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指揮官から「マジで引け!!」の指令…“落選”の日大明誠FW鶴見來紀、隣の選手に「おめでとう」

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日大明誠高(山梨)FW鶴見來紀(3年)(写真協力=高校サッカー年鑑)

 番号札が引かれた瞬間、ガッカリした。しかし、日大明誠高(山梨)FW鶴見來紀(3年)はすぐさま、隣に座る日章学園(宮崎)DF阿部稜汰(3年)に「おめでとう」と声を掛けた。

 そのキャラクターは特異。文化祭の司会をやるなど、「俺だ!! 俺だ!! ってやってます」と全校生徒の前に出てもはしゃぎ、後藤聡志監督も「明誠で知らない生徒はいない」というほどの知名度を誇る。鶴見自身も“相方”というMF大倉啓太(3年)とともに「超“陽”キャラで有名です」と語っており、臆することなく人前に立つことができる。

 迎えた選手権の組み合わせ抽選会。鶴見には一つの狙いがあった。それは、選手宣誓の選手に選ばれること。鶴見のキャラを熟知する後藤監督からも「マジで引け!!」と言われていたようだ。実際には本人が札を引くのではなく、今大会の応援マネジャーを務める森七菜さんが“選手宣誓決め”の抽選を実施。「超大好き」という森さんを見つめ、「引いて下さい」と祈った――。しかし、森さんが抽選箱から引き上げたのは「47」の番号札で、「45」の日大明誠ではなかった。

「超やりたかった…。こんな経験はできないですからね。40番台が見えたので、『キタ!!』と思いましたが、本当にちょうど隣の席に座っている選手が選手宣誓になったので、日章さんが決まった瞬間に『おめでとう』『超うらやましいよ』と伝えました」

 山梨県予選決勝では前回王者で選手権ベスト8の日本航空と対戦。延長戦の死闘を1-0で制し、悲願の初出場を決めた。「自分も泣いてしまうほど嬉しかったし、チームメイトもそうだったし、スタンドのメンバーも泣いていたという話を聞き、チーム一丸となって全員が勝ちいという気持ちがあったからこその勝利だったと思う」と歓喜の瞬間を振り返る。

 しかし、その瞬間はすでに過去のもの。視線の先には待ち焦がれた全国の舞台が待っている。初戦の対戦相手は四日市中央工(三重)に決まった。「強いチームで『おっ!!』と思ったけど、相手をリスペクトし過ぎることなく試合に入りたい。自分たちの良さを出せれば勝てると思うので、先を見据えずに一戦一戦勝ちにこだわって戦っていきます」。まずは四中工戦に照準を絞って調整を進め、最高の状態で初戦を迎えたい。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2019

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