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[選手権予選注目校]3年連続全国8強以上、今年も高まってきた“冬の京都橘”の気配

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 準優勝を果たした12年度大会から、3年連続で全国高校選手権に出場。強豪が居並ぶ京都で圧倒的な存在感を示すのが京都橘高(京都)だ。彼らの特徴と言えるのが、選手権が近づくにつれ見せる驚異的な追い上げ。夏までは苦戦が続いていても、秋以降にグンとチーム力を上げ、全国大会への出場権を獲得し、準優勝、ベスト4、ベスト8という結果を残してきた。

 ただ、今年に関しては、「例年のチームに比べて力がない。個人の力がここ数年に比べて落ちる」と米澤一成監督が話すように、例年と違って不安が残る。この2年は上級生が卒業しても、主力の半数近くが残り、前年からの継続した強化が可能だったが、今年残った主力はGK矢田貝壮貴(2年)、DF小川礼太(3年)、そしてU-18日本代表のFW岩崎悠人(2年)の3名のみ。「今年のチームは気持ち的に『緩い』と言われている」(FW堤原翼、2年)ことも相まって、ここまで新人戦、インターハイ予選ともに久御山高に王座を譲ってきた。参戦2年目の高円宮杯プレミアリーグWESTでは第15節でようやく初勝利を挙げた昨年と打って変わり、第3節の神戸U-18戦で初白星を飾ったが、前期の残り6試合は1勝も出来ず。毎試合失点を重ねるなどネガティブな要素が多く、「自信をつけることができず、下を向いてばかりだった」(小川)。

 決して順調とは言えない日々を過ごしてきたが、今年も“冬の京都橘”の気配は感じる。「夏までは、チームのやりたいサッカーをやるけど、夏休み以降はトーナメント向けの戦いを整備する。『自分たちのサッカー』だけでなく、『相手がどういうサッカーをするのかという事』を考えさせる」と米澤監督が話すように、今年もまた夏休み中に“負けないチーム”への準備を進めた。「夏に色んなスタイルのチームと対戦したことで、臨機応変な対応が出来るようになった。守備で我慢できるようになってきたし、課題だったクロスボールへの対応も良くなったと思う」と小川は話す。米澤監督も「コンスタントに点を取る安定感、守り切る安定感が欲しい」と前置きしたうえで、「スタートが今年は低かったからかもしれないけど、夏休みでかなり成長した」と選手たちの成長を評価する。

 また、U-18日本代表の一員として出場したAFC U-19選手権予選でゴールを奪うなど、エース岩崎が日に日に逞しさを増しているのも心強い点。「昨年はインターハイも選手権も前橋育英に0-4で敗れてしまった。特に選手権はあと一歩で、埼玉スタジアムに行けたのに、ベスト8で負けたのは悔しいし、あの舞台で勝てる先輩たちの偉大さを感じた。今年こそは埼玉スタジアムの舞台に立ちたい」と意気込む。前線で違いを見せる岩崎頼みになるのではなく、堤原やFW坂東諒(3年)が負けない存在感を見せることが出来れば、今年も冬の晴れ舞台にグンと近づくはずだ。

「言われっぱなしは嫌やし、見返したい気持ちが強い」。小川がそう口にするように、高くない前評判を覆そうと選手たちの意気込みは強い。4年連続で、選手権全国大会の舞台に立てるか、今年も京都橘の戦いから目が離せない。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。
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