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“今治から全国へ”…地域を背負って戦った今治東MF田坂潤主将の感謝と誇り、そして涙…

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ピッチ内外でチームを引っ張った今治東中等教育学校MF田坂潤(高3)

[11.11 選手権愛媛県予選決勝 今治東中等教育学校1-2松山工 西条市]

 ホームタウンを構えるFC今治を中心に新たな“サッカーどころ”となりつつある愛媛県今治市から、初めての全国大会出場を目指した今治東中等教育学校だったが、あと一歩のところでその夢には手が届かなかった。最後まで堂々の居振る舞いを見せたMF田坂潤主将(高3)は試合後、共に戦ったチームメイト、温かく支えてくれた地域の人々、6年間を共に過ごした指揮官への想いを明かしてくれた。

 今治東は松山工高との決勝戦、前半12分に田坂の意表を突いたFKで先制に成功し、序盤からダイナミックな攻撃を展開。プレーの合間には笑顔が絶えず、互いへの信頼感が表れた気持ちの良いプレーぶりは、大勢の観客を魅了するに値するものだった。ところが結果は残酷なもので、相手のスーパーゴール2発に屈して逆転負け。あと1勝にまで近づいた“今治から全国へ”という目標は果たすことができなかった。

 ところが、試合を終えたばかりの田坂の表情は、いたって爽やかなものだった。熱い声援を送り続けた応援団に向けて、「ここまで4試合、本当にありがとうございました!」と大きな声で感謝の気持ちを伝えると、中には泣き崩れる者もいたチームメイトに「胸張って帰ろう!」と励ましの言葉をかけた。その心中には悔しさこそあれ、後悔は一片たりともなかった。

「最後まで全員で戦うことができて、本当に楽しかったです。初戦から簡単な試合は1つもなかったけど、チームのまとまりがあったので、ここまで1つ1つ積み上げてくることができた。決勝まで来ることができて、敗退した他のチームより長く戦えたので、本当に良かったと思います」(田坂)。

 また、“今治の代表”という誇りも、そんな振る舞いにつながったようだ。「FC今治の方々には練習試合をしていただき、その経験が力になった。決勝に来るまでには色んな方が声をかけてくれて、『今治の高校に全国へ行ってほしい』という想いを聴くことができた。そのおかげで、『自分たちが全国に行くんだ』という気持ちで最後までやって来ることができました」。地域にも愛された主将は、はっきりとした言葉遣いで感謝の気持ちを伝え切った。

 それでも、中学入学から6年間を共にしてきた谷謙吾監督の言葉には、あふれる想いをこらえきれなかった。「俺がお前たちを勝たせてやれなかった。胸を張ってほしい。史上最高のチームだった!ありがとう!」――。帰り際のミーティングで敗戦の責任を背負い、ねぎらいの言葉を紡ぎ出す指揮官を前に、田坂の目からは涙が一気にあふれ出た。

「自分が入学した時に谷先生もこちらに来られて、6年間一緒にやってきた。先生からはいろいろ学ぶことが多く、いろいろ振り返っていたら……。この決勝で谷先生を全国に導いて、胴上げしたいという思いがあったので、自分たちが結果を出せなくて悔しいです」(田坂)。

 もっとも、“今治から全国へ”という挑戦はここで終わりではない。谷監督はミーティングで「手本になる6年生(高3生)の背中を追ってきたのだから、4、5年生はその姿を追い求めて行ってほしい」と述べ、下級生と共にこの舞台に戻って来るという決意を新たにした。「来年は絶対にやってくれると思うので、自分たちにできることを後輩たちにしていきたい」(田坂)。そんな主将の想いは、きっと来年度に受け継がれていくはずだ。

(取材・文 竹内達也)
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