[MOM3042]帝京MF中瀬拓夢(3年)_兄が届かなかった全国へ…決勝での雪辱戦は悲願の舞台
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.9 選手権予選準決勝 堀越1-2帝京 味フィ西]
先制点を決め、PKを獲得して追加点にも絡んだ。帝京高の右サイドで推進力を見せた背番号13のMF中瀬拓夢(3年)は、決勝進出に大きく貢献した。
試合後は「前半に点が取れて、良い流れに乗れたと思います。ゴールは良いクロスが上がって来たので、決めるだけでした。ヘディングシュートは全然決めていないし、右に外れたかと思ったけど、良いコースに飛んだので良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
少しゴールまで距離のあるヘディングだったが、しっかりと押して飛ばしたボールがネットを揺らした。前半30分過ぎには、右サイドで突破を仕掛けてPKを獲得。味方のシュートがGKに防がれて得点にはならなかったが、大きなチャンスをもたらした。
試合は相手の堀越高がボールを支配し、帝京が素早くサイドを突く展開。中瀬は対峙する相手をかわすというよりは、退(ど)かすようなパワフルなドリブルで前進を図った。堀越はマークについている選手がひきずられるため、カバーの選手の位置も自ずと低くなり、押し込まれた。
後半、堀越が同点に追いついた5分後、帝京は左から攻撃を展開し、中央でMF深澤大輝(3年)がパスを受けてドリブル。互いに「目が合った」と振り返ったアイコンタクトから、中瀬が中央前方に走り込む。深澤がサイドへ体を開いた状態から縦に鋭いパスを送り、中瀬が狭いスペースで相手と交錯しながらボールを残すと、同時に走り込んでいたFW山本乾太(3年)がゴールへ流し込んで決勝点を奪った。
帝京を率いる日々威監督は、まだ決勝戦が控えていることもあってか「先週のプリンスリーグ関東、三菱養和SCユース戦とは別人。あの試合では、右が機能しなかった。それなのに、今日は1点目を決めたし、PKも取ったし、2点目も絡んだ。あれが継続できないのが高校生の怖いところ」。調子の波という課題があることに言及し、手放しでは褒めなかったが、馬力のある中瀬のドリブルは、着実に相手を弱らせる効力を発揮し、勝利につながるものだった。
全国の舞台まであと一歩。相手はインターハイで全国大会に出場している技巧派集団の國學院久我山高だ。今季、東京では関東大会予選も優勝しており、最も評判の高いチームと言える。しかし、中瀬にとっては、対戦を願っていた因縁の相手だ。4年前の決勝戦、帝京が國學院久我山にPK戦で敗れた試合に、兄の大夢が2年生で出場していた。東京の代表権を得た國學院久我山は、全国大会で準優勝。ほんのわずか届かなかった悔しさが大きく膨らんだことは想像に難くない。
中瀬は「兄が負けた試合は、スタンドで見ていて悔しかった。自分はずっと久我山とやりたくて、兄に憧れて同じ高校に入った。決勝は絶対に勝ちたい。勝って、全国に行きたいです。びびらず、いつも通りのプレーができれば良い」と全国切符をかけた頂上決戦にかける決意を語った。持ち味のスピードとパワーで守備の壁を叩き割り、全国大会へ――。自身の夢と兄の雪辱をかけて、因縁の相手を打ち破りに行く。
(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校選手権2019
[11.9 選手権予選準決勝 堀越1-2帝京 味フィ西]
先制点を決め、PKを獲得して追加点にも絡んだ。帝京高の右サイドで推進力を見せた背番号13のMF中瀬拓夢(3年)は、決勝進出に大きく貢献した。
試合後は「前半に点が取れて、良い流れに乗れたと思います。ゴールは良いクロスが上がって来たので、決めるだけでした。ヘディングシュートは全然決めていないし、右に外れたかと思ったけど、良いコースに飛んだので良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
少しゴールまで距離のあるヘディングだったが、しっかりと押して飛ばしたボールがネットを揺らした。前半30分過ぎには、右サイドで突破を仕掛けてPKを獲得。味方のシュートがGKに防がれて得点にはならなかったが、大きなチャンスをもたらした。
試合は相手の堀越高がボールを支配し、帝京が素早くサイドを突く展開。中瀬は対峙する相手をかわすというよりは、退(ど)かすようなパワフルなドリブルで前進を図った。堀越はマークについている選手がひきずられるため、カバーの選手の位置も自ずと低くなり、押し込まれた。
後半、堀越が同点に追いついた5分後、帝京は左から攻撃を展開し、中央でMF深澤大輝(3年)がパスを受けてドリブル。互いに「目が合った」と振り返ったアイコンタクトから、中瀬が中央前方に走り込む。深澤がサイドへ体を開いた状態から縦に鋭いパスを送り、中瀬が狭いスペースで相手と交錯しながらボールを残すと、同時に走り込んでいたFW山本乾太(3年)がゴールへ流し込んで決勝点を奪った。
帝京を率いる日々威監督は、まだ決勝戦が控えていることもあってか「先週のプリンスリーグ関東、三菱養和SCユース戦とは別人。あの試合では、右が機能しなかった。それなのに、今日は1点目を決めたし、PKも取ったし、2点目も絡んだ。あれが継続できないのが高校生の怖いところ」。調子の波という課題があることに言及し、手放しでは褒めなかったが、馬力のある中瀬のドリブルは、着実に相手を弱らせる効力を発揮し、勝利につながるものだった。
全国の舞台まであと一歩。相手はインターハイで全国大会に出場している技巧派集団の國學院久我山高だ。今季、東京では関東大会予選も優勝しており、最も評判の高いチームと言える。しかし、中瀬にとっては、対戦を願っていた因縁の相手だ。4年前の決勝戦、帝京が國學院久我山にPK戦で敗れた試合に、兄の大夢が2年生で出場していた。東京の代表権を得た國學院久我山は、全国大会で準優勝。ほんのわずか届かなかった悔しさが大きく膨らんだことは想像に難くない。
中瀬は「兄が負けた試合は、スタンドで見ていて悔しかった。自分はずっと久我山とやりたくて、兄に憧れて同じ高校に入った。決勝は絶対に勝ちたい。勝って、全国に行きたいです。びびらず、いつも通りのプレーができれば良い」と全国切符をかけた頂上決戦にかける決意を語った。持ち味のスピードとパワーで守備の壁を叩き割り、全国大会へ――。自身の夢と兄の雪辱をかけて、因縁の相手を打ち破りに行く。
(取材・文 平野貴也)
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