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指揮官涙!「一番勝てないチームだった」矢板中央が本来の堅守発揮して全国8強へ!

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前半15分、MF稲見哲行のゴールを喜ぶ矢板中央高イレブン

[1.3 全国高校選手権3回戦 神村学園高 0-1 矢板中央高 浦和駒場]

 第96回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、神村学園高(鹿児島)と矢板中央高(栃木)が激突。矢板中央がMF稲見哲行主将(3年)の決勝点によって1-0で勝ち、11年度以来6年ぶりとなる準々決勝進出を決めた。矢板中央は5日の準々決勝で日本文理高(新潟)と戦う。

 堅守・矢板中央が本来の姿を取り戻す完封勝利だ。前日の2回戦では三重高(三重)相手に2失点。高橋健二監督は「昨日失点していたので、まずそこのところを修正して行こうと。普段通り、県大会から勝ち上がってきた矢板中央の守備でやっていこうとやってきました。その点を意識しながらやって、昨日よりも成長できたと思います」。2試合連続ゴール中の清水内定MF高橋大悟主将(3年)を擁し、攻撃力を持ち味としている神村学園を、1対1の対応、距離間、数的優位を作る部分から見つめ直してきた矢板中央が分厚い守りで封じきった。

 矢板中央は立ち上がり、奪ったボールを前線へ入れて起点を作ると、攻め上がったMF松井蓮之(3年)がミドルシュートやクロスにチャレンジ。一方、インフルエンザによって主力3人を欠く神村学園は1ボランチに入ったMF原田啓史(3年)を中心にショートパスを繋いで攻める。11分には高橋のスルーパスにFW大山尚一(3年)が反応。前線から精力的にプレッシャーを掛けるFW久永寿稀也(3年)ら矢板中央に幾度かインターセプトされても、神村学園は姿勢を変えることなく、ビルドアップしていく。

 だが15分、矢板中央は敵陣でボールを奪い取ったMF江口隼人(3年)がCKを獲得。この左CKを左SB内田航太郎(2年)が蹴り込むと、ファーサイドのCB高島祐樹(3年)が折り返し、最後は稲見が右足ダイレクトボレーでゴールに突き刺した。

 神村学園は原田のミドルパスや高橋のミドルシュートなどで反撃。前半終了間際にMF中上黎士(3年)の右クロスに大山が飛び込み、後半15分には同じく中上の右クロスからファーサイドのMF山野卓人(2年)が決定的な右足シュートを放つ。だが、いずれも枠を捉えず。矢板中央は負傷を抱えるCB白井陽貴(2年)が後半途中で交代するアクシデントがあったが、稲見をボランチから最終ラインに下げ、ボランチにMF高橋利空(3年)を投入して対応。また積極的にフレッシュな選手を投入して、カウンターを狙い続ける。

 セットプレー、カウンターからチャンスを作る矢板中央に対し、神村学園は22分、右クロスをファーサイドに開いていた高橋が左足ダイレクトボレー。有村圭一郎監督が「(真ん中の守りが厚い中で外側を)狙っていました」という狙い通りの崩しから、高橋の強烈な一撃がゴール右隅を捉えたが、矢板中央CB高島が足に当ててクリアする。

 横への揺さぶりながらMF濱屋悠哉(1年)のクロスなどからチャンスの数を増やす神村学園は決定打を含めて計15本のシュートを放った。だが、ラストプレーで原田が放った左足シュートがわずかに左ポスト外側へ外れて試合終了。矢板中央が狙い通りの無失点で勝利した。

 試合後、矢板中央の高橋監督の目からは涙がこぼれ落ちていた。「新人戦決勝で負けて、関東予選初戦で負けて、県総体も準決勝で負けて……。矢板中央の歴史の中で一番勝てないチームだったんですよね。それが勝てるようになったので褒めて上げたいと思いますね」。その声は震えていた。今年の世代は春のイギョラ杯や船橋招待大会で強豪校やJクラブユース勢を破っていずれも準優勝。U-17日本代表MF松井ら全国レベルの好選手たちを擁し、期待値は高かったが、シーズンに入るとトーナメント戦で勝つことができなかった。

 点を取っても取られて敗れたり、大事なところで決めきれず、逆に決められて敗れたり、苦しんだ夏。それでも、昨冬に加わった青森山田出身の木村大地GKコーチに甘さを指摘されながら、選手たちは私生活から改善し、挨拶、返事から変え、ピッチでは細かい部分から追求してきた。「守備や気持ちの面だったりコーチングの面だったり以前と全然違うと思う」と稲見。前日の2回戦では硬さや隙もあって2点を奪われてしまったが、この日は修正し、“矢板中央らしく”ゼロで乗り切った。

 6年ぶりのベスト8進出だが、松井が「ベスト8じゃ過去最高の成績ではない。日本一を勝ち取りたい。監督を日本一の監督にしたいと思っています」と口にしたように、目標は頂点、そして埼玉スタジアムで高橋監督を胴上げすることだ。この日は無失点で終えたものの、決定的なピンチもあった。カウンターで仕留め切れなかった部分もある。悔しい時期を乗り越えてきたチームが、準々決勝までの2日間で成長を遂げて09年度以来のベスト4進出を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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