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洛北の勢いに飲まれて苦戦も、交代選手が大仕事。延長戦制した京都橘が2年ぶりに選手権へ

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京都橘高が2年ぶりに選手権へ

[11.17 選手権京都府予選決勝 京都橘高 3-2 洛北高 たけびしスタジアム京都]

 第98回全国高校サッカー選手権京都府予選決勝が17日に行われ、インターハイ4強の京都橘高洛北高が対戦。延長戦の末、京都橘が3-2で勝利し、2年ぶり8回目の選手権出場を決めた。

 準優勝した2012年度の選手権以来、府予選6連覇を果たしてきた京都橘だが、昨年は準決勝で京都共栄高に敗れ、連続出場がストップ。雪辱を誓った今年は苦しみながらも、止まっていた時計の針を再び動かした。

 立ち上がりは、自陣からのロングボールを徹底した洛北のペースに飲まれた。DF金沢一矢(2年)らの跳ね返しから落ち着いてボールを動かしたい所だったが、「うちが相手の勢いを止めて、足元でプレーできれば行けるかなと思っていたけど、洛北さんのプレッシャーが速くて繋げなかった」(米澤一成監督)。洛北の勢いに飲まれて、ロングボールを蹴り返し、落ち着かない試合が進んだ。

 それでも、「昨年の選手権で負けた先輩の想いをどうにか表現したかった」と話すMF高木大輝(3年)が左サイドを思い切りよく突破し、相手を押し返す。すると前半11分には、ファーに流れた高木の左クロスから、MF西野太陽(2年)のシュートが右ポストを叩く。35分にはハーフウェーライン左から高木がゴール前にフィードを入れ、MF梅村脩斗(3年)が体勢を崩しながらゴールを狙ったが、洛北GK竹村直哉(3年)の好セーブに阻まれた。

 スコアレスの状況が動いたのは、後半4分。京都橘は左コーナー付近で奪ったFKをMF佐藤陽太(3年)がゴール前に展開。低く入ったボールをDF山内琳太郎(2年)が合わせ、均衡を崩した。

 苦しい中での先制点で弾みがつくはずの京都橘だったが、「1点を獲ってからリズムが狂い始めた」(米澤監督)。ここからは、MF横田裕澄(2年)が「1点を獲られて試合が終わることを考えたのが嫌だった。走って走って獲り返そうと思った」と振り返る洛北の勢いに再び飲まれてしまう。

 洛北は後半25分、ショートコーナーの折り返しを受けた横田がゴール前に低いクロスを入れると、そのままゴールネットに吸い込まれ、同点に追いついた。32分に西野のゴールで京都橘が再びリードを手にしたが、38分には洛北が再び決定機を作り出す。MF長元真夢(3年)のスルーパスからゴール前を抜け出したFW山嵜洸太朗(3年)の一撃で試合は振り出しとなり、延長戦へと突入した。

 互いに力を出し切る死闘となったが、延長戦では自力の差が出る形となった。洛北は「伊藤を交代せざるを得なかったのが痛かった」と前田尚克監督が振り返ったように、頭部を負傷しながらも、守備で奮闘したDF伊藤颯真(3年)を延長戦前半終了時にベンチに下げた。対する京都橘は、「走力が落ちた所でフレッシュな選手を入れて戦いたいと思っていた」(米澤監督)とFW永井友也(2年)とFW木原励(1年)の同時投入を皮切りに延長戦前半から後半開始までに6選手を入れ替えた。

 京都橘の策が見事にハマり、延長後半6分には左サイドでボールを受けた交代出場FW古川巧(3年)がカットイン。タッチが大きくなり、相手DFに奪われそうになったが、「3年生の気持ちが出た」(米澤)と懸命に足を延ばしてゴール前にボールを流した。中央で受けた木原が落ち着いてDFをかわすとラストは永井がゴールネットを揺らした。交代で入った3選手の働きによって、3度目のリードを手にした京都橘がそのまま逃げ切り、タイムアップを迎えた。

 苦しみながらも、掴んだ2年ぶりのタイトルには価値がある。「今大会はチームが一つにまとまることができたのが収獲。今日の試合も苦しい時に皆で声を掛け合って粘り強く戦えた」と話すのは高木。今年の代は、これまで米澤監督から「横の繋がりがない」と団結力の無さを指摘されてきたが、予選を重ねるごとに応援も含めて、チームとして一つにまとまった。そうした雰囲気の良さに後押しされ、ピッチに立つ選手も奮闘。準々決勝の福知山成美高戦終わりには、米澤監督から「気持ちが出ていた」と声を掛けられたという。

 より難しい試合が予想される選手権では、よりチームとして一致団結し、タフに戦えることが求められる。今予選で得た収獲を全国の舞台に活かせるか期待したい。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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