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[選手権予選]鹿島内定のFW安部は全国届かず・・・「プロで活躍して、瀬戸内の名前を有名にしたい」

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瀬戸内高のFW安部裕葵(中央、10番)はプロでの活躍を誓った

[11.20 全国高校選手権広島県予選決勝 広島皆実高2-1瀬戸内高 広島広域公園第一球技場]

 県予選準優勝の銀メダルを胸に、じっと前を見据えていた。初出場を狙う瀬戸内高のエースとして期待が寄せられたFW安部裕葵(あべ・ひろき)は、見せ場を作れず、チームも1-2で敗戦。「決定的なチャンスも作れていないし、得点に絡むこともできなかった。自分の力のなさをあらためて実感しました」と静かに敗戦を振り返った。
 
 9月に鹿島加入内定が発表されてから一躍、注目度が増した。選手権予選が始まると、チームは2次リーグ敗退の危機もあったが、これを乗り越えた決勝トーナメントは安部の活躍で勝ち上がっていく。準々決勝の広島工大高戦では0-0で迎えた後半9分、約20mの強烈な左足ミドルで先制点を決め、2-0の勝利に貢献。準決勝の山陽高戦では前半に2得点を挙げ、やはり2-0の勝利で決勝に導いた。優れたボールスキルに加え、左右両足で正確かつ力強いキックができる持ち味を発揮し、初出場にあと一歩と迫った。
 
 しかし、今夏の全国高校総体出場校同士の対戦となった広島皆実高との決勝は、チーム全体が相手の組織的な守備に苦しみ、安部の待つ前線までボールが来ない時間帯が長く続いた。「あまりボールを多く触れないだろうと思っていたので、その中で仕事ができなければいけないと思っていた」と振り返るように、我慢してチャンスを待ったものの、前を向いてドリブルで仕掛けたシーンは数えるほど。
 
 18分に右サイドを破ってシュート性のセンタリングを送ったプレーではスタンドが沸いたが、後半も相手に押し込まれる展開が続いた。「どれだけ押されていようが、自分が決めれば流れは変わると思っていたけど、なかなかそういう場面がなかった」。そのままシュートゼロに封じられ、「選手権に出たかった」と悔しさをかみ締めた。
 
 東京からの越境入学で瀬戸内での挑戦を始め、1年の冬から頭角を現した。当初はドリブルに固執し過ぎていたが、徐々に視野が広がって周囲を使えるようになり、ボランチやアウトサイドも経験。プレーの幅を広げてJクラブの注目を集めるようになり、鹿島入りが内定した。171cm、60kgの細身の体で得点に絡む働きができるとあって、鹿島の椎本邦一スカウト担当部長は「得点力があり、技術がしっかりしていて、前線で攻撃の起点になれる。チャンスを作って得点も決める、本山雅志(前鹿島、現北九州)のようなタイプになってほしい」と、似た体格の偉大な先輩の名前を挙げて期待を寄せている。
 
 3年間の寮生活、サッカー部での活動で「サッカー選手として、普段からどういう判断をするか、サッカーにつながる行動を取るか、といったことを学んだ」という母校を、選手権に導くことはできなかったが、来春からはプロでの挑戦が始まる。瀬戸内出身選手のJクラブ加入内定は初めてとなるだけに、「プロで活躍して、瀬戸内の名前を有名にしたい」と力強く語り、次の舞台へと思いを馳せた。

(取材・文 石倉利英)
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