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[MOM938]玉野光南FW古矢涼(3年)_会場の度肝を抜いたロングスロー

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 玉野光南1-0東北 駒場]

 この試合のクライマックスは、FW中井レアーズ(2年)が決勝点を奪った前半11分の場面だったのかもしれない。しかし、唯一となった得点シーン以上に、スタジアムに足を運んだ観衆を盛り上げた男がいる。FW古矢涼(3年)がタッチライン際でボールを手にし、ゴールに向かって助走を開始すると、会場はどよめき始める。手から放たれたボールは、ものすごい勢いで一直線にゴール前まで飛ぶのだから――。

「小学生のときから他の人よりも飛んでいましたが、中学生のときに『結構、飛ぶな』と自覚するようになって、高校に入ってからは中学のとき以上に飛ぶようになったので自信を持って投げています」

 古矢が観衆の視線を一身に集めるのが、スローインの場面。まさに矢のごとく、ボールがゴールに向かって飛ぶのだ。「調子が良ければ、ファーサイドまで届きます」と自身が語るように、この日は絶好調の日。惜しくも得点には結びつかなかったものの、序盤からファーサイドまで届こうかというボールを投げ続け、会場を大いに沸かせた。

 このロングスローには、乙倉健二監督も太鼓判を押している。「僕が見た中でロングスローは高校年代で日本一だと思います。ウチの武器をようやく全国に見せられました」。だが、それだけの武器を持ちながらも、ロングスローにばかり注目が集まるのは本人にとって不本意なようだ。「ロングスローのことばかりを言われたら、嫌ですね。プレーの面でももっと見てほしいんです」と笑って答えた。

 乙倉監督が「ようやく全国で見せられた」と語ったように、全国選手権の切符にはなかなか手が届かなかった。前回大会まで8年連続で出場してきた作陽が、あまりにも大きな壁として玉野光南の前に立ちはだかっていたからだ。しかし、今大会は県予選決勝でPK戦の死闘を制し、ついに作陽を下した。作陽の連続出場を止めてつかんだ9年ぶりの出場権。「自分たちの代が作陽に勝てるとは思っていませんでした。ただ、全国でも強豪と呼ばれるチームを下したことで自信にもなりました」と古矢は言う。

 高校生活最後で、ようやく手に入れた選手権の切符。手が届かないと思っていた切符をともに勝ち取ったからこそ、このチーム、そしてチームメイトには特別な思いがある。「今日の朝、ホテルで3年生だけでミーティングをしたんです。一人一言ずつ話していったのですが、『最高の年代でサッカーができて良かった。この代じゃなかったら、全国に来れなかった』という話をして、泣いてしまいました」。

 スタメン11人のうち下級生が6人を占めるため、同級生だけでチームが編成されているわけではない。「正直、下級生の方がうまいですからね。学年は違いますけど、心強い仲間です。試合に出られない3年生の気持ちも背負い、一戦一戦しっかりと戦っていきます」。“最高の年代”でのプレーを1試合でも多くこなすため、度肝を抜くロングスローを披露しながら、「競り合いの強さや動き出しの部分」という自身が自信を持つプレーで一戦必勝を期した。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


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