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[MOM3064]京都橘MF佐藤陽太(3年)_女房役を欠く中、攻守に奮闘。悔しさを晴らすべく全国へ

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佐藤陽太が攻守で奮闘

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.17 選手権予選決勝 京都橘3-2(延長)洛北 たけびし]

 今予選の京都橘高はDF藤橋怜士(3年)を筆頭にCBに怪我人が相次いだ。週頭には不安視されたDF陣をサポートしてきたMF志知遼大(3年)までもが体育の授業で負傷。米澤一成監督が「真ん中3人がいないから、試合が始まらない」と頭を抱える中で、全国行きがかかった大一番に挑むことになった。

 万全とは言えないチーム状況の中で気を吐いたのは主将のMF佐藤陽太(3年)だ。本来は3列目でボールを散らして前に出ていく攻撃色の強いボランチだが、この日は志知がいない分、いつも以上に守備に重点を置いて試合に入った。

 準決勝の京都共栄高戦に続いて決勝でもロングボールを受けることになったが、「セカンドボールを拾う大切さを米澤先生から何回も言われてきたし、チームメイトからも『志知の代わりに守備しろよ』と言われていた。DFラインがしっかり跳ね返してくれると思っていたので、ボランチとサイドハーフがしっかり拾えればチャンスになると分析していた。そこは意識していた」と献身的に自陣でボールを回収。奪ってからボールを繋げず苦しんだのは反省点だが、しっかり与えられた役割をこなした。

 スタンドから見守った志知は「いつも以上にハードワークしていた。普段は僕が守備、陽太が攻撃と言う役割だけど、攻撃も守備も頑張っていた」と口にする。

 慣れない仕事に汗を流す中、後半4分には本職の攻撃で見せ場もあった。左CK付近でFKを獲得すると、ゴール前に低いクロスを入れて、DF山内琳太郎(2年)の先制点をお膳立てした。

 ただし、そこからは「後半に先制点を獲れて気持ちに余裕が生まれたのは良かったけど、その余裕が悪い方に出た」ため、後半25分には同点弾を献上。32分にMF西野太陽(2年)の得点で再リードを得たが、38分に再び同点とされ延長戦に突入した。

 思い起こされるのは、準決勝で京都共栄高にPK戦で敗れた昨年の選手権予選だが、「インターハイ予選の決勝もPK戦で勝ち上がっている。PKは気持ちが大事だと思っていたので負ける気はしなかったけど、延長のうちに勝ち切ろうと全員が思っていた」。

 想いの通り、延長後半6分にはFW永井友也(2年)が決勝点をマーク。攻撃陣を中心に6選手が交代する中、最後までピッチに立ち続けた佐藤は「点を獲った瞬間は嬉しかったけど、2失点していたのですぐに引き締めようと思った。3点目の後は守備のことを考えた」と逃げ切りモードに移行し、2年ぶりの選手権を手繰り寄せた。

 苦しんだ試合展開同様に、自身の出来には納得していない。佐藤は、「しんどい時間帯ほど声を出してチームをまとめようと思っていたけど、自分のことで精いっぱいになって周りが見えなくなる時間帯があった。自分が一番冷静になって、周りを見て行かないといけない」と反省を口にしたが、彼の存在はチームにとって別格。試合後の米澤監督は「攻守によく頑張ってくれた。プレーが効いていて、相手は嫌だったと思う」と称え、MOMに指名した。

 選手権でも佐藤の存在は鍵となる。「1年生の時も経験しているけど1回戦敗退。2年生では全国に行けず思い通りの結果を残せていない。全国制覇が大きな目標だけど、まずは目の前の試合に勝てるよう調整していきたい。そのためにチームのために走ったり、チームを大事にしていきたい」。全国の舞台でも主将として献身的な仕事をこなしつつ、本来の役割である攻撃でも力を発揮できれば、自ずと結果もついてくるはずだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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