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[MOM700]実践学園MF原大和(3年)_「自己中」から脱却したアタッカー

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.30 全国高校選手権1回戦 実践学園2-1東海大五 国立]

 勝負を決めるタイミングを見逃さなかった。後半7分にPKで先制した実践学園(東京B)。不運な形で失点し、気落ちする東海大五(福岡)を一気にたたみかけた。直後の8分、相手のバックパスに対しMF原大和(3年)がプレッシャーをかける。ボールを奪ってドリブルで独走。DFを抜き去り、左足でゴール右に流し込んだ。

「PKで先制して、監督からも『前から行け。ここで決めるぞ』という指示が出ていた。自分の持ち味であるドリブルで突破して、点を決められた。(コースはGKの)股しかなかった。股を狙って転がした」

 2-0と勝利を大きく手繰り寄せる追加点。前半は左サイドハーフで先発していた原が後半からFWに移ったポジション変更も奏功した。「自分は守備が苦手で、スタミナもあまりない。前半はサイドで仕掛けて、後半はFWに出て、プレッシャーをかけたり、裏に抜けたり、スピードを生かすというのが最近のオプション」と胸を張る。

 高校2年時までは生粋のFWだったという原がサイドハーフに転向したのは新チームになってから。それでも一時はスタメンからも外れ、今夏の全国高校総体2回戦で先発復帰するまではスーパーサブでの起用が続いていた。「ドリブルが大好きで、それにこだわっていた。“自己中”でしたね」。当時の自分を振り返る原だが、転機となったのは深町公一監督からの言葉だった。

「監督に何回も言われて、洗脳された。怒るタイプじゃないけど、ネチネチと何回も言われた。自己中なプレーでミスしたときには『論外だ』とも言われた」

 元セパタクローの日本代表で、1994年のアジア競技大会ではキャプテンも務めた深町監督は「心で勝負」をチームのモットーに掲げる。「(セパタクローで)アジア大会や世界大会に出て、一流の選手というのは人間性が優れている。それを指導理念に入れた」という監督が、選手の自己中心的なプレーを認めるはずがなかった。

 技術面でも進化した。2年前に就任した野口幸司コーチから「仕掛けるときに周りを使う重要性を教えてもらった。『周りを生かそうとすればDFの対応が変わる』と」という原。「昔はドリブルして突っ込んで取られていたけど、周りを使おうとすれば、DFの体の向きが変わって抜けるようになった」と、現役時代に平塚(現湘南)などで活躍した元Jリーガーの指導に感謝していた。

 後半36分にベンチへ下がり、「最後は相手がパワープレーに来て、見ているのがつらくてトイレに行っていた」と苦笑いした原だが、記念すべき全国高校選手権初勝利に「歴史を塗り替えられたことがうれしい」と笑顔を見せる。全国高校総体はベスト16。夏の記録を塗り替える準々決勝進出が当面の目標だ。

「3回戦では桐光学園と四日市中央工の勝者と対戦する。もちろん、2回戦の相手も強いと思うけど、しっかり勝って3回戦に行けたら」。2回戦、3回戦を突破し、初のベスト8へ。歴史的1勝にも満足することなく、先を見据えた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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