beacon

[選手権]玉野光南が虎の子の1点を守り切る、東北から自由を奪う猛烈プレス

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.31 全国高校選手権1回戦 玉野光南1-0東北 駒場]

 決して快勝ではなかった。東北(宮城)にゴールを脅かされる場面は何度もあった。しかし、玉野光南(岡山)の選手は最後まで走り抜き、1点を守り切った。苦しみながらも1-0の完封勝利で大会初戦を飾ったチームを、乙倉健二監督はこう評している。「うちは小粒なチームだと自覚しているので、一戦必勝で戦うしかない。自分たちは勘違いしてはいけない」。

 序盤から前線を目がけたロングボールで好機を生み出そうとした両チーム。早い時間帯で得点に結び付けたのは玉野光南だった。前半11分、FW土居晃貴(1年)が自陣から相手DFラインの裏に落ちるボールを蹴り出す。このボールの落下地点が絶妙だった。東北のGK石垣譲一(2年)とDF高橋海斗(2年)の間に落ちたことで、両者はボールに寄せ切れない。そこにFW中井レアーズ(2年)が猛烈な勢いで走り込むと、クリアを試みた石垣と高橋が交錯してしまい、こぼれ球を中井が悠々と無人のゴールに流し込んだ。

 先制を許した東北は丁寧につないで玉野光南陣内にボールを運んだ。中盤のMF渡辺匠(2年)が攻撃のタクトを振るい、正確に左右に散らして攻撃を組み立てる。左サイドのFW寺島尚哉(3年)はボールを受けるとドリブル突破で状況を打開しようとした。しかし、サイドを崩してもラストパスを相手守備陣に跳ね返され、なかなか決定機をつくれない。対する玉野光南はボールを奪えば、縦に速い攻撃で東北ゴールに迫ろうとする。ボールがタッチラインを割れば、しめたもの。FW古矢涼(3年)のファーサイドまで届こうかという矢のようなロングスローで好機を生み出した。

 ともに主導権を握り切れず、ゴールを奪えないが、ボールの回収力で上回っていたのは玉野光南。1トップの中井やサイドハーフの古矢、土居が激しく前線からプレッシャーをかけ、相手DFラインの選手からパスコースを消し去る。「東北のDFラインには良いボールを蹴れる選手が多い。だから、ある程度は前から行かないと自由にボールを回されてしまう」。乙倉監督が狙いを語ったように、前線からの猛烈なプレスでボールを奪い、ショートカウンターにつなげた。

 1-0のままスコアが動かずに迎えた後半に入ると、玉野光南のプレスに苦しんでいた東北が序盤からチャンスをつくる。後半4分には複数の選手が絡んだ鮮やかなコンビネーションで相手守備網を切り裂き、DFラインの裏にFW寺島尚哉(3年)が抜け出す。シュートコースを防ぎにきた玉野光南守備陣をあざ笑うように、グラウンダーのクロスをゴール前でフリーのFW佐藤凌太(3年)に送った。惜しくもシュートはゴールマウスを捉えなかったが、目を見張るような連係でゴールの匂いを十分に漂わせた。

 後半29分には同時に2選手を入れ替えて、何とかして同点に追い付こうとする東北だったが、ここで再び玉野光南の猛烈なプレスが襲う。時には敵陣でボールを奪い、ショートカウンターから好機をつくったように、1点を守ろうと守備を固めるわけではない。あくまでアグレッシブな守備を実践し、試合を決定付ける2点目を狙い続けた。後半36分にはFW難波大智(3年)が足をつってピッチをあとにしたように、運動量が落ちてもおかしくない時間帯に入っていたが、青色のユニフォームを身にまとった選手たちは愚直にボールを追いかけ回した。

「スタメンの選手には『行けるところまで行ってくれ』と話していたし、最後の最後でチームを前に引っ張るパワーを交代選手が見せてくれた」。乙倉監督が語ったように、難波に代わって入ったFW桑田大樹(1年)や、後半39分に中井と代わったMF定森大輝(3年)も激しくプレッシャーをかけ続け、相手選手がフリーでボールを供給する場面を簡単にはつくらせない。相手キッカーから自由を奪うことが、東北のパワープレーの精度を下げさせる効果も生んでいた。最後まで走り抜き、1-0の完封勝利。乙倉監督も「選手たちはよくやってくれた。粘り強い、ウチらしい戦いができました」と、選手への賛辞を惜しまなかった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP