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「西が丘よりももっと先の目標」見据えてきた東京朝鮮、東京4強の先へチャレンジ:東京B

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後半26分、決勝FKを決めた東京朝鮮高MFホン・リジンがチームメートとゴールを喜ぶ

[10.28 選手権東京都Bブロック予選準々決勝 東京朝鮮高 2-1 修徳高 実践学園高尾G]

 今年は感動させるだけでなく、勝ち抜くチームに――。28日、第97回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選準々決勝で東京朝鮮高修徳高が激突。東京朝鮮が2-1で競り勝ち、帝京高との準決勝(11月11日、西が丘)へ進出した。

 インターハイ予選3位の東京朝鮮と選手権出場9回の伝統校、修徳高との強豪対決は試合開始直後にスコアが動いた。左サイドから思い切り良くドリブルで切れ込んだ左SBパク・チュンボム(3年)がこぼれ球を自ら左足で打ち抜き、先制ゴール。“電光石火”とも言える一撃でリードを奪った。

 一方の修徳はサイドを活用しながら反撃。そして敵陣高い位置でスローインを獲得すると、左SB伊東紀行(3年)が左右両サイドからロングスローを投じて東京朝鮮の守りにプレッシャーをかける。

 25分には10番MF石崎皓大(3年)の左足ミドルが枠を捉えたが、東京朝鮮はGKカン・ブラマ(3年)がファインセーブで阻止。また「前の修徳対(東海大)菅生戦を見に行って、もう一回ビデオでも見て、練習中にCKやロングスローをしっかり対策したので自信はありました」というCBムン・ヒョンジョン主将(3年)とCBチョン・ユギョン(3年)の2人がゴール前で抜群の強さを発揮して決定的なチャンスを作らせない。

 東京朝鮮は相手のペースに引き込まれて普段通りに繋いで攻めることができなかった。だが、各選手が声を掛け合いながら集中力を切らさずに守り続ける。修徳は石崎やFW刑部泰生主将(3年)のキープ力も交えて分厚い攻撃を仕掛けてきたが、東京朝鮮は動じない。逆にムン・ヒョンジョンの思い切った攻撃参加からMFユン・チス(3年)が左足シュートを放つなど、チャンスあれば2点目を奪い取ろうとしていた。

 1-0のまま迎えた後半26分、東京朝鮮は10番MFホン・リジン(3年)がゴールまで25m強の距離のFKで右足を振り抜く。午後5時キックオフの試合は気温が下がり、夜露によってスリッピーなピッチ。それを活かし、壁を越えたところで意図的にバウンドさせたボールは、急激に伸びてそのままゴールネットに突き刺さった。

 非常に大きな2点目。だが、修徳は29分、1年生CB高橋港斗が右足ミドルをゴール左隅にねじ込んですぐに1点を取り返す。白熱の終盤。修徳はクロス、セットプレーからゴールを目指し、40分には右CKからU-16日本代表候補MF大森博(1年)がヘディングシュートを放つ。だが、シュートはクロスバーの上側を弾いて外へ。ムン・ヒョンジュンが「『ここで負けるな』とか、『我慢比べだ』とか、みんなで声を掛け合って気が緩まないように徹底しました」という東京朝鮮が、最後まで集中力を切らさずに守り抜いて4年連続の準決勝進出を決めた。

 東京朝鮮のカン・ジョンジン監督は「本当の勝負はこれから」と語る。昨年まで3年連続で4強入りし、西が丘サッカー場で戦ってきた経験は貴重。加えて指揮官は「攻撃で点を獲れないと勝てない。積み上げてきた部分がいいように出ている」と昨年から積み上げてきたものの成果を口にする。

 昨年の準決勝では優勝した関東一高に延長戦の末に敗れたが、チョン・ユギョンの3得点によって1-3から追いつくなど激闘を演じた。その一方、準決勝での惜敗が続いていることも確かだ。今年のインターハイ予選も全国まであと1勝に迫りながら、関東一に3-3からのPK戦で惜敗している。

 それだけにムン・ヒョンジュンは「去年も見に来てくれた人たちが『感動した』とか『ナイスゲーム』だとか言ってくれたんですけれども、そこで満足したらいけない。(準決勝の会場である)西が丘を目標というよりも、(決勝が開催される)駒沢競技場に目を向けないと、いつまで経っても西が丘止まりだと思うので、今年は西が丘よりももっと先の目標を見つめようとしてきました」と口にする。近年、全国にいつ手が届いてもおかしくない戦いを見せている東京朝鮮。昨年の敗退からより高みを目指して1年間を送り、現在、「乗りに乗ってきた」(ムン・ヒョンジュン)チームが今年こそ、歴史を塗り替える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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