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「最強の激戦区」大阪制したのは大阪桐蔭!積上げた力発揮し、211校の代表として全国でも勝つ

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大阪桐蔭高が9年ぶりに大阪制覇!

[11.11 選手権大阪府予選決勝 履正社高 1-2 大阪桐蔭高 金鳥スタ]

 第96回全国高校サッカー選手権大阪府予選決勝が11日に行われ、履正社高大阪桐蔭高が対戦。大阪桐蔭が2-1で勝ち、9年ぶり2回目の全国大会出場を決めた。

 昨年度全国4強の東海大仰星高やプレミアリーグ勢の阪南大高、J内定3選手を擁する興國高、近大附高などが優勝を争った「最強の激戦区」(大阪桐蔭MF西矢健人主将、3年)大阪のファイナルは、横浜FM内定の注目FW町野修斗(3年)を擁する一方、プリンスリーグ関西で最少失点(第15節時点)の履正社と、夏の近畿高校選手権優勝校でプリンスリーグ関西でも首位を快走する大阪桐蔭の顔合わせとなった。

 互いに個々の技術高く、ポゼッションから相手の隙を突くことができる両チーム。注目FW町野が献身的なディフェンスを見せてボールを奪い、そのボールを丁寧に繋ぐなど履正社がよりボールを握って試合を進めていた。だが、履正社は中盤からのバックパスが多く、また守備面でも最終ラインが前に出る迫力を欠いてしまうなど、「負けたくない」という意識が色濃く出てしまう。

 一方、永野悦二郎監督が「履正社さんは失点少なく来られている。なかなかこじ開けるのは難しいですし、切り替えのところを一番強調してピッチに行かせました」という大阪桐蔭はポゼッションを試みると同時に、ボールを奪ってから鋭く、精度の高いカウンターを繰り出す。前日10日に日本代表を3-1で破ったブラジル代表のように、相手コートにできたスペースをしたたかに突く大阪桐蔭がチャンスの数を増やしていった。

 13分、大阪桐蔭は右サイドで巧みにDFと入れ替わったMF菊井悠介(3年)のスルーパスからFW今岡陽太(3年)が決定的な右足シュート。履正社も守備意識高く戦っていたものの、中盤と最終ラインの間にできたスペースを大阪桐蔭の今岡と菊井に活用されると、ミスも重なってリズムに乗ることができない。

 迎えた36分、大阪桐蔭が先制する。左スローインをPAの今岡がキープ。そして後方に落としたボールを菊井が右足ダイレクトで打ち切ると、強烈な一撃がゴール左隅に突き刺さった。

 だが、履正社は直後の39分、MF安羅修雅(3年)の左FKを中央へ飛び込んだ町野が頭で合わせて同点に追いつく。「前半は我慢してゼロでいい。後半勝負」(平野直樹監督)というプランを持っていた履正社は後半開始からMF弓場大輝(3年)とMF野口天葵(2年)を当時投入。後半立ち上がりはピンチもあったが、前への推進力も出てきていた。

 だが、大阪桐蔭は相手にできた一瞬の隙を逃さない。15分、右サイドでボールを持ったSB深澤佑太(2年)がPAへロングフィード。タイミング良く相手DFラインの背後へ抜け出した今岡が絶妙なボールコントロールから右への動きでGKをかわし、そのまま右足シュートをゴールへ流し込んだ。

 再びリードを奪われた履正社は、21分にCB左居隼人主将(3年)のインターセプトから町野がスルーパス。これに安羅が反応したが、シュートは枠外へ外れてしまう。29分にも町野の1タッチパスに安羅が走り込んだが、大阪桐蔭は左SB加藤宙(3年)がクリア。大阪桐蔭は町野に集まるボールに対し、競り合いで強さを見せる西矢が弾き返すなど、ゴールを守ることに意識を傾け、シンプルな攻撃で時間を進めていった。

 履正社は後半31分に投入された左SB松田泰生(2年)がロングスローと、精度の高い左足キックで反撃を活性化。40分には松田の左クロスを町野が競り勝ち、PAへ飛び込んできた野口が左足を振り抜く。だが、大阪桐蔭GK藤本諒哉(3年)がセーブ。履正社はアディショナルタイム突入後の41分にも町野にシュートシーンが訪れたが、大阪桐蔭はDFがブロックして得点を許さない。

 そして43分、履正社は左FKのこぼれをフリーの野口が押し込もうとするが、大阪桐蔭DFがここでも“魂”のクリア。1点リードを最後まで守り抜いた大阪桐蔭が2-1で勝ち、9年ぶりの全国大会出場を決めた。

 夏の近畿高校選手権以降、公式戦負け無し。大阪制覇を果たした大阪桐蔭は勝負強かった。だが、以前の大阪桐蔭は勝負弱さを指摘されるチームだった。創部3年目の07年にインターハイに初出場し、4年目には選手権初出場。以降、12年インターハイで全国準決勝まで勝ち上がったほか、インターハイに計7度出場し、プリンスリーグ関西で優勝した年もある。

 また、現日本代表のCB三浦弦太(現G大阪)やMF阿部浩之(現川崎F)ら多くのJリーガーを輩出。その一方、選手権では毎年のように優勝候補の一角に挙げられながらも、勝ち抜くことができなかった。かつては相手がドリブルで仕掛けてくれば、こちらもドリブルでやり返す“ボクシングスタイル”。だが、勝てない期間を経験する中で、隙のあったチームはそれをなくすために取り組み、それでも足りなければ自分たちの日常、私生活から見つめ直し、厳しく指摘しあう集団になってきた。

 そして今年、勝つことを貪欲に求めてきたチームはインターハイ予選敗退、3年生だけで戦った近畿選手権優勝などを経験しながら、成長した。「陰ながらもっと頑張れば良いというチームになってきた」(永野監督)。この日も不用意なボールロストは減り、一人ひとりが今、何をしなければならないのかを考えて実行。テクニシャンの西矢やMF北田大亜(3年)、そして最終ラインの選手たちが献身的に身体を張って、戦うシーンが印象的だった。

 個々のタレント力だけで見れば、今年よりも強いチームがあった。だが、永野監督は「(三浦らを擁してインターハイ4強入りしたチームなどよりも)この子らの方が強いです。あの子らの方が、個々が高く見えるし、強く見えるけれども、彼ら(今年のチーム)の方が強いです」と断言する。

 謙虚な姿勢で先輩たちが一年一年積み重ねてきたことを受け継ぎながら、チームとしての土台を築き、“真の強さ”を身に着け、周囲から応援される集団になった。この1年でチームはまた成長した。そして、残した結果。次は全国で大阪211校の代表校としての力を見せつける。西矢は「(自分たちが)勝負強い大阪を全国でも見せたい。履正社だったり、興國、阪南、近附、仰星…そういう素晴らしいチームが大阪にいるんやで! (ライバルから)学んだことを活かして大阪は負けへんで! というのを見せたい。211校の頂点として責任を持って戦ってきたい」。この日も応援に駆けつけてくれた先輩たちが積み上げて来てくれた力と、自分たちの世代が新たに身につけた勝負強さ、そして激戦区を勝ち抜いた力を全国で示す。

(取材・文 吉田太郎)
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