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流経や市船のプレスを外してゴールを。昨夏の千葉王者・日体大柏、今年の選手権は「日体のサッカーで勝つ」

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千葉制覇を狙う日体大柏高。(写真提供=日体大柏)

 今年は、「日体のサッカーで勝つ」。第99回全国高校サッカー選手権千葉県予選は24日と25日に2回戦を行う。昨夏のインターハイ出場校・日体大柏高は専修大松戸高と対戦。前回大会準々決勝で敗れた相手とのリベンジマッチに臨む。

 昨年は2枠から1枠となったインターハイ千葉県代表の座を獲得。市立船橋高、流通経済大柏高という名門2校を破っての千葉制覇で全国の高校サッカーファンたちを驚かせた。だが、昨年に関しては、我慢強い守りと身体能力の高い選手の特長を活かした攻撃スタイル。勝つことに徹しての戦いだった。

 特に流経大柏との決勝は後半終了間際に追いつき、延長戦で勝ち越すという感動的な勝利。もちろん、彼らの戦いも十分に讃えられるものだったが、今年のサッカーは異なる。取り組んできたのは、ボールを保持して、崩すことにこだわった戦いだ。15年に柏レイソルと相互支援提携を結んで以降、日体大柏が確立してきたスタイルで、市立船橋や流経大柏からの勝利を目指している。

 就任4年目を迎えた元日本代表MF酒井直樹監督は、「市船、流経は戦術(の勝負)だけではなくなる。流経の猛烈プレッシャーをどう外すか意識しないと。今年はそういう外し方、チーム戦術も結構良いレベルで落とし込んできている。それが(一定のレベル以上に)発揮できれば外せるんじゃないかと。そのために彼らもついて来てくれているので、そこで『日体のサッカーを魅せる』という機会を作ってあげたいです」と力を込める。

 柏との提携により、日体大柏はレイソルアカデミーの一つに。酒井監督や根引謙介コーチが柏から派遣され、レイソルメソッドを注入されてきた。特に今年は柏U-12、柏U-15出身のMF近江屋晃輝(3年)と右WB石川善仁(3年)をはじめ、レイソルアカデミー出身者が多い年。選手権予選1回戦の東京学館浦安高戦はDF篠宮潤哉(3年)を除く先発10人がレイソルアカデミー(柏U-15、A.A.TOR'82、野田、長生、流山)出身者だった。

 酒井監督は「ボールを保持するというプレーモデルはずっと中学の頃からやってきている。(日体大柏では新たな要求の)提示、提示でどんどん伸びていますね」と頷く。柏との提携当初からレイソルアカデミー同様にボールを保持しながら相手の守りを崩すスタイルを目指してきたが、今年はレイソルアカデミー出身者が多いこともあり、「日体大柏のスタイル」を最も確立しての戦いができそうだ。

 全国屈指の激戦区・千葉県予選を勝ち抜くのは至難の業だ。決めきる部分の精度向上などよりこだわっていかなければならないだろう。だが、8月の練習試合で昌平高(埼玉)を破るなど、選手たちが手応えを感じていることも確か。近江屋は「練習でも酒井さんからは相手のプレッシャーを理解した上で次のプレーを決めていけば崩せると言われている。相手にプレッシャーを受けていてもどこにスペースが空いているかとか見えますし、(流経大柏や市立船橋のプレス)それを崩すための練習を本当にずっとやってきている」と語る。

 実際、雨中での戦いとなった1回戦・東京学館浦安高戦(17日)でも納得の行く戦いができたようだ。序盤、相手CB橋本遥貴(3年)の高さにゴールを脅かされる場面があったものの、1タッチを多用したビルドアップでゲームをコントロール。橋本、CB飯島爽太(3年)中心に堅い相手の守りをグラウンダーやライナー性のクロスで攻略しようとした。

 CKから左WB吉沢友万(3年)の放ったヘディングシュートがポストを叩くなどなかなか1点を奪うことができなかったが、33分に中央から右へ開いた篠宮がFW小林智輝(3年)へ楔を打つ。前を向いた小林がドリブルで中央突破し、サポートしたDF山本悠真(3年)へパス。最後は山本からのリターンを小林が決めて先制した。

 酒井監督が「気持ちが前向きにならないと山本が(3バックの一角から)そこまで入っていけないと思う。勇気みたいなものは讃えたい」と頷いた山本の好プレー。さらに日体大柏は後半3分、こぼれ球を拾ったDF伊住裕樹(3年)が繋ぎ、最後は小林が2点目のゴールを決めた。後半14分にも篠宮が縦パスを差し込み、そこから4本、5本とボールを繋いでFW南雄大(3年)が右サイドへ展開。最後は近江屋のクロスが相手オウンゴールを誘い、3-0で快勝した。

 酒井監督が「次の相手(専修大松戸)はまたレベルが上がると思います」と引き締める。専修大松戸には県リーグ初戦で快勝しているが、互いにチームづくりの段階だった。前回対戦時の結果を鵜呑みにすることはできない。チームは2回戦へ向けて万全の準備を施し、昨年の悔しさも込めて難敵を突破する意気込みだ。

 そして、近江屋は一戦一戦を大事に戦うことを強調した上で、自分たちのサッカーを市立船橋や流経大柏、全国の強豪相手に「魅せたい」という。「プレミアリーグで活躍している市船、流経さんは凄くプレッシャーが速いのは分かっていて、でもそこを崩すための練習を本当にしてきています。相手の背後を突いて、GKとの1対1じゃなくて、自分たちはGKと2対1まで作っていきたいと思いますし、GKからのビルドアップのところは見てもらいたい」。新型コロナウイルスの影響によって、インターハイや関東大会、リーグ戦で自分たちのサッカーを魅せて、タイトルを獲得することは叶わなかった。その分の思いも全て選手権にぶつける。

 近江屋は「3年生にとってこれが大会ラストですし、懸ける思いというのは強いですし、自分たちは全国の舞台で活躍するというところが目標なので、そこを目指して上を見すぎずにやっていきたいと思います」と誓った。日体大柏のスタイルにこだわって初の選手権へ。より多くの人に“日体大柏のサッカー”を披露するためにも勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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