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[MOM3022]帝京大可児MF横井内壮(3年)_飛び抜けた武器なくとも輝きは人一倍。味方いかしながら先制弾

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輝きを放ったMF横井内壮(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.2 選手権予選準決勝 帝京大可児2-0大垣日大高 長良川メドウ]

 今年の帝京大可児高は、縦に速い選手や技術の高い選手など個性豊かな選手が織りなす攻撃のハーモニーが売りだ。

 長所が明確な選手が揃うチームの中で、異彩を放つMF横井内壮(3年)は、自身の特徴についてこう話す。「自分は飛び抜けたスピードがないし、ドリブルができるタイプでもない。上手く相手の間にポジションを取って、ボールをおさめながらゲームを落ち着かせるのが役割」。

 この日、試合序盤は相手を押し込み試合の流れを掴むため、チーム全体でMF渡邊寿樹也(3年)のスピードを活かした左サイドからの仕掛けを多用した。反対サイドに位置する横井内の仕事は、前がかりになる攻撃のバランスをとること。「縦に一辺倒にならず自分の所で一回おさめてゲームを作り直すこと」を意識した。右サイドからのカットインでタメを作りつつ、空けたサイドのスペースをDF神戸政宗(3年)がオーバーラップするなど、周囲の引き立て役として働いた。

 ただし、仲井正剛監督が「良い左足を持っているし、プリンスリーグでも勝負を決める仕事をしてくれている」と横井内を評するように、チャンスが来ればしっかり主役としての仕事もする。

 押し込みながらもゴール前の精度を欠き、1点が遠い展開となったが、「外しても焦らず、いつかは決まると気持ちの余裕を持つことで、最後の所で焦らないようにと心掛けていた」と冷静さを忘れない。

 横井内に見せ場が訪れたのは前半39分。神戸が右サイドから入れたロングスローをDF前川文哉(3年)が競り合った。ゴール前にこぼたボールは混戦となったが、「試合前に、ロングスローがゴール前に入ったら、こぼれ球に反応しようと意識していた」と振り返る横井内が真っ先に反応すると、右足シュートを冷静に叩き込み、均衡を崩した。

 後半途中からは、チームメイトの選手交代によって1トップに入ってプレー。前線の起点として周囲の突破を引き出し、サイド攻撃を仕掛けると後半31分には途中出場のMF三品直哉(1年)が加点し、2-0で勝利。勝利の立役者となった横井内は、「チームとして1点でも多く勝てばというメンタリティーでやっていた。次に進めたのは大きい」と安堵の表情を浮かべた。

 夏以降は2年ぶりの選手権出場を果たすため、守備を固めた相手を崩し切る練習を重ねてきた。今予選3試合で32得点と大量得点が続いているのは、チーム全体が同じイメージを持って崩せているからだ。中でも、冷静なプレーで攻撃の核となっている横井内の貢献は見逃せない。

 原動力となっているのは、選手権出場にかける想いだ。「ずっと小さい頃から選手権を見てきたし、附属中学にいた頃も先輩たちが準決勝で負けて悔しい想いをしているのを見てきた。2個上の代が全国で勝っている姿を見た際には凄く輝いて見えた。自分も憧れた舞台だし、県内では負けられない。今年こそは絶対に選手権に出てやろうという気持ちが強い」と口にする。決勝でも周囲の良さを引き出しながらも、要所で主役となる仕事をして憧れの舞台を引き寄せる。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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