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強固な土台の上に新たなカラーを描く。強化4年目の近江が夏冬連続全国へあと1勝:滋賀

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後半32分、近江高MF冨板優馬が3点目のゴール

[11.9 選手権滋賀県予選準決勝 近江高 3-0 立命館守山高 皇子山陸上競技場]

 第98回全国高校サッカー選手権滋賀県予選は9日、皇子山陸上競技場で準決勝2試合が行われた。第1試合は近江高が3-0で立命館守山高に勝利し、決勝進出を決めた。

 快晴の下での一戦。序盤は立命館守山がカウンターから敵陣深くまで攻め込むが、次第に近江がペースを握っていく。前半8分、左サイドのMF冨板優馬(2年)の折り返しからFW中村匡汰(2年)が放ったシュートはクロスバーに直撃し、そのこぼれ球に反応したFW池田海翔(3年)のシュートもGKに阻まれてしまう。

 しかし、15分にスコアが動く。CKでキッカーを務めるMF森雄大(2年)は低いボールを二アサイドへ送り込むと、DF末井友真(3年)が右足で先制点を決めた。その後も近江は優勢に試合を進めるが決定打を打ち出せず、再び相手の攻撃を受ける場面が増えていく。

 1点差で折り返した後半も、序盤は立命館守山が攻勢を仕掛ける。前後半の立ち上がりと終盤に点を取りにいくという、この日のゲームプランを打ち出していくが、後半10分に藤田が放ったミドルシュートも同点弾とはならない。

 すると、相手の反撃をしのいだ近江が前半同様に流れを引き寄せる。パスをつないで攻め込む展開が増えていくと、14分にMF山中亮弥(2年)がエリア内から左足で追加点をあげ、さらに32分にも冨板がクロスを頭で押し込んで試合を決めた。

敗れた立命館守山は前半途中にDF中畑浩暉(3年)が負傷交代するアクシデントがある中、5-3-1-1の布陣で分厚く守り、攻撃となればMF藤田辰右衛門(3年)らが後方からのボールを受け、そこへ中盤やサイドの選手が果敢に飛び出していった。

 ゴールに迫る時間帯もあったが、少ないチャンスをものにすることができずに準決勝で敗退となった。ただ、今大会は守山北高や綾羽高といった強敵を打ち破ってのベスト4進出だ。キャプテンの藤田は「厳しい組み合わせだったからこそ、モチベーションを高く保てた。この大会で成長できた」と振り返る。さらに「ほんまに全国へ行きたかった。立命館守山の歴史を変えたかった。来年は僕らがしてきたこと以上の取り組みをして、全国へ行って欲しい」(藤田)と後輩たちへ想いを託した。

夏の高校総体予選で滋賀県を制した近江は、その実力を発揮して快勝した。前田高孝監督は「ハーフタイムに修正して、攻撃のつながりができはじめた」と後半の戦いを評価する。得点シーンはセットプレーやスローインから生まれているが、その流れを呼び込むための攻撃ができていたのは間違いない。

サッカー部の強化に力を入れ始めてから4年目を迎えた今季は、チームスタイルに変化が見られる。「先輩が残してくれた球際の強さやハードワークすることは近江の土台として忘れずに、それプラス今年はボールを動かす中で攻撃のスイッチを入れることをやっている」(末井)と攻撃面に着手しているのだ。ゲームキャプテンを務める森は「去年のサッカーで全国へ行けなくて、今年はどう戦うのかというところで今の形を一年間かけて作ってきた。今年の選手たちの特徴にも合っているサッカーだと思います」と手応えを口にしている。

ただ、新しいスタイルにチャレンジする中で、それまでやってきたことが遂行しきれないという弊害は起こりがちだ。実際に、プリンスリーグ関西ではハードワークや球際の甘さが出てしまって負けた試合もあったという。そういった失敗も経験してきたからこそ、「選手権では先輩たちがやっていたことを、まずしっかり出す。その上で、今年積み上げてきた色を出そうと改めてチームで話し合ってきました」(森)と全体の意思統一を図ってきた。

 高校総体予選の決勝の再現となる草津東高との決勝でも、先輩たちが築き上げてきた強固な土台をキャンパスとして、そこに新たな近江カラーを描くことで、全国への切符をつかんでみせる。

(取材・文 雨堤俊祐)
●【特設】高校選手権2019

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