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ユース取材ライター陣が推薦する選手権予選注目の11傑vol.2

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土屋氏が注目するFW戸坂隼人(國學院久我山高)

特集企画「ユース取材ライター陣が推薦する『全国高校選手権予選注目の11傑』」

 ゲキサカでは熱戦展開中の第98回全国高校サッカー選手権都道府県予選の注目選手を大特集。「選手権予選注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権予選注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当する傍ら、東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

土屋雅史氏「今回の企画でも日頃から重点的に取材させていただいており、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』でも取り上げる機会の多い東京でプレーしている選手に絞り、選手権予選のAブロック、Bブロック共にベスト8まで勝ち上がってきたチームの中から、11傑を選出しました。設けている縛りもいつも通りに“1チーム1名”と“過去にご紹介したことのない選手”。また、選手権予選という大会の性質を考えて、11人すべて3年生を選出しています。高校サッカーをプレーする選手たちにとっては1年間の総決算とも言うべきこの大会。特に3年生の皆さんには勝っても負けても一生の思い出を作って欲しいと思っています!」

以下、土屋氏が注目する11名
GK出口貴也(関東一高3年)
「1年先輩の北村海チディ(現・桐蔭横浜大)から引き継いだゴールマウスにも、『チディくんから変わったことで一番注目されるのは自分だと思いましたし、誰よりも近くで見てきて、同じ練習もこなしてきたので、「いつか超えてやる」とずっと思ってやってきました』と口にできるゲームキャプテンが今年のカンイチの守護神。葛飾青葉中時代は専門のコーチがいない中、自ら中心となって練習メニューも考えていたように探求心も旺盛だ。最大の持ち味はビルドアップへ積極的に関われる足元の巧みさ。『エデルソン(マンチェスターC)選手のパスを受ける前でも見る場所を少し工夫する所や、来てからも慌てずに対応できる所を参考にしています』と話すなど、中距離以上のキックも味方にきっちり付けられる技術は都内トップクラス」

DF豊田優磨(成立学園高3年)
「ジュビロ磐田入団内定の吉長真優と共に、2年時から名門のレギュラーを託されてきた右サイドバックは、『去年からいろいろと経験しているので、チームを引っ張っていきたいですね』と主力としての自覚も十分。今シーズンはオーバーラップの積極性も一層プラスされた印象があり、よりゴールに絡む回数も増えている。堅実なプレーでチームを支えるキャラクターと、下部組織の成立ゼブラFC出身というキャリアは、大卒ルーキーながらJ3アシストランクトップに付けているOBの吉田将也(ザスパクサツ群馬)と重なる部分も。『もう10年以上全国に出ていないと思うので、ウチらの代で絶対に行って、成立学園の名前を全国に知られるように頑張っていきたいと思います』と意気込む2番が、ゼブラ軍団の攻守をサイドから牽引する」

DF柳大弥(帝京高3年)
「入学直後の関東大会予選からセンターバックの定位置を掴み、大きな期待を背負って高校生活をスタートさせたものの、昨年はBチーム暮らしを強いられ、『努力はしているんですけど、認められないことに「アレ?」みたいな感じになって、そこで空回りしていた時期がありました』と本人も認める苦しい1年に。ただ、今年に入ってようやく完全復活。今や日比威監督も『今は柱でやっているのは柳だし、このチームで一番の心臓の部分だと思いますよ』と評価するまでにディフェンスリーダーとして成長した。カナリア軍団にとって10年ぶりとなる冬の全国を引き寄せるべく、辛い時期を支えてくれた仲間のためにも、『選手権は本当に悔いの残らないようにやりたいです』と最後の大会に全てを懸ける覚悟は定まっている」

DF中北輝(日大豊山高3年)
「今年の東京高校サッカー界でダークホース的な存在として注目を集めてきた日大豊山の中でも、異彩を放つのがこの左サイドバック。『基本どのポジションでもできます』と話した通り、中学の時はトップ下、昨年はボランチ、今シーズンの最初は右ウイングも務めていたというレフティは、タメも作れてゲームも作れる、まさに現代的なサイドバック像を地で行くプレーヤー。『真ん中がグダっている時は、「自分だったらもうちょっと展開とかできるのに」とは少し思います』と笑うあたりに、自信の一端が窺える。加えて高い精度を生かしたプレースキッカーとしての役割も担い、直接FKでゴールを陥れるなど得点力も兼備。“魔法の左足”は日大豊山に新たな歴史をもたらせるか」

MF坂本達哉(国士舘高3年)
「昨年度の東京を制したディフェンディングチャンピオンの右サイドを疾走するのが、『サイドをガンガン走って、セットプレーを多く取るのが自分の特徴です』と言い切るこの坂本。とにかく縦に仕掛け続け、コーナーキックやスローインを獲得しつつ、時には自ら中央へ切れ込みながら、1対1で勝負する姿が何とも清々しい。なお、プレーを参考にしているのはFC東京の室屋成。『ポジションは違うんですけど、室屋選手はずっと青森山田の時から見ていて、サイドをガンガン走る所が凄く好きで、今は日本代表でも活躍しているので、そういう所を自分は目標にしています』とも。“ムロヤマニア”が『サイドをガンガン』走っているかが、連覇を狙う国士舘の攻撃におけるバロメーターだ」

