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[選手権]中1で久我山に魅せられて…ルーキーDF上加世田「今度は自分が楽しませたい」

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[1.9 全国高校選手権準決勝 青森山田1-2國學院久我山 埼玉]

 初の決勝進出を果たした國學院久我山の最終ラインで戦う一人のルーキー。DF上加世田達也(1年)は中学1年生のときに久我山の試合を見て、「こんな美しいサッカーができるんだ」と心動かされたという。そして勉強を続け、一定の成績を得るとスポーツ推薦を勝ち取り、久我山へ進学した。そして入学から1年と経たずに主力に定着。DF野村京平(3年)とのCBコンビで最終ラインを支え、同校史上初の決勝行きへ貢献した。

 幼い頃から高校選手権を現地観戦し、「高校生でこんなに人が入る試合があるんだと感激していました」という。その後、Forza'02でプレーしていた中学1年時の冬に久我山に魅せられると、なかでも2013年度全国高校選手権での久我山MF渡辺夏彦(現・慶應義塾大)らのプレーに「今まで見たことない美しいサッカーをしていて、すごい印象を受けました」と胸打たれた。

 そして思いは実り、2015年春に久我山へ進学。「見ていたときは(久我山のサッカーに)楽しませてもらって。今度は自分が楽しませたい。観客に沸いてもらいたい」という意気で高校生活は始まった。「思ってもいなかった」というが順調にポジションを勝ち取り、ルーキーながら主力に定着。中学時代にプレーしたForza'02が「フィジカル系のチームだったので、そこは自信をもってやれています」とパワーで負けないことが武器になったのだ。これまで培ったフィジカルに、久我山で学んだ技術や身体の使い方が上乗せされ、DFとして一皮向けた。

 外から見ていた“高校サッカー”は上下関係などに厳しく「怖いイメージだった」が、中に入ってみると違っていた。「すごくみんな優しくて。最初から仲良くしてくれました」と話すとおりだ。また文武両道で多忙な日々だが、「先輩たちも時間をしっかり使いながらやってきた。文武両道すれば高校生活は充実するし、充分に楽しめる」と笑顔をみせる。

 順調すぎるほどのルーキーイヤー。入学から約8か月が経ち、夢の舞台だった高校選手権がやってきた。一気に駆け上がってきたDFは初戦から臆することなくプレー。憧れだった集団・久我山の一員として、背番号4を背負うとしっかりと相手の攻撃を食い止めた。

 この日の準決勝・青森山田高戦では「最初はすごい雰囲気で呑まれてしまった」と言うが、自らを奮い立たせると平常心を取り戻した。「最初の5分はやばいなと思いましたけど、あとは楽しませてもらいました。あそこで持ち直すことができたのが一番大きいと思う」と胸を張る。

 憧れだった久我山で先発の座を勝ち取るだけでなく、決勝行きまで成し遂げたDFは「自分がこんなすごいところでプレーできるなんて思ってもいなかった。でも明後日の決勝では、自分がそこに立てる。思い切ってやりたい」と明後日の決勝戦を見据え、「久我山のサッカーは美しく、観客が沸くサッカーをしていて。自分はポジションが後ろなので、それを後ろから支えたい。後ろから前の選手がやりやすいようなボールを供給したいと強く思っています」と誓った。

 久我山を後方から支えるルーキー・上加世田を見て、選手権の舞台あるいは久我山への進学を目指す少年がどこかにいるかもしれない。チーム毎に異なる美学を貫き、必死にボールを追う選手たちの姿は、意図せぬ形で未来の“選手権プレイヤー”を生んでいる。

(取材・文 片岡涼)
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
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