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[MOM3600]早稲田実DF宮寺政茂(3年)_存在感抜群のキャプテンが延長後半10分に魂の劇的決勝弾!

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早稲田実高の絶対的キャプテン、DF宮寺政茂

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.16 選手権東京都予選Bブロック2回戦 大東文化大一高 1-2(延長) 早稲田実高]

 時間がほとんどないことは分かっていた。負けられない。この場に来ることの叶わない仲間のためにも、負けられない。

 宙を舞う。頭に確かな感覚を残して、ボールはゴールネットを捉える。走り出す。仲間の元へ、走り出す。「試合が終わりかけている時間帯という自覚はあったので、そこのところで試合を決定付けられる1点を獲れたというのが凄く嬉しかったですね。アドレナリンが出ちゃった感じです」。早稲田実高を支え続けてきたキャプテン。DF宮寺政茂(3年=三菱養和SC巣鴨ジュニアユース出身)の姿は、あっという間に歓喜に沸く仲間の輪の中へ消えていった。

 難しい展開の試合だった。大東文化大一高と対峙した選手権予選の初戦。いつも以上に攻める時間を作り出しながらも、なかなかゴールをこじ開けられない。「守り倒すゲームならば守れると思うんですけど、攻めていて引っ繰り返されての守りには慣れていなくて、その中でも刺さなきゃいけない攻撃力の試合かなと思っていました」とは森泉武信監督。だが、粘る相手を刺し切れず、ゲームは延長戦へともつれ込む。

 延長前半8分。相手に与えた最初の決定機を生かされ、先に失点を喫してしまう。「失点した時にウチのチームは下を向いてしまう雰囲気があるので、全員に『下を向くな』と声を掛けて、とにかくみんなに前向きなプレーをさせようと心掛けました。でも、まだ延長前半だったので気持ちは切り替えられたんですけど、延長は時間が短い中で、自分たちは逆転できる力をリーグ戦でもあまり示せている部分はなかったですし、引っ繰り返せるかどうか不安な想いは正直ありました」。宮寺は相反する想いを抱えながら、最後方からチームメイトを鼓舞し続ける。

 想いは通じる。延長後半7分。途中出場の同級生、MF中田圭一郎(3年)が同点弾をマークする。「ひとまずはホッとしましたね。とりあえず追い付いたことで、逆転できるムードも出てくると思うので、そのムードを作れたのは良かったかなと思います」。そして、その瞬間はやってくる。

 10分。左サイドで獲得したCK。「いつもはコーナーの入り方で自分がニアに行くところを、結構本数があったのでちょっと変えてみて、後ろから入る形にしたんです」。キッカーのDF金指功汰(2年)が蹴った軌道に、少し変化を付けて飛び込んだ宮寺の頭へドンピシャのボールが届く。

「試合が終わりかけている時間帯という自覚はあったので、そこのところで試合を決定付けられる1点を獲れたというのが凄く嬉しかったですね。アドレナリンが出ちゃった感じです」。ゴールネットへ到達した球体を見届けると、アップエリアで待つチームメイトの元へ全速力で走り出す。

「失点してからもベンチから『前を向いてやるしかないよ。もっと声を出せ』とみんなが声を掛けてくれて、そのおかげで自分も気持ちを盛り返せた部分はあったので、ベンチのみんなに感謝したいです」。早稲田実の大逆転劇、完結。その中心に頼れるキャプテンの存在があったことは、言うまでもないだろう。

 中田、宮寺と3年生のゴールが勝利に直結した結果について、「リーグ戦を見ても1,2年生が点を獲っている試合が多い中で、今日は3年生のケイイチ(中田)と自分で点が獲れたというのは、3年生の力を少しは示せたのかなと思っています」と話しながら、やはりキャプテンとして今年のチームを取り巻く環境と、その想いを続けて口にする。

「正直ここに来れていないBチームともなかなか接点がない状況が続いて、今までだったら試合を見て何か感じ取れるものを、次の代に繋げてくれる場面が少ないというのをしっかり認識して、彼らがいない中でもビデオ越しからでも伝わるような熱量を伝えたいという想いを持ってやっていました。Bチームのみんなもそうですし、本当に多くの方々の支えがあっての試合だと思うので、そういう部分の感謝を持ってやっていければいいなと思います」。

 次はチームとしても3年ぶりとなるクォーターファイナル。宮寺たちは初めて挑むステージだが、この一戦を潜り抜けたことで勢いを持って臨めることは間違いない。「まずは次の試合を1個1個勝ち進んでいくことに集中して、この1週間も次の試合に向けて、良い準備ができたらなと思っています」。

 この日も攻守で絶大な存在感を放ったキャプテンは、早稲田実にとって10年ぶりとなるファイナルのその先へ、虎視眈々と視線を向けている。

(取材・文 土屋雅史)
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