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細部徹底し、選手たちも驚く快挙。武蔵越生が西武台をPK戦で下して初の決勝進出!:埼玉

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PK戦を制した武蔵越生高の選手たちが喜びを爆発

[11.6 選手権埼玉県予選準決勝 武蔵越生高 1-1(PK4-2)西武台高]

 第99回全国高校サッカー選手権埼玉県予選は6日、準決勝を行い、武蔵越生高が初の決勝進出を決めた。武蔵越生は前回大会準優勝の西武台高と対戦。1-1で突入したPK戦で1年生GK関根拓郎が1本ストップ。4-2で勝ち、昌平高との決勝(15日)へ進出した。

 先制ゴールを決めたFW渡辺光陽(3年)が「本当に驚きですね。優勝したいとは思っていましたけれども、ここまで来るとは……」と驚き、前回大会ベスト16を経験しているDF木村一世主将(3年)も「(去年は)16で(埼玉)栄さんに負けて全然レベル足りないと思って……それがキャプテンの代で行けるとは思っていませんでした」と明かす。

 武蔵越生は96年に埼玉2位でインターハイへ出場しているものの、それが唯一の全国出場。選手権予選はこれまでベスト4が最高成績で、今回が15年ぶりの準決勝進出だ。だが、粘り強い守備と「僕たちは週イチで陸上部と同じくらい走っています。(今大会走り負けたことは)無いです。走れることは武器だと思います」(木村主将)という武器を持つ私立高が、夏冬合計で14度全国大会に出場している“格上”西武台を破って歴史を塗り替えた。

 前半、「相手を引き出したかった」(守屋保監督)という西武台がボールを大事に繋いで支配。ゲームメーカーのMF村田智哉(3年)を中心にゆっくりとボールを繋ぎながら、MF南雲俊冶(3年)のドリブルなどを交えて攻撃する。そして相手の守備が出てきたところで背後を突こうとしていた。

 一方、武蔵越生は前からの守備に行き切れず、やや間延びした形となったが、木村、松永浩弥(3年)、石田哲也(3年)の3バックが高さや粘り強さを発揮しながら守り続ける。逆に回数こそ少なかったものの、FW米山大智(3年)を起点とした攻撃から仕掛けやクロスに持ち込んでいた。

 前半、武蔵越生はシュートゼロに終わったものの、0-0。後半開始から3試合連発中のMF五十嵐大翔(3年)、同12分には10番FW渡辺を投入する。五十嵐も、渡辺も十分に先発でプレーできる力の持ち主だが、全員で戦うチームの中で役割を理解して“切り札役”に。西澤浩一監督は「前半は大きいとかスピードある選手を入れて。後半にある程度元々(先発)の連中を入れて、チームが『スイッチオン』という形になっている」と説明する。0-0で粘り、後半勝負に出た武蔵越生に対し、西武台は右WB栗田海飛(3年)のクロスのこぼれを南雲が狙うなどより多くゴール前のシーンを作っていたが、先制点を奪うことができない。

 スコアは後半27分に動いた。西武台はバックパスから攻撃を組み立てなおそうとしたが、GKのキックがショート。武蔵越生は敵陣でインターセプトしたMF永倉歩夢(3年)が右前方の渡辺に繋ぐ。すると、シュート意識を持ってこの試合に臨んでいた渡辺が思い切りよく右足ミドル。これがGKの頭上を超えてゴールに突き刺さった。

 ファーストシュートで先制した武蔵越生に対し、西武台は攻撃の迫力が増して行く。そして35分、栗田の左CKをファーサイドへ回ったFW岡崎大志郎(3年)がダイビングヘッドで決めて1-1とする。西武台は一気に逆転を目指して連続攻撃。39分には左サイドからのパスを受けたFW松原海斗(2年)がDFを外して左足を振り抜く。だが武蔵越生GK関根が反応して勝ち越しを許さない。

 1-1で突入した延長戦、西武台は交代出場の右WB細田優陽(2年)から決定的なクロスが入り、岡崎が決定的なシュートを連発するが、武蔵越生GK関根がその度に立ちはだかる。また、木村が「(追いつかれて)ガクンと下がったんですけれども、そこで声を出さないのはキャプテンらしくないのでみんなのために声を出して走って頑張りました」と語ったように、DF陣をはじめとした各選手のゴール前での集中力は高く、運動量も落ちない。逆に左サイドから相手の守りを崩して五十嵐が決定機を迎えるシーンもあった。

 延長戦でスコアは動かず、熱戦の決着はPK戦に委ねられた。互いに全選手が決めて迎えた3人目、後攻・西武台のシュートを武蔵越生GK関根が左へ跳んでストップ。互いに4人目が外すと、武蔵越生は決めれば勝利の決まる5人目・右WB石井悠斗(3年)のシュートがゴールネットを揺らす。この瞬間、武蔵越生が決勝進出。喜びを大爆発させた。

 武蔵越生の西澤監督は、各選手が細部を徹底したことを勝因に挙げた。「勝負事というのはちょっとしたところだと思う。真面目に早く戻っているとか、GKが出たところで本当に一生懸命後ろに戻っているとか、あと前の選手がちょっとしたところでもプレッシャーをかけて蹴らせないようにする。そういったところの積み重ねが、(きょうも)1回あればラッキーだなというところが3回もあって」。選手たちが一つ一つのプレーに手を抜かず、実行していたことに感謝していた。

 初の選手権出場を懸けた決勝戦では王者・昌平と激突する。今年の新人戦準決勝で0-5の大敗を喫している相手だ。木村は「ベスト8に行けた時点で自分たちは結構(テンションが)アガっている、決勝もいつも以上に行けると思います。昌平さんはサポートの動きが速いので(新人戦では)全然マークがつけていなかった。レベルは遥か上なんですが、食らいついていきたいと思います」と誓う。J内定4選手を擁する昌平に食らいついて接戦に持ち込むこと。そして、決勝でも細部まで徹底して、あと一つの白星も勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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