beacon

[MOM1555]星稜MF川渕陸(2年)_大きな責務を果たしきった「インターセプトの職人」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.1 全国高校選手権石川県予選決勝 星稜高 3-0 鵬学園高 石川県西部緑地陸上競技場]

 星稜高が17連覇を懸けた石川県予選決勝で、大きなタスクを背負っていたのが、2年生ボランチの川渕陸だ。

「河﨑監督から10番(弥村信幸)をマンマークしろと指示を受けました」。鵬学園高最大のキーマン・トップ下の弥村信を封じることこそが、勝利への近道。そう判断をした名将からの命は、彼の守備技術への信頼の表れだった。

「この試合は自分に懸かっていると思ったので、最初は緊張しましたが、立ち上がりすぐに周りがしっかり見えていたし、10番の動きも把握出来たので、『いける』と思いました」。
この言葉通り、彼はこのタスクを忠実かつ柔軟に対応してみせた。弥村信が最前線に上がると、追いかけるのをやめ、岡田勇斗東方智紀の両CBに受け渡し、自らはプレスバックと奪った後のカウンターの起点に意識を働かせた。

 彼の頭脳的な守備に苦しめられた鵬学園は、途中で弥村信とボランチの千葉東泰共のポジションを入れ替えたが、彼は冷静だった。「急に10番が千葉東と8番(小坂祐心)が話し合いを始めて、『何だろう』と思っていたら、ポジションが入れ替わった。そのまま10番についていこうとも思ったけど、それをやるとこれまでの均衡が崩れてしまう。なので、僕は千葉東を見ることにしました。千葉東は国体で一緒にやっているので、プレースタイルはよく分かっていましたから」と、セルフジャッジ。ドリブルが上手い千葉東の特徴を理解して、彼の武器を封じた。

「得意技はインターセプト」と語るように、彼は相手の状態、目線、そして周りの状況を相対的に見て、出足のタイミングや、行くところと行かないところをしっかりと判断を入れてプレーをしている。だからこそ、インターセプトが決まるのだ。

 実は川渕、小学校まではテクニック系のFWだった。しかし、中学校に入ると、3年間で22cmも身長が伸び、159cmから181cmにまでなった。「大きくなったのは良いのですが、今度はテクニックがついていかなくなって(笑)。そうしたら当時(エスポワール白山FCジュニアユース)の恩師が『ヘッドとインターセプトを磨け』と、僕をCBにコンバートしてくれたんです。これで自分が進むべき道がはっきりして。本当に感謝しています」。星稜に入ると、今度はボランチにコンバート。よりインターセプトが生きる場を手に入れた。

 そして、2年で名門のレギュラーの座を掴むと、17連覇の懸かった決勝では相手エースを封じるだけでなく、守備のバランスも司り、3-0の完封勝利に貢献。大きな責務を果たしきってみせた。

「まだまだ攻撃面では大橋(滉平)さんに頼っている部分が多い。でも、いつまでも大橋さんに頼ってはいけない。もっと自分でコントロール出来るようにしないと」。課題はビルドアップとラストパスの精度。「インターセプトの職人」というべき2年生MFは、ダブルボランチのコンビを組む、チームの大黒柱・大橋滉平という最高の手本に頼り切るのではなく、「自立」を誓った。

(取材・文 安藤隆人)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015

TOP