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[MOM3377]帝京長岡MF川上航立(3年)_異彩放った「14」。1年前の敗戦、双子の姉の存在が刺激に

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帝京長岡高MF川上航立主将は攻守に渡る活躍。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 選手権3回戦 神戸弘陵高 1-3 帝京長岡高 フクアリ]

 相手ボールを高い位置で奪い取ってスタンドのチームメートを沸かせ、質の高いキックでまたスタンドを沸かせる。そして、チャンスメーク、ゴール……。2年連続3回戦で激突した神戸弘陵高対帝京長岡高戦の主役は、帝京長岡のエースナンバー「14」を背負うMF川上航立主将(3年)だった。

 川上は今年の帝京長岡の“心臓”だ。細かなポジショニングと豊富な運動量、視野の広さでチームのバランスを整え、誰より多くボールに絡んで攻撃のリズムを生み出す。その上で今年の帝京長岡の“色”である切り替えの速さと球際での強度を誰よりも体現。そして、バランサーとしてのリミッターを外して前に出た時により怖さを発揮する。

 この日は決勝点の起点になった。1-1の後半14分、右中間でのワンツーでDFを剥がした川上は、「自分が触ったところのスペースが空いて一個入ってみた」とスピードに乗ったままバイタルエリアを前進。一気にDF2人の間を切り裂いた川上はCBへ向けてドリブルし、わずかに相手を外側へズラしてPAのFW葛岡孝大(3年)へボールを当てる。リターンを受けようとした自分の意図とは違ったかもしれないが、その後ボールはMF廣井蘭人(1年)、MF上野一心(3年)とつながり勝ち越し点となった。
 
 加えてその2分後に川上は、葛岡の右CKから頭で貴重な追加点。1年前に続く神戸弘陵戦でのゴールを「ちょっと持っているなと思っています」と自己評価し、リモート取材の記者陣を笑わせた。試合内容については満足していなかったものの、攻守に渡って異彩を放った川上は勝利に大きく貢献。「14」としての仕事を果たしてチームをベスト8へ導いた。

 古沢徹監督はその川上について、「1、2年生が後ろを占めている状況でバランス良く出ていくところと出ていかないとところ、人を動かすところと自分が背中で引っ張るところは彼にしかできないような良さ」と説明する。その良さを良い形でチームにもたらしているリーダーが「自分としても、チームとしてもターニングポイントになった。あの悔しさがあったからこそ今、力になっていると思います」というのが前回大会準決勝、青森山田高戦の敗戦(1-2)だ。敗戦の悔しさをエネルギーとし、相手から学んだ切り替えの速さや強度を自分の進化にもつなげている。

 また、川上が刺激を受けているのが、双子の姉、MF川上然(INAC神戸レオンチーナ)の存在だ。姉は昨年12月24日にINAC神戸レオンチーナからトップチームへの昇格内定。川上は「自分も目標としているのは一流のプロサッカー選手なので、(姉が)先にプロになったので、自分も追いつかないとな、という気持ちになりました。(姉は)タイプが違って、スピードでもうゴリゴリ行くタイプ。(でも)メンタル的に凄い強い選手で私が、私がという部分は自分にはない部分なので、参考にしている部分もあります」と語る。この日は「頑張って」という姉からのエールに自身の活躍と勝利で応えた。

 川上は関東1部の強豪大学へ進学予定。その前に選手権をより名を上げ、姉に追いつくきっかけの大会とするか。現在の目標は、何よりも選手権で日本一を獲得すること。そのために走って、戦って、魅せて、帝京長岡を頂点へ導く。

(取材・文 吉田太郎)
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