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[MOM3119]神戸弘陵MF沖吉大夢(3年)_「10番失格」からの奪還…恩師に報いる2戦3発

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2得点を挙げた神戸弘陵のMF沖吉大夢(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権2回戦 神戸弘陵高 3-2 明秀日立高 ニッパツ]

 背番号10にふさわしい活躍を見せている。神戸弘陵高(兵庫)のMF沖吉大夢(3年)が2ゴール。直接FKを決めた1回戦の秋田商戦(○3-2)に続く2戦連発で今大会早くも3得点となった。

 まずは前半14分、右サイドからMF兼田拓実(3年)がマイナス気味にグラウンダーのクロスを入れると、走り込んだMF谷晃希(3年)、MF田中祉同(1年)がいずれも空振り。それでもファーサイドに詰めた沖吉がPA外から利き足とは反対の左足を振り抜き、豪快にゴールネットを揺らした。

「いいところに転がってきて、自分は左足でも蹴れるので、左で打つことは迷わなかった。ミートだけを考えて、いい感じで当たってくれた」。後半4分に2-0とリードを広げてからは明秀日立の反撃を受け、後半12分に失点。さらに怒涛の猛攻を受けたが、ギリギリのところで同点ゴールを許さず、逆に後半33分、神戸弘陵に大きなチャンスが訪れた。

 MF田中祉同(1年)のスルーパスに反応した途中出場のMF徳弘匠(2年)がPA内で切り返したところを倒され、PKを獲得。ここでキッカーを務めたのが沖吉だった。相手に流れが傾いていた中で2点差に突き放す絶好機。プレッシャーもかかる場面だったが、ど真ん中に蹴り込み、3-1と勝利を決定づけた。

 延長戦にもつれ込んだ兵庫県予選決勝の県立西宮戦。延長後半に沖吉が決めたPKで全国の切符をつかんでいた。「予選の決勝で右に蹴っていたので、右は読まれると思って、真ん中に蹴った」。主審の笛が鳴ってからしばらく間を置いて蹴ったが、「注目してほしいし、(蹴るのを)待ったら周りが静かになるかなと思って。予選のときは静かになったけど、今日はあんまり静かにならなかったので、ちょっと待ってすぐに蹴った」と度胸満点だった。

 今大会では10番を背負う沖吉だが、県予選では背番号7だった。「(予選で10番を付けた)吉田(翔貴)の方が点を決めていて、僕の10番で結果が出ていなかった。僕の解釈では“10番失格”だったという思いです」と当時を振り返る。それでも県予選のパフォーマンスもあり、全国では再び背番号10に袖を通すことになった。

「また10番をもらうときに監督から特に話はなかったけど、この背番号で絶対にやってやるぞと。(OBの)江坂(任)選手や谷監督も付けていた番号なので重みを感じている」。そう話す沖吉について谷純一監督は「弘陵で10番を付けるのは勝負を決める選手。予選からそういうゴールを決めてくれているし、背番号に見合った活躍を見せてくれている」と絶対の信頼を寄せる。

「人と違うのが好きな性格」という沖吉は卒業後、アメリカの大学に留学する意思を固めている。一方で恩義に報いたいという義理人情に厚い一面もある。ヴィッセル神戸U-15出身の沖吉は進学先として県外の高校も考えていたという。ところが、神戸弘陵のオープンキャンパスを訪れた際、谷監督から直接、「お前と一緒に全国に出たい」と口説かれ、進学を決めた経緯がある。

 93年度大会で8強入りしている神戸弘陵だが、谷監督が就任した05年以降は13年度大会(2回戦敗退)、15年度大会(2回戦から登場し3回戦敗退)といずれも1勝止まりだった。「谷監督は全国で2回勝ったことがなかった。3度目の正直で勝てたことは良かったけど、僕らはまだまだ満足していない」と沖吉。2勝しただけで恩返しになるとは考えていない。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

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