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上田西が長野県勢初の4強進出!“長野の子の気質”「ひたむきに」「マジメに」戦い抜き、歴史塗り替える

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前半23分、上田西高MF宮下廉(6番)が勝ち越しゴール

[1.5 全国高校選手権準々決勝 明秀日立高 2-3 上田西高 駒沢]

 第96回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、ともに初の4強入りを狙う明秀日立高(茨城)と上田西高(長野)が激突。上田西が3-2で勝った。長野県勢として初の4強入りを決めた上田西は、6日の準決勝で前橋育英高(群馬)と戦う。

 ともに初めて準々決勝まで勝ち上がった両校によるフレッシュな8強決戦。それぞれロングボールを相手DFライン方向に入れ、セカンドボールを拾ってから攻撃を試みる。その中でFW荒井慧伊大(3年)やMF二瓶優大(2年)が相手のプレスを剥がして前進していた明秀日立が、先制点を奪う。

 前半12分、二瓶の右CKをニアで競ると、ゴールエリアでフリーのMF伊里隼人(3年)が難なくゴールへ押し込んだ。だが、上田西は白尾秀人監督が「DFの3m後ろに蹴る練習をしていた」というように、183cmのFW根本凌(3年)と178cmのFW上原賢太郎(3年)の高さと、DFライン背後に精度高く落とすボールが効果を発揮。この処理に苦戦していた明秀日立を逆転して見せる。

 16分、上原が相手DFライン背後へのボールを諦めずに追ってDFから奪い取ると、PA内で倒されてPKを獲得。これをDF大久保龍成主将(3年)が右足で決めて同点に追いついた。さらに22分、相手の処理ミスから獲得した左CKをMF宮下廉(3年)が右足でニアサイドへ蹴り込む。これが直接ニアサイドを破って2-1となった。

 上田西はさらに27分にも大久保の思い切った攻撃参加によって決定機。個の力でDFを剥がす明秀日立もMF及川央泰(2年)がDF2人をかわして右足シュートを放つ。だが、上田西は後半開始50秒に追加点。「前半で見せておいた方が相手も警戒するかなと思った」(白尾監督)という理由で前半終了間際から投入されていた“ロングスロワー”FW田嶌遼介(3年)の左ロングスローをニアで根本がそらし、最後はゴール前のDF田辺岳大(3年)が左足でゴール左隅へねじ込んだ。

 その後も田嶌のロングスローやFK、CKから追加点を狙う上田西に対し、明秀日立は9分に追撃ゴール。クロスバーを叩いた相手FKの跳ね返りからカウンターを繰り出すと、左サイドを抜け出した荒井がDFとの1対1を制してからニアサイドに左足シュートを突き刺した。

 明秀日立は荒井の個人技や伊里のロングスローなどで反撃の勢いを強める。PAまでボールを運び、伊里の右足ミドルが左ポストを叩くシーンもあった。だが、焦りからか相手の攻撃を良い形でクリアできず、タッチラインへ逃げて相手のロングスローをまた食らってしまうなど上田西を飲み込むことができない。一方、大久保やGK小山智仁(2年)中心に、最後までひたむきにゴール前で身体を張り、攻め返していた上田西が3-2で勝利。長野県の高校サッカーの歴史を変えた。

 試合後、大久保は「長野の代表がここまで来ると思っていなかったと思う」と口にした。過去10年の長野県勢の成績は7校が初戦敗退。2勝したのも13年度の松商学園高だけだ。地元は12月から3月にかけてグラウンドが雪に覆われる日も多いなど、ボールを使ったトレーニングは思うようにできない。その中で3部練、色々なランニングコースでの“走り”や階段ダッシュで走力を磨いてきた。

「長野県、上田の子たちの気質というか、ひたむきにマジメにやる子たちが多い」(白尾監督)というイレブンは、自分たちの力を理解した上で戦うことができている。この日のハーフタイムには大久保が「自分たちは魅せるサッカーではなくて、勝つサッカー」と再確認。根本も「(勝ち上がっていること)これが当たり前じゃなくて、(自分たちから見ても)凄いなと。謙虚に、チャレンジャーとして戦うことができている」ことも快進撃を支えている。

 準決勝で対戦する前橋育英はこの1年で3度練習試合をしているが、3敗。それも相手は全てサブ組中心の陣容だったという。そのチームが大会を通して成長。「みんないい顔をしていると思います」と指揮官も説明するように、自信も増してきている上田西がようやく掴んだ前橋育英Aチームとの“本気の戦い”で、ひたむきに「勝つサッカー」を貫く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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