beacon

50m級スローから全国初ゴール! 初出場・大手前高松、香川県勢7年ぶりの悲願達成

このエントリーをはてなブックマークに追加

全国初勝利を飾った大手前高松高(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 全国高校選手権1回戦 帝京大可児高0-1大手前高松高 オリプリ]

 第98回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行い、ゼットエーオリプリスタジアムの第2試合は帝京大可児高(岐阜)と大手前高松高(香川)が対戦した。強風が吹き荒れる難しいコンディションの中、風上を生かしたロングスローから先制した大手前高松が1-0で勝利。全国初出場で県勢7年ぶりの初戦突破を果たし、矢板中央高(栃木)との2回戦に歩みを進めた。

 どちらもボールをつなぐスタイルを志向する両チームの激突となったが、初戦の緊張を踏まえた心構えからか、序盤は上空をボールが行ったり来たりする展開が続いていた。そんな中で先に決定機を導いたのは初出場の大手前高松。前半12分、自陣からのロングフィードに抜け出したFW片上椋太(3年)が左ポストに当たる惜しいシュートを放った。

 対する帝京大可児は前半17分、MF横井内壮(3年)のインスイングの右CKがゴールマウスを襲ったが、GK三谷幸記(2年)のジャンピングセーブに遭う。その後はピッチを横断するように吹き荒れる強風を活かし、DF神戸政宗(3年)のロングスローで攻勢を強めたが、ゴールを奪えないまま前半を終えた。

 後半はさらに風が強まり、風向もやや変わって大手前高松が風上に立つ形。すると12分にスコアが動いた。MF滝平昂也(3年)が左サイドから50m級のロングスローをストレート軌道で投げ込むと、GK安江翼(3年)がかろうじて触ったボールがクロスバーにヒット。この跳ね返りを拾ったMF谷本将虎(3年)がワンタッチで流し込んだ。

 大手前高松の記念すべき全国初ゴールは貴重な先制点。さらに1点をリードしても主導権を渡さず、時にはシンプルに裏へのボールを蹴り込み、時には中盤パスワークでプレスをかわしたりと、相手に狙いを絞らせない。後半19分にはDF佐々原遼人(2年)の縦パスから谷本がクロスを上げ、片上の惜しいボレーシュートにつながる良い攻撃も見られた。

 風下で劣勢が続く帝京大可児はDF前川文哉(3年)ら守備陣がなんとか耐え抜き、途中投入のMF小宅空大(2年)やFW藤村海那汰(3年)らフレッシュな選手に攻勢を託して反撃の機会をうかがう。それでも後半33分、長谷川の突破からパスを受けたMF関根空(3年)のシュートは枠外。ラストプレーでは神戸のクロスに藤村が合わせるもゴールには結びつかず、そのままタイムアップを迎えた。

 香川県勢にとっては2012年度の香川西高以来となる初戦突破。川上暢之監督は「戦後はベスト8に行っていないという話を協会から言われて、またここ最近は初戦を突破したことがないとも言われていた。ただそれは今までのことであって、他のチームがやったこと。俺たちは違うから意地でもやろうということでやってきた」と胸を張る。

 そうした自信は準備の賜物だった。千葉県内房地区で強風の可能性が高いことは準備段階から予測しており、帝京大可児の特徴も監督・コーチを中心に映像で分析済み。指揮官は「準備していることの範囲内だった。あれって思ってしまうと頭がそこに行くけど、『ああこうか』というところで準備ができていた」と振り返った。

 また試合の入りは普段とは異なる3バック気味の布陣を採用していたものの、相手の対策が整ってくるのを見るやすぐさま通常どおりの4バックに変更するなど、臨機応変な対応も光った。「足りないところはこうした欲しいと伝えるけど、基本的には選手たちが考えて判断している」(川上監督)。そうした自立への働きかけもピッチ内での順応性につながっているようだ。

 初出場で収めた全国での白星。それも香川県勢の勝利は7年ぶり。これだけでも一つの偉業だ。しかし、目標はあくまでも県勢戦後最高のベスト8。2回戦の矢板中央高戦に向けても指揮官は「今日の試合(大分高戦)を見ても特徴の違う相手。ダイナミックなところと、ルーズさが生まれたら中盤のスピードを出してくる。守備のところをもう一回徹底して、奪ったところをどうするかを調整していきたい」と綿密な準備に取り組み、勝利を狙っていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

TOP