監督にすることだと思う。それは必ず成し遂げたいです」と豊川が意気込み、植田が「自分はまだ恩返しできていない。全国制覇して平岡先生に恩返ししたい」という思いを遂げることができるか。過去14回の選手権での最高成績は8強。2年前は開幕戦で黒星を喫し、今年の全国総体では初戦敗退と全国舞台ではなかなか成績を残せていない。その歴史を今回こそ。逸材・植田を中心に全国の頂点を見据えた戦いがプレミアリーグEAST所属の難敵・旭川実と戦う初戦から始まる。

(取材・文 吉田太郎)
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