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「ここで返せんで何が全国や」履正社が2度のビハインドを跳ね返して阪南大高に逆転勝ち:大阪

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後半32分、履正社高FW廣野大河が決勝ゴール

[11.7 選手権大阪府予選準決勝 阪南大高 2-3 履正社高 ヤンマー]

 履正社が2度のビハインドを跳ね返し、全国王手だ。7日、第99回全国高校サッカー選手権大阪府予選準決勝が行われ、阪南大高履正社高との一戦は履正社が3-2で逆転勝ち。履正社は14日の決勝で金光大阪高と戦う。

 先制したのは“全国ルーキー優勝世代”の阪南大高だった。前半9分、左MF小西宏登(3年)からのパスを受けたFW田中大智(3年)がコントロールから右足シュートを決める。入りが良かったにも関わらず失点してしまった履正社だが、すぐに取り返す。13分、右オープンスペースへ抜け出したFW神田拓海(3年)が思い切り良く右足シュート。相手の意表を突くような一撃で1-1とした。

 阪南大高はFW鈴木章斗(2年)が再三前線でボールを収め、それを起点に小西の縦への仕掛けや左足キックから再び勝ち越し点を目指す。MF河上愛斗(3年)らがセカンドボールを回収していたこともあり、攻撃回数を増やしていた。

 一方、履正社もFW李晃輝(3年)が前線で奮闘。中盤から下げて、ロングボールで攻め返すことができていた。だが、相手の厳しいプレッシャーを受ける中で攻撃は単発に。注目の湘南内定MF平岡大陽(3年)は守備面での貢献度こそ高かったものの、前に出る良さが出て来ない。コンビを組むMF赤井瞭太主将(3年)も守備に重きを置きながらの戦いとなっていた。

 後半、互いにカードを切り合う中、先にビッグチャンスを迎えたのは履正社の方。パススピードが上がり、攻撃にリズムが出てきていた履正社は24分、CB李泰河(3年)の縦パスを起点に神田、MF池田喜晴(3年)と繋ぐ。そして池田が左中間から出したスルーパスに交代出場FW廣野大河(2年)が決定的な形で抜け出したが、シュートを枠外へ外してしまう。

 その直後、阪南大高が勝ち越し点を奪う。交代出場MF田井光(3年)が右サイドを縦に突き、そのクロスを鈴木が1タッチで合わせて2-1。濱田豪監督は「(コロナ禍で全く遠征ができず)相手と完成度が違う中で小細工するしか無かったので」と振り返ったが、見事に相手を攻略しての2得点で勝ち越す。堅守・阪南大高の選手たちには、白星に大きく近づいた感覚があっただろう。

 だが、試合はこのままでは終わらなかった。履正社の赤井は「やられた時に返せるだろうという自信もあったので、チーム信じて、下向いている仲間もいたのでしっかりと伝えました」と振り返る。

 履正社が目指してきたのは全国決勝で青森山田高にリベンジすること。夏の和倉ユース大会(石川)予選リーグ、決勝で連敗した青森山田を倒すために努力、成長してきた。赤井は「(青森山田に連敗してから)周りの選手たちも目つきが変わりましたし、『その基準でやらないと日本一は絶対に無理やぞ』っていうのはお互い言い合っていたので。きょうもピッチで『山田はもっと強いぞ』、『ここで返せんで何が全国や』という選手もいたんで。そういう意味では良い刺激になったと思います」。その思い、身につけた力が逆転劇へと繋がった。

 後半30分、履正社は左SB向晃生(3年)の右CKをファーサイドのCB舩田陸人(3年)が渾身の同点ヘッド。昨年敗れている阪南大高へのリベンジに燃えていたCBは雄叫びを上げてゴールを喜んだ。

 履正社は一気に試合をひっくり返す。32分、池田が右サイド後方からPAへ浮き球パス。これを廣野が胸で収めたが、DFの寄せによって体勢を崩してしまう。それでも、両手と臀部もピッチについた状態から強引に右足を振り切る。これがゴールを破り、3-2。失点直前に決定機を外していた2年生FWのゴールによって、履正社がこの試合で初めてリードを奪った。

 阪南大高は前線にボールを集めるが、履正社DF陣は李泰河、舩田中心に前に強い。セカンドボールを幾度も拾う平岡と赤井の存在もあって、阪南大はなかなか連続攻撃をすることができなかった。それでもアディショナルタイムに左サイドから相手の守りをズラしてシュートチャンスを作り出し、最後はペナルティアーク右外から鈴木が右足シュート。強烈な一撃が枠を捉えたものの、履正社GK杉村斗磨(3年)がセーブする。阪南大高は諦めずに攻め続けたが、履正社の守りは揺るがず、試合終了。履正社が決勝進出を決めた。

 履正社の平野直樹監督は、相手の懐に入ってパンチを繰り出すのではなく、間合いを取っての戦いが多くなったことを指摘。だが、苦しい戦いの中で選手たちが慌てず、ベストのプレーを選択して勝ち切ったことを喜ぶ。そして、「メンタリティも引っくるめて勝負だから。高い集中力でゲームをする。考えてできているようになってきている。ここでコケているようじゃ、山田にリベンジできない。もうひとつ浮足立たないように。(サッカーができる楽しさを感じながら、)決勝も楽しんで行こうぜと言いたい」と語った。

 激闘を制したが、まだ全国出場を決めた訳ではない。赤井は「ずっと日本一というのは言い続けてきて、まず全国にチャレンジするまであと一個の状況なんですけれども、過信とか浮つくことなく次しっかりと勝つために声をかけていきたい」と引き締め、平岡は「(失点して)シュンとなるところはあるんですけれども、チーム全体が『何とか』(やってやろう)、というところがこれまでと違うかなと。しばらく履正社は全国行っていないのでそこは自分たちで変えたいと思います」と誓った。夏の敗戦を機に、逆境で勝ち切る強さも出てきている履正社。青森山田にリベンジするためにも6年間遠ざかっている選手権の舞台に今冬、必ず立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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