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1年前は“裏選手権”で優勝。あれから372日、静岡学園が埼スタで舞う

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1年前、“裏選手権”で優勝(写真上)した静岡学園高。今冬は選手権(写真下)で頂点に立った。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 歓喜の24年ぶりV。埼玉スタジアム2○○2のピッチで川口修監督や齊藤興龍コーチ、コーチとしてベンチ入りした井田勝通前監督を胴上げした静岡学園高だが、1年前の年明け、彼らが戦っていたのは全国高校サッカー選手権ではなく、「もう一つの選手権」だった。

 静岡学園は18年11月の選手権静岡県予選決勝で浜松開誠館高に1-2で惜敗。選手権への出場権を獲得することができなかった。そのため、青森山田高(青森)や流通経済大柏高(千葉)が勝ち上がり、FW染野唯月(尚志高)のハットトリックに沸いた前回選手権の裏で、静岡学園は「NEWBALANCE CUP 2019 inTOKINOSUMIKA(通称:裏選手権、各地の選手権予選準優勝校や4強などの強豪48校が出場)」に出場。現2、3年生は、静岡県裾野市の時之栖スポーツセンターで他の選手権出場を逃した強豪校と試合を重ねていた。

 その“裏選手権”で静岡学園は優勝した。京都橘高(京都)や武南高(埼玉)を破って準決勝へ進出した静岡学園は、今回の選手権決勝でも躍動したMF浅倉廉(3年、以下全て現学年)とMF井堀二昭(3年)、MF小山尚紀(3年)のゴールで横浜創英高(神奈川)に3-0で快勝。決勝では日大藤沢高(神奈川)に先制点を許したものの、CB阿部健人(3年)中心にその後の攻撃を封じると、左SB中辻涼雅(3年)、FW奥田友惟(3年)、小山、MF関俊哉(3年)のゴールによって4-1で逆転優勝を果たしている。

 当時からMF松村優太(3年)や小山、浅倉が目立つ活躍を見せていた一方、当時ボランチだったMF西谷大世(3年)はその後左SBへ転向。今回の選手権決勝のヒーロー、CB中谷颯辰(3年)や右SB田邉秀斗(2年)、GK野知滉平(2年)は帯同していなかった。

 “裏選手権”の指揮を執った齊藤コーチは「『(相手から)何ともならない(止められない)』と言われるくらいになりたいですね」と語り、松村は「表(の選手権)ではベスト4に青森山田や流経(流通経済大柏)がいつもいる。自分らが(この優勝で)最初の流れを作れたらなと思います」とコメント。そして、小山は「獲れるタイトル全部獲って、静学のサッカーで勝ち残って行けたら思います」と宣言していた。

 当時は4年間選手権から遠ざかり、まだまだ自信も全国大会で静学らしい戦いをする力もあったとは言い難い。だが、静岡学園はそこから個々がテクニックとインテリジェンスを磨き、「攻め続ける」ことができる個、チームへと成長。“裏選手権”は不在だった選手たちも台頭し、激しい競争を勝ち抜いたメンバーで今冬の選手権の舞台に立った。

 今年の3年生は例年に比べてテクニックが秀でた学年ではないという。それでも、川口監督が「課題が出た時に改善しようと、その改善力がある。自分たちの頭で整理する力が今年はあったのかなと思います」と評した世代は、完璧なものではなかったかもしれないが、選手権決勝で静学スタイルのサッカーを披露。0-2になっても諦めずに攻め続け、大会史に残るような劇的な逆転優勝をしてのけた。

 100人足らずの観衆の前で“裏選手権”決勝を戦っていた19年1月6日から372日。埼玉スタジアム2○○2に集まった56,025人の大観衆の前で、今度は“本当の”選手権の頂点に上り詰めた。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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