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目標は全国出場ではなく、全国1勝。5年連続ベスト4の東京朝鮮が悲願達成へ9-0発進:東京A

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東京朝鮮高がMFソ・ヨンホ(右)のゴールを喜ぶ。チームは一体感を持って全国1勝へ

[10.10 選手権東京都Aブロック1回戦 東京朝鮮高 9-0 武蔵高 駒沢補助]

 10日、第99回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選1回戦で東京朝鮮高武蔵高が対戦し、東京朝鮮が9-0で快勝した。東京朝鮮は18日の2回戦で東大和高と戦う。

 東京朝鮮は、昨年度まで5年連続で選手権予選ベスト4。現在、5年連続のベスト4は帝京高と東京朝鮮のみであり、激戦区・東京の中で毎年自力の高さを示し、上位進出を果たしている。だが、東京朝鮮はいずれも準決勝で敗退。今年こそ準決勝の開催地・西が丘を突破し、さらなる高みへという思いを全員が持っている。

 選手たちの目標は、全国出場ではなく、「全国1勝」だ。この日2得点のFWキム・ヒョンゴン(3年)は「ゴールをもっと高みのところに置かないと、(準決勝の)西が丘とかで満足しちゃう部分があると思ったから、今年はもっと高みを目指して、全国に出て1勝できる力があれば、もっと高いところまで行けるとして1勝に決めました」と説明する。1年時に予選を突破して出場したNEW BALANCE CHAMPIONSHIP U-16で全国の強豪校との力の差を実感。全国で勝つ力を身につけることを目指し、迫力のある戦いができるチームに成長してきている。

 その東京朝鮮が全国1勝へ向けて好発進だ。序盤、スルーパスで抜け出したMFペ・ビョンチョル主将(3年)のループシュートで先制。さらに「今年こそは出て全国1勝できるように頑張りたい。(攻撃参加を連発していたが、自分は)体力があるんで、気持ちが前に出てしまいます。(初戦だったが)リラックスして試合も入りましたし、自分が場を盛り上げながらできたので良かったです」という左SBク・ソンハッ(3年)が、攻撃参加からファインゴールを決めて2-0と突き放す。

 開始9分で2得点を奪った東京朝鮮は、給水タイム直前にもク・ソンハッのCKからCBオ・ヒョングン(3年)が加点。さらにハイプレスからMFソ・ヨンホ(3年)がゴールを破ると、ワンツーで攻め上がった右SBキム・スヨン(3年)のラストパスをキム・ヒョンゴンが仕留めて前半を5-0で折り返す。

 武蔵は攻められる時間が続いたが、先発唯一の3年生、CB井口颯人を中心に相手の攻撃を我慢強く跳ね返し、ボールを奪うと丁寧に繋いで、勝負しようとしていた。MF古野健一(1年)らを経由する形で前方へ運び、MF太田慎一(2年)がドリブルで仕掛けたり、FW吉松拓哉(2年)がスピードを活かして攻め上がったりするシーンもあった。

 だが、高い位置からの守備でボールを奪い取り、ペ・ビョンチョルをはじめ、ク・ソンハッとキム・スヨンの両SBや左SHのパク・サンジュ(3年)がどんどん攻め上がって来る東京朝鮮は、後半も迫力のある攻守を継続する。後半開始から投入されたMFチョン・アヒョン(3年)が2分、8分と連続ゴール。チョン・アヒョンがパワーのあるシュートや仕掛けでチームに新たな活力を加え、27分にはキム・ヒョンゴンが巧みなコントロールから自身2点目のゴールを奪う。

 姜宗鎭(カン・ジョンジン)監督の「いつもだったら良い前半だと後半に点が入らない。前半よりチャンスを作って次に繋げられるように」という期待に選手たちが応えた。試合終盤も気を緩めることなく前へ。対する武蔵は井口が決定的なシュートをかき出すなど、必死に対抗していたが、それでも東京朝鮮は後半40分、FWファン・チャンジュン(3年)が右足で決めてゴールラッシュを締めくくった。

 東京朝鮮は新型コロナウイルスの影響で夏までの活動が限られたが、リモートでの話し合いやグループでのトレーニング。活動再開後は3日間連続での日帰り茨城遠征や静岡遠征を実施し、強豪チームの姿勢・振る舞いなどを学んだ。そして、チームは東京朝鮮高にとって大事なモノを常に表現することを心掛けている。

 球際、運動量がチームのベース。加えてペ・ビョンチョルは「魂の込もったプレーをしようと。技術とか、フォーメーションとか、戦術云々よりも、まずはそこで『チームで気持ちで、戦うぞ』というのが最近の試合でもそうですし、固いものになってきている」と分析する。

 そしてペ・ビョンチョルは「高3の一体感でチームが成長してきて、この選手権も最後の大会でもあり、そういう気持ちの部分なども凄く良い感じになっていると思います」。主将と2人の副主将(ク・ソンハッ、キム・ヒョンゴン)、計9人の協議体(委員会)をはじめとする3年生中心に一体感のチームになってきている。一戦必勝で全国1勝へ。全員で“朝高らしさ”を発揮して歴史を塗り替える。

(取材・文 吉田太郎)
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