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中京大中京の猛攻耐え抜いた名古屋、“風”を生かして史上初の決勝進出:愛知

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先制ゴールが決まって喜ぶ名古屋高MF尾崎陽向(3年)

[11.10 選手権愛知県予選準決勝 中京大中京高0-1名古屋高 パロ瑞穂]

 第97回全国高校サッカー選手権愛知県大会は10日、準決勝をパロマ瑞穂スタジアムで行い、第1試合では名古屋高中京大中京高を1-0で破った。名古屋にとっては史上初の決勝進出。17日の決勝戦では悲願の県制覇を懸け、過去5回の全国出場経験を持つ東邦高に挑む。

 準々決勝では豊川高を4-3で下し、準決勝以降が行われるパロマ瑞穂スタジアムのピッチに初めて立った名古屋。「インターハイは出たことがありますが、選手権ではベスト4に入ったのも初めて。“瑞穂”も初めてなのでワクワクです」(山田武久監督)。だが、そんな大舞台は緊張感となって選手たちに襲いかかった。

 試合は開始直後に見せ場が訪れた。中京大中京は前半キックオフ、DF安藤響己(3年)が右足を鋭く振り抜くと、キックオフシュートが右ゴールポストに直撃。風に乗ったボールに名古屋GK木村陽介(3年)は反応できず、あわや1点という場面だった。前半5分にはMF竹中択(1年)の右CKにMF川村倫太郎(3年)が頭で合わせるも、ボールは惜しくも右に外れた。

 それでも徐々に落ち着きを取り戻した名古屋。ワントップのFW林拓磨(3年)が中盤に下り、独特のタッチで相手をかわしてボールを前に運ぶと、前半25分に試合を動かした。右サイドのスローインから林が右サイドをえぐり、かろうじて送ったクロスに走り込んだMF尾崎陽向(3年)が落ち着いてプッシュ。劣勢だった名古屋が先制に成功した。

 1点を追う中京大中京は前半27分、FW北野祐己(2年)のヘディングシュートは木村がビッグセーブ。その後は一進一退の攻防を見せたが、そのままのスコアで前半を終えた。名古屋はハーフタイム明け、アクシデントがあった林に代えてFW波多野裕貴(2年)を投入すると、次第に中京大中京がペースを握り返した。

 中京大中京は後半10分、左サイドでの崩しからサイドバックのDF山崎泰雅(3年)が抜け出し、MF名越琉星(2年)がつなぐと、竹中の高速クロスが相手ゴールを襲う。同15分ごろからはMF藤原遼(3年)、MF小雲楓太(2年)らベンチメンバーを次々に投入。長身の小雲にロングボールを集め、効率的にゴールへ近づく攻撃を繰り出した。

 後半30分過ぎからは一方的なハーフコートゲーム。中京大中京は同32分、ゴール前のこぼれ球に反応した名越がボールをおさめ、グラウンダークロスに小雲が反応したが、名古屋のアンカーMF大谷泰地(3年)が決死のブロック。同36分には、途中出場FW根本幹丸(3年)が左サイドからカットインシュートを狙うも、懸命に腕を伸ばした木村が豪快なパンチングで弾き出した。

 中京大中京は終盤に入り、DF村上悠(2年)をキッカーとするセットプレー攻勢をスタート。だが、名古屋はDF杉本遥平(3年)を中心に空中戦で跳ね返し続ける。同アディショナルタイムには、中京大中京GK吉田ディアンジェロ(3年)も攻撃に参加。最後の猛攻をしかけたが、村上の左CKを木村がキャッチし、そこでタイムアップ。2年連続の全国行きは果たせなかった。

 名古屋を初の決勝進出に導いた山田監督は試合後、コイントスでのコート選択を勝因の一つに挙げた。「風の影響が大きかったですね。前半は風下を取れという話は試合前にもしていて、もし1点が取れていなかったとしてもいけると思っていた。相手も後半は押せ押せだったので、コートが逆だったら守れていたか分からない」と率直に語った。

 とはいえ、風下の前半も劣勢にこそなっていたものの、何本もの縦パスを入れて着実に前進する攻撃が目を引いた。その秘訣は練習で重点的に取り組んでいる「鳥かごでのボール回し、いわゆるロンド」。相手のスペースに入り、プレスから抜け出し、ボールを失った瞬間に奪い返すという習慣づけは、すべて鳥かごトレーニングの賜物だという。

 また、終盤の守勢では「うちの強みは後ろの安定感。あそこは安心して見ていられる」と心配なし。準決勝では豊川高を下して初の4強を決め、準決勝では昨冬の代表校である中京大中京を下しての決勝進出。「手綱を締めるでもなく、『このまま行ってしまえ』という思いで1週間やっていきたい」(山田監督)とこの勢いそのままに初の全国へと駆け抜けていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2018

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