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“PK要員”のFP投入、PKストッパーの存在…仙台育英はPK戦まで“デザインされた”戦いで8強切符

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PK戦10人目、仙台育英高GK佐藤文太が足で止めて決着。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.3 選手権3回戦 仙台育英高0-0(PK9-8)日大藤沢高 等々力]

 89年度大会以来、30年ぶりとなるベスト8進出。仙台育英高(宮城)はサドンデスまで“デザインされた”PK戦で神奈川王者・日大藤沢高を突破した。

 個々の技術が高く、スペースへ鋭く動き出してくる日大藤沢の選手に必死に食らいつき、0-0で試合を進めた。その仙台育英は後半31分、FW佐藤遼(1年)に代えてFW山口蓮(3年)を投入。そして、アディショナルタイムには堅守の中心の一人となっていた左SB小林虎太郎主将(3年)をFW中山陸(3年)へスイッチする。

 彼らの投入はPK戦を想定したものだった。守備のバランスを崩さないこと、そしてPK戦で強みを発揮する交代策を施し、“狙い通り”にPK戦へ。山口は3番目、出場時間が1分ほどだった中山は5番目のキッカーを務め、ともにシュートをコースへ沈めて見せた。

 城福敬監督が「佐藤を外したのも、キャプテンを外したのもPKを考えて布陣を変えました。サドンデスになっても良いような布陣にしました」というように、8人目のCB中川原樹(3年)を除いて10人中9人が決めた仙台育英は、PK戦で絶対的な信頼を受けるGK佐藤文太(3年)が2本止める活躍もあって3回戦を突破した。

 城福監督はキッカーの順番を「残り5分切ったらずっと計算していた」。日常のキックの精度、今大会の調子、当日のプレーから熟考した上でキッカーを決めている。この日は本来ならば5人目までに入ってくるMF明石海月(1年)を9番目で起用。強気のドリブラーが今大会は消極的な面も見られるために順番を下げたという。明石は一度助走の体勢に入ってから、慎重にボールをセットし直して決めたが、結果的に9番目の起用が当たる形となった。

 80分間で試合を決められなくても、PK戦で勝つ。これは佐藤文あっての戦略だ。佐藤文は、前回大会の宮城県予選決勝(対聖和学園高)で圧巻の3連続PKストップ。今大会初戦(対五條高)でもPK戦で3本中2本を止めて完封している。指揮官も「(佐藤)文太は必ず1本を止めてくれる。彼がいるからできることですね」。その中で守護神も見事に期待に応えた。

 佐藤文がヒーローになったが、各選手が仲間を信頼し合って結果に繋げている。PK戦直前で交代した小林も主将として最後まで一緒に戦い、責任を果たしたいという気持ちを持っているが、「やっぱり上手いヤツが蹴った方が良い。文太がいるんでそこは相手にもプレッシャーをかけられた」。そして、守護神含めた仲間に託して勝ち取った白星を「めちゃくちゃ嬉しいです」と喜んでいた。

 城福監督は「(PK戦で)失敗したら私の責任。子どもたちには何の責任も無いと思っています」。次戦は前回大会で19人目までもつれ込むPK戦を制している帝京長岡高(新潟)だ。まずは80分間の戦いでしぶとく食らいつくこと。そして、PK戦決着となれば、三度全員で勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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