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[選手権]聖和学園との“潰し合い”に完勝、エース不在を感じさせなかった尚志が東北勢で唯一3回戦へ

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[1.2 高校選手権2回戦 聖和学園0-3尚志 柏の葉]

 全国高校サッカー選手権大会は2日、2回戦を各地で行い、柏の葉競技場の第1試合では尚志高(福島)が、聖和学園高を3-0で退け、3回戦に駒を進めた。3回戦では、立正大淞南高(島根)と対戦する。

 因縁があった。昨年9月27日のプリンスリーグ東北の最終節での対戦、首位で迎えた尚志だが、0-1で落とし、ベガルタ仙台ユースに優勝を奪われた。直接対決は1勝1敗と五分だった両チームだが、尚志にとっては、悔しさしか残っていなかった。「リベンジの気持ちは一人一人強かった」。主将DF山城廉(3年)も気合十分で試合に臨んでいた。

 前半から尚志の積極性が目立った。前半2分にMF津田亘介がボレーシュートでファーストシュートを放つと、同22分にはゴール前のこぼれ球をFW小野寛之(2年)が蹴り込む決定機を迎えるが、GK中島尚人(3年)の好セーブに阻まれた。

 だが前半23分、尚志がゴールをこじ開ける。DF松葉知己(3年)がドリブルで切り込むと、右足ミドルを狙う。相手DFに当たってこぼれるが、拾った小野が左ポストに当てながらも、今度はきっちりゴールネットを揺らした。

 さらに前半36分、今度は「聖和戦のために練習していた形」(仲村浩二監督)で追加点を奪う。中盤でボールを持ったMF津田が、DFの裏に浮き球パスを出すと、FW澁谷和平(3年)が反応。GKとの1対1を制し、追加点を奪った。

 尚志は12月31日に行った広島皆実との1回戦でエースFW林純平(3年)が左内側筋負傷を悪化させて途中交代。この日は起用できない状態にあった。その代わりに起用された2トップ、小野と澁谷が揃って得点。特に今季は主にレギュラーとして活躍していたにも関わらず、1回戦のスタメンを外されていた小野は、「(初戦は)スタートじゃなくて悔しかった。(林からも)試合前に点を決めてこいと言われていた」と意地のゴールを喜んだ。

 後半に入っても尚志の勢いは衰えなかった。5分、右サイドからMF稲村知大がロングスローを入れると、MF鈴木大がヘディングでそらす。これをファーサイドで受けた山城が、見事なコントロールから右足でゴールネットを揺らした。「山城ってあんな巧かった!?」。ベンチも驚いたプレー。本人も「足もとに入り過ぎましたが、枠内に飛ばせば何とかなると思った。運使っちゃったかな」とおどけてみせた。

 一方の初戦の秀岳館戦を4-1で快勝し、いいスタートを切ったかに思えた聖和学園だが、 ともにプリンスリーグ東北を戦い、隣県同士ということで何度も練習試合を繰り返す相手に完封負け。チャンスらしいチャンスも作ることが出来ず、前半終了間際にDF佐々木澪(3年)や、後半18分にDF大久勇馬(3年)が放ったシュートも枠を捕えることはなかった。「チームとして(実力を)出し切れなかった。向こうの守備にはまってしまった」。主将の佐々木は完敗を認めるしかなかった。

 負傷を抱える選手を温存し、代わりに出た選手が得点する。理想的な勝利を挙げた尚志だが、残っていた東北勢2校が“潰し合い”をしたことで、東北勢唯一の3回戦進出校となってしまった。ただ勝ち進むことで、破れていった東北勢の無念を晴らすことにもなるはず。聖和の選手たちも「優勝してくれ」と尚志イレブンにエールを送った。

 3年前、尚志高は東日本大震災の影響が大きく残る中で、全国選手権4強に進出し、多くの人に夢を与えた。今チームにいるメンバーにも、震災後は原発事故収束のための中継基地として利用されているJヴィレッジ出身の選手が複数いる。「子供たちの体力が低下している県。今でも小さい子たちが苦しんでいる」と神妙な表情で話した仲村監督。「ベスト4に入った時は、勇気を届けることができた」。福島復興の旗手として――。尚志は進撃を止めるわけにはいかない。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 児玉幸洋)
【特設】高校選手権2014

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