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シュート21本で2得点を反省。新人戦福岡王者の九州国際大付は成長も示して東海大福岡突破!

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前半30分、九州国際大付高MF森喜大主将が先制の右足PK

[10.31 選手権福岡県予選準々決勝 九州国際大付高 2-1 東海大福岡高 小郡]

 九国大付が課題と強さも見せて強豪突破――。31日、第99回全国高校サッカー選手権福岡県予選は準々決勝1日目の2試合を行った。県新人戦優勝校・九州国際大付高東海大福岡高戦は九国大付が2-1で勝利。九国大付は11月7日の準決勝で筑陽学園高と戦う。

 九国大付は県新人戦準決勝で東福岡の連覇を7で止めて27年ぶりに優勝。九州高校新人大会でも長崎総合科学大附高を破るなど準優勝した。一方の“タイガー軍団”東海大福岡は、15回目の全国出場を狙う伝統校。準々決勝随一の注目カードはまず開始55秒、東海大福岡が決定機を作る。右SB甲斐翔達(3年)が左サイドから超ロングスロー。これに飛び込んだMF木村翔(2年)がポスト直撃のヘディングシュートを放った。

 冷や汗をかかされた九国大付だが、前半5分からの約7分間で4度、5度と決定機を作り返す。江藤謙一監督が「同サイドに集めてサイドチェンジすれば決定機になると言っていた」と言うように、注目の大型左SB磯谷駿(3年)のクロスなど、幅を使った攻撃からビッグチャンスを連発。だが、ことごとくシュート精度を欠いて得点することができない。

 一方の東海大福岡は後方で繋いでからMF工藤和真(3年)がロングボールを配給。こちらも注目の大型レフティー・FW小川真尋(3年)が空中戦、スピードの強みを発揮する。九国大付の当たりの強さに苦しみながらも徐々にボールを握る時間も増やしていた。

 だが、九国大付は30分、自陣でセカンドボールを拾ったFW吉田晃盛(2年)がドリブルで大きく前進。これをサポートしたMF森喜大主将(3年)へラストパスが通り、ダイレクトで右足を振り抜く。東海大福岡DFのハンドを誘ってPKとなり、森が自ら右足で決めてリードを奪った。

 九国大付は前半だけでシュート12本の猛攻。磯谷や西川大貴(3年)と田吹光翼(3年)の両SHがクロスを上げ続けて追加点のチャンスを作っていた。抜け出し鋭いFW堀金峻明(3年)とアイディアと技術を兼ね備えた吉田含めて攻め続けていたものの、後半もゴール前の精度が上がらない。守備面では相手のダイナミックな攻撃に我慢強く対応していたが、24分にセットプレーのこぼれから東海大福岡CB高橋輝主将(3年)のシュートをブロックしたプレーがハンドを取られ、PKを献上してしまう。

 流れの悪い展開の中で与えた痛恨のPK。だが、九国大付はGK立石爽馬(3年)が東海大福岡MF工藤の右足シュートを読み切ってストップする。守護神のビッグプレーで同点のピンチを回避した九国大付は逆に29分、相手ロングスローからカウンター攻撃。磯谷が左足でアーリークロスを通すと、ファーサイドの交代出場MF小笠原天斗(3年)が飛び出してきたGKの上を抜くループシュートを放つ。これはクロスバーを叩いたが、跳ね返りを交代出場MF岩熊唯斗(2年)がスライディングシュートで決めて2-0とした。

 江藤監督が「両SBが生命線です」というように信頼厚い右SB石本渉(3年)と磯谷のカバーリングや森、MF辻澤賢(2年)の運動量にも支えられた九国大付は、その後も攻め続けてシュート数を増やす。だが3点目を奪えなかった九国大付に対して東海大福岡が意地の反撃。42分、左ロングスロー後の混戦から交代出場のFW川下輝(3年)が右足で決めて1点差とした。さらに前からの攻守で会場を沸かせていたが、スーパープリンスリーグ九州で技術力の高い鳥栖U-18や大分U-18相手に「負けない戦い」(江藤監督)も経験済みの九国大付はここで揺るがず。2-1で勝ち、準決勝進出を決めた。

 九国大付はCB吉田晃(現名古屋)らを擁した昨年、プリンスリーグ九州で3位に入るなど力のあった世代だった。だが、インターハイ予選決勝で東福岡高にPK戦で敗れ、選手権予選も筑陽学園高に延長戦で屈して全国には届かず。一方で今年の世代は1年時に“史上最弱”とも言われていた世代だ。だが、森が「去年の先輩から学ぶことは多かった」と説明するように、トレーニングで先輩たちスピード感や球際の強度を学んだチームは新人戦で宿敵・東福岡撃破を果たした。

 そして、迎えた選手権。森が「新人戦よりもより一層守備の部分は成長できていると思います。新人戦から本当に成長していると感じているし、今年は誰が出ても変わらないというのが結構デカイ」という九国大付は2冠、全国での活躍を本気で目指している。新人戦で注目された森や吉田に加え、磯崎や立石、堀金のようにグンと成長してきている選手もおり、楽しみなチーム。1年前の選手権予選はリードされての戦いが続いていたが、今年は毎試合先制できている点も大きい。

 森は「守備はこのまま強くして、攻撃では決定力を上げていって一発で仕留められるチームにならないと優勝できないと思うのであと1週間で修正していきたい」。課題を修正しなければ優勝することは難しいが、強敵相手に21本ものシュートを放ったように力があることも確か。昨年、さらに新人戦からも成長する九国大付がまずは準決勝で筑陽学園へのリベンジを果たし、決勝への切符を勝ち取る。 

(取材・文 吉田太郎)
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