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“クビ”になった男を救った仲間の後押し…青森山田MF住川「涙が止まらなかった」

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全試合先発出場を果たした青森山田高(青森)MF住川鳳章(3年)

[1.9 全国高校選手権決勝 青森山田高5-0前橋育英高 埼玉]

 一度は“クビ”になったと表現する。しかし、選手権前にレギュラーの座に返り咲いた青森山田高(青森)MF住川鳳章(3年)はチームのために戦い続けて初の選手権制覇に貢献し、歓喜の涙を流した。

 インターハイ県予選ではスタメンに名を連ねていた住川だったが、「県予選であまり良いプレーができなくて、そこからクビになりました(笑)」。笑って振り返ったものの、「プレミアではサブだった」とその後は先発を外れ、苦しい時間を過ごした。16年12月17日に行われた広島ユースとの高円宮杯チャンピオンシップでもベンチを温めていたが、その試合でレギュラーを務めていたMF檀崎竜孔(1年)が負傷。すると、選手権の事前合宿から檀崎に代わって、先発の座をつかんだようだ。

 だが、ただ単に入れ替わりで起用されたわけではない。その裏には、仲間の後押しがあったという。「事前合宿のときに(住永)翔や(高橋)壱晟が、(黒田剛)監督に『住川で行ってみましょう』と提案してくれた。それでチャンスをつかめたので、監督に押してくれた皆には本当に感謝している」。もしかしたら、先発として選手権のピッチに立つのは難しい状況だったのかもしれない。しかし、仲間の後押しがあるだけでなく、自身がそのチャンスを逃さなかったことで、初戦の先発の座を勝ち取った。

 いきなりのスタメン。周囲からは「楽しめ」と言われたようだが、「そんなに簡単じゃないですよね」と苦笑。だが、「檀崎の代わりに入っているので、あいつの分も頑張らないといけないし、自分がやらなきゃいけない」と決意して試合に臨むと、初戦からアシストを記録するなど得点機会を演出。5試合20得点を記録したチームにあって、自身の得点がゼロに終わったことに「やっぱり、得点できたら格好いいですよね(笑)。自分も取りたかった」と悔しさを滲ませつつも、「でもアシストのアシストもあったし、決勝では求められた守備で頑張れた」とチームの勝利のために自らの任務を完遂した。

 先発として試合に出場して、優勝に貢献できるとは「夢にも見ていなかったし、想像もしていなかった」。だが、「スタメンで最後まで出るということを目標にしてきたので、それが達成できて良かった」と全試合に先発としてピッチに立ったことに、そしてチーム初の選手権制覇に充実感を滲ませる。決勝の試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、悔しさを味わってきた男は、「うれし過ぎて涙が止まらなかった」と歓喜を爆発させた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)

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