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『強い修徳』復権の狼煙。修徳は9発大勝にも驕ることなく、目の前の試合を丁寧に戦い続ける

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先制点を挙げた修徳高は歓喜の輪を作る

[10.17 選手権東京都予選Aブロック2回戦 修徳高 9-0 正則学園高]

 準備してきたことを、過不足なく発揮する。雨が降りしきるコンディションの中でも、この大切さを理解している選手たちの逞しさが、80分間で際立った。「少しやんちゃだった子たちが謙虚な行動をし始めたり、声掛けをし始めたりとか、やっぱりそういう部分は選手権に向けて気持ちが入っているなと感じましたね」(吉田拓也監督)。

 驕ることなく、目の前の1試合を見つめた大勝劇。17日、第100回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック2回戦、修徳高正則学園高が激突した一戦は、FW吉田康誠(2年)のハットトリックを含む9得点を叩き出した修徳が、9-0で勝利。準々決勝へと駒を進めている。

 口火を切ったのは1年生の10番だった。前半7分。修徳は右サイドからDF木村アリヤァン(3年)がクロスを上げ切ると、「右からクロスが上がってきて、自分がヘディングをして、味方に当たって、ちょうど良い所に落ちました」と振り返るFW田島慎之佑(1年)がリバウンドを自ら右足でシュート。ボールはGKも弾き切れずに、ゴールへ転がり込む。いきなりの先制点。修徳が早くもリードを手にする。

 以降も攻勢は修徳。「まずピッチコンディションがかなり止まる状況だったので、選択としてはサイドと前、あとはマッチアップでウチの左が優位に立てそうだったので、『左を狙え』というオーガナイズでした」とは吉田監督。この狙いが奏功する。

 29分。左サイドでボールを受けた田島は、縦には運ばずアーリー気味のクロスを中央へ。飛び込んだ吉田がGKともつれながら頭に当てたシュートは、ゆっくりとゴールラインを越える。さらに38分。ここは左サイド深くまでドリブルで持ち込んだ田島が、腰をひねりながら好クロス。FW大畑道喜(3年)のヘディングがゴールネットを揺らす。

「最初のアシストは狙い通りじゃなかったです。たまたま良い所に行ったので良かったです(笑)。でも、2つ目はちゃんと狙いました」と笑ったのは2アシストの田島。チームで立てたプラン通り、左からのアタックで2点を追加した修徳が、3-0でハーフタイムへ折り返す。

 後半のファーストシュートは正則学園。4分。右サイドを抜け出したFW小野隼斗(3年)のシュートはゴール右へ逸れたものの、インサイドハーフのMF山村輔詩(3年)とMF島村悠生(3年)を配球役に、右からFW加藤大翔(3年)、小野、FW小山誠士郎(3年)を並べた3トップで、反撃への意欲を鮮明に打ち出す。

 だが、修徳の勢いは止まらない。「後半は3点のリードがあったので、相手にしっかり対応しながら、繋げるところは繋いでいいし、どちらのサイドから攻めてもいいし、好きにやれと言ったことで、力が抜けたと思います」と吉田監督。ゴールショーの幕が上がる。

 8分。ボランチのMF福田大翔(3年)を起点に、MF森田響(3年)のグラウンダークロスを、吉田がゴールに流し込んで4点目。14分にもエリア内で混戦からのシュートを正則学園GK進士晴生(3年)がファインセーブで凌いだものの、こぼれをプッシュした吉田はハットトリック達成となる5点目。19分には途中出場のMF西山遼海(2年)もゴール前のルーズボールを押し込んで6点目。思わぬ大差が付いていく。

 30分。西山の左クロスから、ニアに走り込んだ福田がファインゴールを叩き出して7点目。34分。こちらも途中出場のFW小俣匠摩(1年)は左サイドで前を向くと、躊躇なくミドルレンジから打ち込んだシュートは、ゴール右スミへ突き刺さるゴラッソとなって8点目。37分。左からDF富樫匠(1年)の折り返しに、小俣がきっちり合わせて9点目を沈める。

 終わってみれば、スコアは9-0。「得点は左サイドからが多かったので、想定通りというか、良いプレーを出してくれましたし、守備も木野(将太郎)を中心に良かったと思います」と吉田監督も納得の表情を浮かべた修徳が、勢いに乗る形で準々決勝への挑戦権を獲得した。

 T2(東京都2部)リーグでも首位を快走するなど、確かな実力を有する今年の修徳だが、彼らには忘れられない試合があるという。4月に開催された関東大会予選。初戦で昨年度の選手権ファイナリストでもある日大豊山高をPK戦で下し、難敵の狛江高を倒した先の準々決勝で待っていたのは國學院久我山高。都内屈指のタレント集団を向こうに回し、善戦こそしたものの、結果的には1-2で敗れてしまう。

「やっぱり久我山にやり返したいという想いはみんな強いと思います」と話したのは吉田監督。届きそうで届かなかったあと1点の差を埋めるために、あれからの半年余りで努力を重ねてきた。そして、次の準々決勝で対峙するのは、その國學院久我山。ステージは完璧に用意されたと言っていいだろう。

「引いて守る戦いはしないです。こちらから奪いに行こうと。久我山のパワフルな部分が引き出せればいいですね。それはもちろん相手も分かっていると思うので、やり合いになると思うんですけど、ハイレベルな戦いになればなと考えています」と吉田監督が語れば、「春の時は初めて試合をしたので『強いな』という気持ちはありました。でも、自分たちも頑張ればやれるなというのはあったので、あっちも成長してきていると思いますけど、頑張りたいです。自分がゴールを決めて、勝ちたいですね」と田島も力強い言葉を口にする。

 キャプテンのDF木野将太郎(3年)が話していた言葉を思い出す。「今は古豪って呼ばれていますけど、強い修徳を取り戻したいというか、強い修徳が帰ってきたなというような想いをいろいろな人に感じてもらいたいです」。

 『強い修徳』復権へ。最高の勢いを携えて、対戦を待ち望んできた相手に立ち向かう修徳の準々決勝には、注目せざるを得ない。

(取材・文 土屋雅史)
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