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[MOM3138]仙台育英GK佐藤文太(3年)_飛ぶ方向が逆、逆、逆…土壇場の“秘策”で勝利導くPK阻止!

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仙台育英高GK佐藤文太(3年)が会心のPKストップ(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 選手権3回戦 仙台育英高0-0(PK9-8)日大藤沢高 等々力]

 飛ぶ方向がことごとく逆を行く。劣勢の80分間を無失点でしのぎ、「今日はPKで勝つぐらいしかない」と臨んだ最終決戦で焦れる展開が続いた仙台育英高(宮城)のGK佐藤文太(3年)。しかし、窮地で利かせた機転が勝利を呼び込んだ。

 高い技術で試合を支配していた日大藤沢高(神奈川)は、PK戦でも巧者だった。「日大藤沢の選手はPKが上手だった。自分が先に(相手が蹴ると)思った方向に飛んでしまうと、相手は足首で方向を変えてくる」。自身が飛んだ逆サイドのネットが揺れる場面が続いた。

 一方、後半の終盤に“PK要員”を続々と投入していた仙台育英も譲らず、7人目を終えた時点で7-7。ところが、8人目の先攻キッカーを務めたDF中川原樹(3年)が失敗してしまう。

 次のシュートを止められなければチームの敗退が決定。「樹が止められてあとがない状況の中で、ここで自分が止めなかったら悔いがすごく残る」。覚悟を持ってゴールマウスに立った佐藤は、日大藤沢DF古谷陸(3年)が打ったシュートと同じ方向へ飛び、見事に止めてみせた。

 9人目は両チームとも成功し、10人目の仙台育英MF島野怜(1年)がポストに当てながらも決めると、迎えた後攻の日大藤沢MF植木颯(1年)のシュートを佐藤が再びセーブ。PK9-8で仙台育英が30年ぶりのベスト8進出を果たした。

「読みというのは少しはあるんですけど、直前で方向を変えられてしまうので、どっちかと言ったら駆け引きをしてこっちに蹴らせるようにしました」

 佐藤は途中から対応を修正したPKについて「体の向きやフェイントで相手にどっちに飛ぶのか迷わせる感じ」と説明。狙いが完璧にハマり、「あの時が一番鳥肌が立ったというか、一番心に残っています」と振り返った。

 五條高(奈良)との1回戦(1-1、PK3-0)に続き、再びPK戦で主役となった佐藤。過去最高タイの4強入りが懸かる準々決勝では、帝京長岡高(新潟)と戦う。新潟県出身の佐藤にとっては地元の高校とのゲームだ。「地元で見てくださる今まで支えてくださった人たちもいるので、そういった人たちに自分のプレーを見せられるのがすごく嬉しい」。日大藤沢と同様に手強い相手となるが、故郷に成長した姿を示し、仙台育英を勝利に導く。

(取材・文 阿部哲也)
●【特設】高校選手権2019

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