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退任する指揮官のため、伝統繋ぐために「優勝」を。攻撃力見せつけた四中工が11発大勝で三重8強入り

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前半8分、四日市中央工高はCB北川博人が先制ヘッド

[10.20 選手権三重県予選3回戦 四日市中央工高 11-0 松阪工高 四日市中央工高G]

 3年ぶりの全国出場は、名門にとって「絶対」のノルマだ。第97回全国高校サッカー選手権三重県予選は20日に3回戦を行い、33回目の全国出場を狙う四日市中央工高が松阪工高に11-0で大勝。伊賀白鳳高と戦う準々決勝(10月27日)進出を決めた。

 四中工は2日前、20年以上に渡って指揮を執ってきた樋口士郎監督が今年度限りで退任するというニュースが流れた。選手たちは事前に知っていたとは言え、「この選手権は士郎さんのために優勝したいという気持ちも大きい」(CB山本龍平主将、3年=松本山雅FC内定)、「全国行って最後、士郎さんを胴上げしてあげたい」(FW中村健人、3年)と特別な思いを持って選手権に臨んでいる。

 ただし、樋口監督は「(自分が最後の選手権というよりも)2年間出ていない(ので今年は必ず全国へ)という方が強い。2年生は良いタレントもいるので出ることができれば、良い形で(次期監督の)伊室(陽介コーチ)にバトンタッチできる。四中工の伝統、プレッシャー、そして良い形で繋ぎたいというのが大きいですね」。72年度に全国初出場して以来、四中工が3年連続で選手権出場を逃したことはない。今後へ向けて四中工の伝統を繋ぐためにも、何としても全国に出なければならないという思いがある。

 今年はその切符を勝ち取り、全国で躍進する可能性を秘めたチームだ。松阪工との3回戦は中村の4ゴールをはじめ、大量11発。まずは前半8分に右ショートコーナーからMF矢田聖真(3年)が左足で上げたクロスをCB北川博人(3年)が先制ヘッドを突き刺す。

 序盤は意欲的な戦いを見せていた松阪工にゴール前のシーンを作られた。MF漆川翔(2年)のロングスローやFW中村拓馬(2年)のドリブルなどから攻めた松阪工は、FW木高謙成(2年)とのコンビネーションで抜け出したMF中俣陽貴(3年)がミドルシュートも放つ。

 立ち上がりこそやや緩さのあった四中工だが、バックパスや組み立て直すことがほとんどなく、前へ前への攻撃を連続。特に前線で圧倒的なプレーをしていた中村と鋭くスペースへ抜け出すU-17日本代表MF和田彩起(2年)の“ホットライン”でチャンスを量産する。そして18分、中盤で前を向いたMF川尻裕吏(3年)が中村とのワンツーから左足で2点目のゴールを奪うと、直後にはゴール前のこぼれ球に反応した中村が右足で決めた。

 さらに27分、左サイドで抜群の運動量を発揮していた左SB江口和磨(3年)のクロスを中村が頭でゴール。30分にも1年生MF宮木優一のシュートのこぼれを中村が決めて5-0で前半を折り返した。四中工は後半開始から注目FW森夢真(2年)とFW田口裕也(2年)を同時投入。4分、田口のシュートのこぼれを宮木が押し込むと、12分には左サイドで3人が絡んでの崩しから、江口のラストパスを田口が決めて7-0とする。

 攻撃の手を緩めない四中工は、27分にワンツーから森、30分と35分には個人技から和田が決めて2ケタ得点を記録した。最後は交代出場のMF森島秀(3年)とMF青木柊真(3年)のチャンスメークから森が決めて11点目。個性派アタッカーの森と田口が加わった後半、個で切り崩す強みも発揮した四中工は、山本中心に相手のカウンターを阻止して被シュート1本で快勝を収めた。

 今年の四中工には「個で行けるのは面白い」(樋口監督)、「絶対に点を獲れるメンバーだと思うし、獲れるサッカーをしていると思っている」(山本主将)という自慢の攻撃力がある。ただし、無敗を続けている県1部リーグでは大量得点を奪う試合で失点したり、先制点を奪われたりする試合も。この日も立ち上がりは攻め来られるシーンがあっただけに、指揮官は「トーナメントで勝つチームの要素はまだまだ」と首を振る。

 攻撃に重きを置いている中で各選手が守備の役割を徹底できるか、我慢強く戦うことができるかが県予選を制して全国上位に食い込むための鍵となりそうだ。地元開催で期待された今年のインターハイは県予選初戦でまさかのPK戦敗退。その悔しさもバネに力を磨いてきた選手たちは指揮官への恩返しのため、四中工の伝統のため、そして自分たちの未来のためにも、必ず全国出場権を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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