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選手権初勝利は「すごい試合」、創造学園がラストワンプレーで広島皆実に追いつきPK戦制す

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PK戦で2本ストップしたGK矢野遥希(3年)

[1.2 全国高校選手権2回戦 創造学園高1-1(PK4-2)広島皆実高 浦和駒場]

 第95回全国高校サッカー選手権は2日に2回戦が行われた。浦和駒場スタジアムの第2試合では、4年ぶり2回目の出場となる創造学園高(長野)と、4年連続13回目の出場となる広島皆実高(広島)が対戦。1-1で突入したPK戦の末に4-2で創造学園が勝利した。明日3日に行われる3回戦で正智深谷高(埼玉)と対戦する。

 プレミアリーグ中国で2位に入るなど結果を残していた広島皆実は、地元優勝が期待された全国高校総体でまさかの初戦敗退。その悔しさを胸に今大会を迎えた。積極的な入りをみせた広島の名門は、両ワイドのMF片岡永典(3年)とFW藤原悠汰(2年)が相手の3バックの両脇のスペースを有効に使い、縦へと果敢に仕掛ける。さらに中央のFW安原修平(3年)が相手DFの背後を狙い続けるなど、組織された攻撃で創造学園に襲い掛かった。すると、前半16分に左サイドでFKを獲得すると、キッカーのMF疋田優人(3年)が上げたクロスをDF河野秀汰(3年)がヘッドで中央に折り返し、MF藤井敦仁(3年)が右足で押し込み、先制のゴールネットを揺らした。

 選手権初勝利を狙う創造学園は、広島皆実の攻撃に手を焼いた。それでも、DF青木悠弥(3年)やDF森昂大(2年)を中心に体を張って粘り強く守り、相手が予想以上にシンプルにロングボールを入れてきたこともあり、“想定内”の1点ビハインドで前半を終えた。そして、勝負の後半開始から迷うことなくFW前谷朋宏(3年)をピッチに送り込み、反撃を試みる。

 しかし、3大会ぶりの初戦突破を目指す広島皆実がそう簡単に思い通りにはさせてくれない。広島皆実は後半8分にFKの流れから合わせれば得点という場面を作ると、同10分にはMF畔柳奨(3年)がスルーパスで完全に抜け出し、追加点まであと一歩のところまで迫る。それでも決定打に欠くと、創造学園がFW小林航也(3年)を送り出した後半20分あたりから相手陣内でプレーする時間を増やしていく。さらにお互いに声を掛け合い、集中力を高めて行くと、細かいタッチで前谷が密集地を抜けてチャンスを作り、小林が前線でボールをおさめるなど、攻撃に良いリズムが生まれる。

 だが、時間は1-0のまま推移し、追いつきたい創造学園がパワープレーに出た。後半アディショナルタイム2分、右サイドのFKからゴール前で混戦となったがDF青柳星吾(3年)にクリアされてしまう。時間は残りわずか。右サイド深くでボールがタッチラインを割り、時間的に次のプレーがラストチャンスとなる。ロングスローは弾かれたが、セカンドボールを拾ってつなぎ、右サイドからDF徳武廉(3年)が上げたクロスを森がヘディングで合わせ、同点。直後にホイッスルが鳴り響いた。

 試合は1-1のまま延長戦なしでPK戦に突入する。3人目までGK對川敦紀(3年)の手に当たりながらも全員が成功させた後攻・創造学園は、抜群の反射と読みでGK矢野遥希(3年)が1本目にいきなり止めると、4人目の片岡のシュートも反応よくセーブした。そして、4番手のMF樋口令惟(3年)が冷静にゴール右に蹴り込み、4-2で劇的勝利。ラストワンプレーからその勢いのまま、創部12年目の創造学園が選手権初勝利を掴みとった。

 勝沢勝監督も開口一番、「すごい試合でした。劇的でしたね」と語り、笑みがこぼれた。「最後のところでみんな体を張って戦ってくれたので、後半失点しなかったから、ラスト一本諦めなかったらワンチャンスで取るぞと思っていました。本当にラストプレーで取れて良かったです」。明日行われる3回戦では、練習試合で勝ったことがないという正智深谷と対戦する。「選手権は前評判とかそういうのじゃなく、そのピッチ内でどう戦うかが大事。最後までどんな状況になっても諦めないで戦えるかが大事だと思います」。この勝利に喜んでばかりはいられない。次の試合はすぐにやってくる。2回戦では正智深谷も劇的な勝利をおさめて勝ち上がった。どっちに本当に勢いがあるのか、勝った方がそのまま階段を一気に駆け上がるかもしれない。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 清水祐一)
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