MF鈴木颯太(東海大高輪台高3年)
「『中学生の時は3年間ボランチで、高校に入って初めて公式戦で出たのがセンターバックで、そこからセンターバックをずっとやっていた』高輪台が誇る183センチのハイタワーは、今シーズンに入って改めてボランチに定着。『川島先生には「東京ナンバーワンのヘディングを身に付けろ」と言われています』と口にする武器こそはっきりしているが、繋ぎや前に顔を出す攻撃面も含めて確実に個のスケールアップが感じられる。『実は最初は駒澤に入りたくて、セレクションを受けたんですけど落ちちゃって、1回断っていた高輪台にわがままを言って入れさせてもらったので、駒澤には絶対負けたくないです』と教えてくれた因縁の駒澤大高と、この予選で当たれるのは決勝のみ。“全国初出場”と“駒澤超え”の二兎を全力で追い掛けている」

MF坂本琉維(堀越高3年)
「『中学時代も自分がスタメンを決めてやっていたので、「選手主体で創っていくのっていいな」と思って、自分は堀越に入りました』という坂本が、今年の“堀越流ボトムアップ”を中心になってまとめるキャプテン。『外で見ているのと中でやっているのはだいぶ見方が違ってくるので、外から言われることも大事ですけど、中でどういうことが起きているかというのを大事にしています』という言葉にも、グループへの信頼と自信が滲む。総体予選では5連覇を狙った関東一高を倒し、都代表となった大成高には敗れたものの延長戦まで持ち込むなど、その実力は十分。昨年度の予選も経験した“闘えるボランチ”のピッチ内外における舵取りが、実に28年ぶりとなる選手権の代表権獲得に向けてカギを握っているのは間違いない」

MF松本悠佑(駒澤大高3年)
「『自分たちの試合が終わった後に下のチームの応援に行ったりとか、みんなから認められている子です』と大野祥司監督も言及する人間性抜群の副キャプテンは、昨年末の横山杯で大会制覇に大きく貢献すると、『人より努力しないとその差は埋まらないと思って、とにかくスタメンになりたいという強い気持ちでしっかり努力は積み重ねてきたつもりなので、それが今に繋がっていると思います』と振り返るように、コツコツと積み上げてきた練習の成果を認められ、ボランチの一角を託されている。例年よりテクニックに自信を持つチームの中で、『たぶん一番自分の特徴だと思うので、そこを生かしていきたい』という左足のキックは大事なアクセントに。1年前は立てなかった全国のピッチでの躍動に照準を合わせている」

MF内田康平(大成高3年)
「『大成の攻撃を引っ張ろうという気持ちでいつも前に出て行っています』と明言する9番は、その背番号が象徴するようなゴールを奪える攻撃型ボランチ。常に強気な発言が口を衝くアグレッシブな性格も頼もしく、豊島裕介監督も『とにかくハードワークできて、いろいろな所に顔を出してくれるキーマン』と確かな信頼を口にする。東京代表として挑んだこの夏の全国総体では初戦敗退を突き付けられたことで、『あの経験をゼロにしたくないので、選手権で大成史上初の全国に出場することであのインハイの経験を力に変えて、全国でも上に上がっていきたいと思っています』と気持ちも新たに。スタメンでフル出場しながら涙を飲んだ昨年度の“駒沢陸上競技場”でのリベンジは、同じ舞台での勝利以外に果たせない」

FW戸坂隼人(國學院久我山高3年)
「切れ味鋭いドリブル突破は間違いなく全国レベル。『最近はいろいろなチームにも縦が完全に読まれる中で、ドリブルの時に左足で持って、縦にも中にも行けるようには意識しています』とそのストロングにも磨きが掛かり、タレント揃いの久我山の中でも10番にふさわしい華のあるプレーが一際目を惹くアタッカーだ。今予選2回戦の早稲田実高戦では弟の修人との“兄弟対決”が実現し、マッチアップする場面も。試合後は『絶対負けられなかったです(笑) こういう経験を来年や再来年に生かして欲しいです』と兄の顔で語っていた。中学時代のチームメイトでもある久保建英(マジョルカ)からは最近カットインのアドバイスをもらったと明かしつつ、『彼のように見ている人を楽しませるようなプレーをしたいですね』と自身のさらなる飛躍も誓っている。

FWリャン・ユンデ(東京朝鮮高3年)
「『縦に速く、スピーディーな感じのプレーが得意です。足には自信があります』と笑うスピードスターが今年の東京朝鮮のナンバーナイン。圧倒的なスプリントと前への推進力を武器に、ゴールへと突き進むスタイルはカウンター時によりその威力を発揮する。最近は小学校、中学校、高校とすべての先輩にあたるハン・ヨンテ(鹿児島ユナイテッドFC)の活躍に刺激を受け、『自分もあそこを目指さなきゃなって思いました』とさらなる向上心も携えつつ、憧れの先輩の実兄に当たるハン・ヨンジュンコーチの指導の下で、得点力も磨いてきた。チームは4年続けて選手権予選で西が丘まで勝ち上がっているものの、いずれも準決勝で敗退。その壁を打ち破るためには、このストライカーの覚醒が必須条件と言っていい」

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」


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