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[MOM3387]山梨学院GK熊倉匠(3年)_「安斎のPKを止められた」盟友を止めて3年前の“雪辱”、日本一のGKに輝く

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涙するMF安斎颯馬(3年)に寄り添うGK熊倉匠主将(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.11 選手権決勝 山梨学院高 2-2(PK4-2)青森山田高 埼玉]

「安斎のPKを止められたので良かった。アイツとは3年前に一緒のチームで、思いがあったんですが、アイツだけには負けたくない、決めさせたくないと思っていた」。GK熊倉匠主将(3年)が今大会3度目のPK戦でもヒーローの座を射止め、山梨学院高を11年ぶりの頂点へと導いた。

 あと一歩届かなかった“日本一”への雪辱の舞台だった。FC東京U-15深川に在籍した3年前、全日本ユース(U-15)選手権決勝で自身のミスから追いつかれ、PK戦の末に敗戦。チームメイトのFW笹沼航紀(3年)とFW茂木秀人イファイン(2年)はFC東京U-15深川から同じ進路を歩んだが、対戦相手のMF安斎颯馬(3年)も中学時代の同僚だった。

 旧友との対決が注目された決勝戦はドラマティックな死闘となった。前半12分にMF広澤灯喜(3年)のゴールで山梨学院が先制に成功したが、1-1に追いつかれると、一時は安斎に逆転ゴールを許す展開。シュート数は7対24。押し込まれ、何度も決定機を作られたが、GK熊倉は序盤に足で止めたビッグセーブからハイボールの処理、キャッチング、得意のシュートストップで次々と窮地を救う。2-2のまま延長戦でも決着が付かず、優勝決定はPK戦に委ねられた。

「今大会はPKが3回あって、自分でも自信がありました。PKになったら絶対に止めると思っていた中でPKになったので、自分の日だなと。泣いても笑っても最後だから楽しんで蹴ってこい、俺がいるから、と(チームメイトに)声をかけました。今日は全員で勝ち取った勝利です」

 両チーム1人目が成功すると、静寂に包まれた無観客の埼玉スタジアムで2人目の安斎と対峙。「最後の最後まで我慢して、こっちかなと思った」。コースを読み切ったGK熊倉は完璧なタイミングで横っ飛びすると、見事にPKストップ。さらにキッカー4人目のミスを誘い、優勝候補本命・青森山田高(青森)をPK4-2で打ち破っての戴冠を成し遂げた。

 試合後、大粒の涙をこぼす安斎に寄り添った熊倉。「試合中も『ナイスキーパー』と声をかけてくれて、3年前の思い出がよみがえった」。FC東京U-15深川時代の仲間と選手権決勝のピッチで再会。「あの負けの瞬間はみんなに顔を合わせられなかった。決勝で同じチームだった仲間と戦えるのは凄いこと。感謝したい」。逞しく成長を遂げ、両チームの中心選手として大会を盛り上げた2人。5得点を挙げた安斎は得点王に輝き、熊倉は日本一のGKになった。

殊勲のPKストップで優勝に導いたGK熊倉匠主将(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)


2017年12月28日の高円宮杯全日本U-15選手権大会決勝、GK熊倉匠を励ますMF安斎颯馬(ともに当時FC東京U-15深川)


(取材・文 佐藤亜希子)
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