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絶品の股抜きスルーパス、PK1人目成功、再会…「楽しかった」山梨学院FW笹沼航紀の選手権決勝

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山梨学院FW笹沼航紀(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.11 選手権決勝 山梨学院高 2-2(PK4-2)青森山田高 埼玉]

「勝利の瞬間が今も忘れられなくて、夢のような感じで体が覚えています」。山梨学院高FW笹沼航紀(3年)は優勝の喜びをそう口にした。粘り強く戦い抜いた110分の激闘、PK戦。夢のような瞬間を手繰り寄せると、無観客の埼玉スタジアムには選手たちの雄叫びがあがり、歓喜の輪が広がった。

「このチームで決勝戦までいくことが出来て、すごく楽しかった。どういうプレーをしようか、ワクワクしながらピッチに立っていました」。緊張や気負いはなく、誰よりも決勝のピッチを楽しんだ。1-2と青森山田に逆転されたあと、後半25分から途中出場。すると、その8分後に見せ場が訪れた。

 リスタートからボールを受けた笹沼は対峙した相手DFの股を抜く左足スルーパスを狭いエリアに通し、起死回生の同点弾を演出。「笹沼のパスはヤバい」「笹沼が持ったら絶対にパスが出てくる」とチームメイトも絶大な信頼を置く一撃必殺のスルーパスで青森山田の守備網を破った。

「山田戦で意識したのはいつもより速い判断、周りを見ること。一人ひとりがプレスにきて、一番気持ちもすごかったし、さすが日本のトップだなと感じました」。110分でも決着がつかず、2試合連続3度目のPK戦へ。準決勝・帝京長岡戦に続いて、山梨学院のキッカー1人目。命運を左右する大役だが、ペナルティスポットに向かう笹沼は笑顔を見せていた。

「自分が外してもクマ(GK熊倉匠主将)が止めてくれる。並んでいる選手たちが『自信を持って蹴ってこい』と送り出してくれて、『笑顔で楽しもう』と言っていたので、全く緊張はなかった。あの瞬間は自分とGKしかいない空間になるので、楽しかったです」。左足キックでGKの逆を突き、大きくガッツポーズ。優勝への流れを生み出した。



 試合後は中学時代、FC東京U-15深川のチームメイトだったFW安斎颯馬(3年)に寄り添った。熊倉とともに同期のもとへ向かい、PK失敗で大粒の涙をこぼす安斎を抱擁。「3人で一緒にあの舞台に立つことができて、すごく嬉しかった。試合中もパスを出すと安斎が『いいね、うまいね』って言ってきて(笑) お互いに楽しんでいました」。

 チーム随一のテクニックとゲームメイク力を持ちながら、今大会はスーパーサブ起用。だが、チームメイトと共にベンチで声を出し、笑顔でチームを盛り上げた。「Jの下部組織出身で、入学したときはプライドが高かったんですが、みんなと一緒にいることで、どうやったら自分がチームに貢献できるかを考えるようになりました」。最高の仲間たちと頂点に上り詰めた。

 卒業後は近年、コンスタントにJリーガーを輩出している桐蔭横浜大に進学し、プロ入りを目指す。「プロになってFC東京を倒したいのが半分、FC東京のユニフォームを着て戦いたいのが半分です」。ピッチ内外で山梨学院の日本一に貢献した技巧派レフティは、次のステージでも進化を続けていく。



(取材・文 佐藤亜希子)

(※山梨学院高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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