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[MOM2041]青森山田MF高橋壱晟(3年)_5戦連発という“進化の証”「限界を決めず」点も取れる日本一のMFに

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5試合連続ゴールで青森山田を日本一に導いたMF高橋壱晟(左)とMF嵯峨理久(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.9 全国高校選手権決勝 青森山田高5-0前橋育英高 埼玉]

 自然と涙がこぼれた。5試合連続ゴールで青森山田高(青森)を悲願の初優勝に導いたMF高橋壱晟(3年=千葉内定)。「今までやってきたことが報われた。小学生のころからいつかは選手権で優勝したいと思っていた」。万感の思いが胸にこみ上げ、試合後は「やっぱり泣いちゃいました」と目を潤ませた。

 1年前の悔し涙をうれし涙に変えた。「選手権がずっと目標だった。本当にうれしい。去年の悔しさを知っている分、今年は絶対に優勝したいと思っていた」。前回大会は準決勝で國學院久我山に敗れ、ベスト4。高橋ら当時のレギュラーが5人残る中、「去年は一瞬の甘さで失点した。選手権は厳しい大会だということをずっと言ってきたし、チームに浸透させてきた」と、隙のないチームをつくってきた。

 前半5分、カバーに入ったDF小山内慎一郎(2年)がゴールライン上で起死回生のクリアを見せ、同16分には1対1で守護神のGK廣末陸(3年=FC東京内定)がビッグセーブ。立ち上がりの劣勢を守備陣の奮闘でしのぐと、迎えた前半23分、右サイドのスペースに抜け出したFW鳴海彰人(3年)の折り返しを中央の高橋が受けた。

 トラップから左足を振り抜き、DFに当たったボールがゴールネットを揺らす。「チャンスがあったら振り抜こうと思っていた。相手に当たってラッキーだったけど、入って良かった」。初戦の2回戦から5試合連続ゴール。4-3-3のインサイドハーフでありながら全試合で得点を決め、「点を取ることはいつも考えている。常に狙っている成果が出た」と胸を張る。

 “点が取れるボランチ”を目指してきた。2年時の全国高校総体2回戦。久御山(京都)と対戦した青森山田は前半12分に高橋のゴールで先制しながら1-2で逆転負けし、初戦敗退に終わった。これが「転機になった試合だった」と高橋は振り返る。「『パスをさばくだけの選手ではつまらない』『無難に終わっていた』と監督からも強く怒られた」。そこから取り組んだのがスタミナのアップ。朝練などでとにかく走り込み、運動量を増やすことを意識してきた。

 高橋が掲げたテーマは『ボックス・トゥ・ボックス』。自陣のペナルティーエリアから敵陣のペナルティーエリアまで攻守に動き回るセントラルMFは現代フットボールに欠かせない存在だ。「自分で限界を決めず、ペナルティーエリアからペナルティーエリアまで走ろうということを決めた」。神出鬼没な動きとポジショニングの良さ、そしてゴールへの嗅覚。驚異の決定力を無尽蔵のスタミナが支えてきた。

 MF柴崎岳(鹿島)を擁しても成し遂げられなかった選手権制覇。日本一に輝いた“青森山田の10番”として、その名は全国に知れ渡った。「柴崎選手はどんどん上のステージに行っている。自分もそれに負けないぐらい成長したい。すべてにおいてレベルアップしたい」。卒業後はJ2の千葉に入団する。「次はプロの世界に進むので、プロで試合に出ることが一番の目標」。一つの大きな夢を叶えた高橋は、次の夢を追いかけ、またすぐに走り出す。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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