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「お兄さんの分まで全国で」「弟に託すだけ」。福井県決勝で激突した飯田兄弟の絆

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兄のDF飯田侑真(3年)に寄り添う弟のMF飯田晃明(2年)

[11.10 高校選手権福井県予選決勝 丸岡2-1北陸 福井]

 福井県決勝の舞台で飯田兄弟が激突した。丸岡高が2年連続の選手権出場を決め、北陸高は終盤の反撃もあと一歩届かなかった。兄のDF飯田侑真(3年)は北陸、弟のMF飯田晃明(2年)は丸岡のユニフォームを纏い、互いにフル出場で選手権切符を争った。

「お兄さんが始めるって言ったから、サッカーを始めました。野球と悩んだ結果、サッカーにしました」と話す弟・晃明は明るい笑顔を湛えた。一学年差の兄弟。坂井フェニックス丸岡ジュニアユースから、2人は別々の道へと進んだ。

 揃って丸岡、北陸の両強豪校から声がかかったが、兄・侑真は「松本先生の武士道精神が自分に合っている」と松本吉英監督を師事して北陸へ。弟・晃明も当初は「一緒にやりたい」と北陸に傾いたが、全国を目指して小阪康弘監督が指揮する丸岡に決めた。

 1年生で選手権を経験した兄・侑真は北陸の副キャプテンという立場。これが最後とあって、両親は兄側の応援席で決勝を見守った。2年ぶりの選手権を目指し、右サイドバックで攻守に奮闘したが、歓喜の瞬間は迎えられなかった。試合後は「後輩に全国の経験をさせたかった」と悔やみつつ、「あとは弟に託すだけ」と力を込めた。

 飯田兄弟は互いに刺激し合い、支え合ってサッカーに向き合ってきた。「兄は僕のことを常に考えてくれる。家でも喋りかけてくれるし、いつも近くにいてくれる」と弟・晃明が言えば、兄・侑真も「たった一人の弟。大好きなので」と言う。

「弟が苦しい想いをしている時は自分が声をかけてサポートしたり、自分が苦しい時には弟があえて喋らないようにしてくれたり、いい関係でした。喧嘩もするんですけど、その分仲も良いです」(兄・侑真)

 試合終了の笛が鳴ると、涙をこぼす兄に弟が寄り添い、「3年間お疲れさま」「全国で頑張って」と声を掛け合った。兄の想いを背負い、選手権の舞台へ――。弟・晃明は「絶対にいい結果を残したい。お兄さんの分まで全国で戦えたら」と決意をにじませた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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