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緊迫の80+3分、ラストプレーにドラマ! 劇的PK決めた龍谷、強豪佐賀東破って連覇に王手:佐賀

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ラストプレーのPKを沈めた龍谷高DF柴田陸玖(3年)

[11.3 高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀東高0-1龍谷高 鹿島市陸]

 第98回全国高校サッカー選手権佐賀県予選は3日、鹿島市陸上競技場で準決勝を行った。第2試合では前回王者の龍谷高が後半アディショナルタイムに獲得したPKで先制点を奪い、過去10回の全国出場を誇る佐賀東高を1-0で撃破。決勝では県総体覇者の佐賀北高と対戦する。

 序盤の主導権は佐賀東が握っていた。最前線でリンクマンを担うFW高山そら(3年)、2列目でスペースを狙うFW小屋諒征(2年)が頻繁にボールに絡むと、相手守備ブロックの大外に張り出すMF大塚正翔(3年)、MF西村大和(3年)の両ウインガーが存在感を発揮。DF龍幹太(3年)のフィードも次々に通り、龍谷に圧力をかけていた。

 それでも佐賀東は前半14分、MF吉田陣平(1年)を起点とした攻撃から小屋がスルーパスを送るも、飛び出した高山のシュートはGK倉富祐人(1年)がビッグセーブ。絶好のチャンスを活かせずにいると、その後も龍谷のDF柴田陸玖(3年)、DF野添永凪(2年)を中心として守備陣を崩せず、拮抗した展開となっていった。

 一方の龍谷は攻撃でも我慢の展開。スピード自慢のFW松尾亮汰(2年)が相手の最終ライン裏へのスプリントでボールを引き出そうと試み、素早い攻守の切り替えから凄まじい運動量を見せるFW又吉耕太(1年)の献身性も目立ったが、前半のシュートは松尾のロングシュート1本に終わった。

 そして後半最初の決定機も佐賀東。10分、小屋が自身のボール奪取からドリブルで持ち上がり、縦パスを高山のスルーパスが決定的なチャンスに結びついたが、西村のシュートはまたも倉富が好守を見せた。対する龍谷は「今日初めて見せた」という又吉のロングスローでゴールを狙うも、肝心の中央で競り勝てずにチャンスはたぐり寄せられなかった。

 それでも龍谷は徐々に守備のバランスが良くなり、佐賀東のサイド攻撃を中盤エリアで寸断する場面が増え、五分の戦況を呈していく。後半33分、足がつった又吉に代わってFW平山悠斗(2年)を投入すると、40分には平山のクロスに反応したMF石橋啓士(2年)が相手GK中村祐介(3年)を強襲するヘディングシュートも放った。

 すると延長戦が見えてきた後半アディショナルタイム、ついにスコアが動いた。龍谷はスルーパスに抜け出した松尾が右サイド裏からカットインを試みると、斜め後ろからのアプローチとなったDFにエリア内で引っ掛けられて転倒。主審は龍谷にペナルティキックを与えた。

 キッカーは主将の柴田。「最初は(倒された)松尾が蹴りたいって言ったけど、ベンチから『柴田を信じろ』と言われていた」(柴田)。ゆっくりとした助走から背番号4が蹴り出したボールは、読みが当たった中村の手をすり抜けゴールネットへ。龍谷の選手・スタッフ、スタンド応援団が歓喜に沸く中、タイムアップを告げるホイッスルが鳴り響いた。

 劇的な勝利を挙げた龍谷の太田恵介監督は試合後、「想定していたことが起きた」と試合を振り返った。もちろん、このドラマチックな幕切れを予想していたわけではない。相手が縦に速い攻めをしてくるため素早い攻守の切り替えを要求されること、押し込まれる時間帯に我慢をする必要があることが織り込み済みだったという。

 戦前の分析に対し、重点項目を意識したトレーニングも行ってきた。かねがね力を入れてきた攻守の切り替えはもちろん、守勢の時間帯では「10分間くらい、サテライトの選手たちにシュートを打たせ続ける」というケース練習も実施。この日の守備陣はシュートコースを埋め続ける姿が目立ったが、そうした鍛錬の成果もあったようだ。

 また後半からは「ワイドの選手に対して縦を切って食い止める」という修正策が的中。朝練に遅刻した主力ボランチをメンバーから落とすという苦渋の決断をしながらも、代役となった選手たちが奮闘を見せ、最後は「相手の足がだんだん止まったけど、うちは足が止まることはない」という自信をのぞかせる耐久戦に持ち込み、勝利した。

 11月16日の決勝までは2週間のブランクがあり、そうした分析とトレーニングの落とし込みは最終決戦にも活かされるはずだ。「対策する時間はある。相手のストロングを消しながら、相手のウィークポイントを突ければ」(太田監督)。新人戦ベスト8、総体初戦敗退と苦しんだ今季の龍谷だが、初栄冠からの連覇まであと一つまでやってきた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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