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[選手権予選]「いなせ!」「いなせ!」の声に呼応した中央学院が魅せて勝つ:千葉

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前半1分、中央学院は先制ゴールを決めた大野がガッツポーズ

[10.10 全国高校選手権千葉県予選決勝T1回戦 中央学院高 3-1 東海大市原望洋高 中央学院大学つくし野総合G]

 第95回全国高校サッカー選手権千葉県予選は10日、決勝トーナメント1回戦の残り2試合を行った。昨年度4強の中央学院高と東海大市原望洋高との一戦は中央学院が3-1で勝利。中央学院は29日の2回戦で八千代高と戦う。

 ゴール裏に陣取る中央学院の控え部員からは「いなせ!」「いなせ!」の声が飛んでいた。選手たちはその声に呼応。この日、誰よりもDFをかわしていたMF児玉駿斗主将(3年)が「(応援で)言われたんで、サイドで持ったらやったろうかなと。1枚抜いたら、2枚、3枚抜けるのは分かっていたので。応援から『抜け』と言われたんで行こかなと」と振り返っていたが、「観て楽しい」「プレーしていて楽しい」サッカーを目指す中央学院が圧倒的にボールを保持し、CB岩永陸弥(3年)ら最終ラインの選手も足技を駆使して攻め上がるなどドリブルや、ショートパスで攻め続けて白星も勝ち取った。

 中央学院は前半1分、児玉の左FKをファーサイドでフリーとなったFW大野雄大(3年)がヘディングシュート。こぼれ球を自ら右足で押し込んで先制する。その後は中央学院のパスゲームに。最前線に位置したFW清野英国(2年)が深いポジショニングで奥行きを作り出し、その後方では、1対1では止まらない存在となっていたトップ下の児玉、テクニカルなボランチの10番MF空涼介(3年)、キープ力としなやかな動きが印象的だったMF永井颯太(2年)の注目トリオが自在に左右へとボールを動かし続け、失ってもすぐに空や永井が奪い返してまたパスワークによって相手を走らせていく。

 そして、児玉やMF石澤光希(2年)が仕掛けからシュート。ただし、浜田寛之監督が「PKを取れるくらいペナの中でボール持つところまで行きたい。支配率を高めようという話をしてしまったので、怖がって入って行けなかったですね」と振り返った前半はボールを支配し、海老原雄斗(3年)と石井翼(3年)の両SBが相手の最終ラインに並ぶような形を取るほどに押し込んでいたが、PAに割って入っていくシーンが少なかった。またチームのスタンスとしてDFの背後でスピード勝負することは考えておらず、背後へ抜け出そうとする動きも見られない。27分には児玉の仕掛けから清野がゴールマウス直撃のシュートを放つシーンもあったが、外から見るとどこかもどかしいような展開。東海大市原望洋が集中した守りを見せていたこともあってややボールロストも目立ち、前半は立ち上がりの1点のみで終えた。

 一方、人数をかけた守りで立て直した東海大市原望洋はFW若名凌平(3年)とトップ下のMF高橋岳(3年)が攻撃のポイントに。ボールを奪うとすかさずこの2人にボールを入れ、手数をかけずに攻めきろうとしていた。30分には新田が左サイドからPAへ潜り込み、後半2分にはインターセプトしたMF小高涼輔(3年)がミドルシュートを打ち切る。そして5分、1チャンスを狙う東海大市原望洋に訪れた歓喜の瞬間。FKに対応した中央学院のクリアに高橋が身体を投げ出すようにして寄せると、PAにこぼれたボールを収めたCB長谷川祐貴(3年)が豪快な左足シュートを突き刺して同点に追いついた。殊勲の長谷川を中心に盛り上がるタイガー軍団。押し込まれながらも我慢していた前半から、前へのアクセルを踏んだ東海大市原望洋は右SB浅野彰吾(3年)が積極的に攻撃参加するなど攻めの勢いを強めていた。

 だが、1-1となってからよりギアが上がったのは中央学院の方。空が「(PAへ)入っていく選手が少なかったので、前半終わってみんなで話して『もうちょっと勇気出して入って行こう』と」確認したという中央学院はドリブラーたちが躍動する。前半に横パスで相手を走らせ続けたことも効果を発揮し、その突破が相手との差を生み出し、サブ組たちを沸かせる。10分に児玉が3人、4人とDFを外してシュートを打ち切れば、空や永井が相手をいなしながら前進。そして15分、清野が抜け出した動きを見逃さなかった児玉がスルーパス。これを清野がゴールヘ押し込んで2-1とした。

 東海大市原望洋もMF吉井大晟(3年)のセットプレーなどから反撃。22分には吉井の左FKに3人が飛び込んでCB松下未来哉(3年)が頭で合わせる。だが中央学院はCB下出侑征(3年)と岩永がゴールライン手前でかき出す。実力派のGK正木迅生(3年)含めた守備陣がピンチを凌いだ中央学院は逆に30分、右CKの流れから児玉が左サイドでDF2人をずらしてクロス。これを岩永が頭で叩き込んで3-1とした。「ボールを動かして、相手のHPをどんどん少なくしてグサッと刺す」(浜田監督)狙い通りに後半加点。またドリブルで会場を沸かせた中央学院が粘る東海大市原望洋を振り切った。

 県1部リーグでは現在9位と結果が出ていないものの、夏の全国高校総体予選では流通経済大柏高を苦しめている中央学院。また、昨年は優勝校の市立船橋高と準決勝で熱戦を演じており、2強に続く存在のひとつとなっている。浜田監督が「市船、流経とやるために個を磨いてきたつもり」という独自の武器、ボールスキルの高さは全国最激戦区とも言える千葉を勝ち抜くための武器だ。加えて、指揮官が「今年は一人ひとりの能力高いし、楽しみ。沸かせられるし、期待に応えられる選手が多いので。小学生や中学生が見に来たい、見に来てくれるようなチームでいたい」と語る今年はタレントも擁して勝負の年。勝ち抜くだけのポテンシャルはある。

「市船、流経はペナの中に入れてくれない。今年は入って行ければ」と浜田監督は語り、2回戦の対戦相手で県リーグでカウンターから沈められている八千代などを乗り越えなければ目標とする舞台に立つことはできない。空が「(きょうの内容では)まだまだ。狙える力は十分にあるのであとは本番で力を出せるか。一人ひとり個性強いんで合えば凄いことになるんですけど、我慢できないところがあるし、それが次の試合までに合うように。もうちょっとメンタルの部分も必要」と指摘したように、より個性を結集して次の試合に臨む。どんな対戦相手でも攻めぬく覚悟の中央学院。千葉のドリブル軍団が今年、歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
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