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[MOM3604]大森学園DF若原竜貴(3年)_無失点の感覚を取り戻したDFライン唯一の3年生が、新たな歴史の扉をこじ開ける

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大森学園高のディフェンスリーダー、DF若原竜貴

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.17 選手権東京都予選Bブロック2回戦 日大二高 0-1 大森学園高]

 不思議といつも必ず1点は獲られてしまう。拮抗した試合でも、大きくリードを奪った試合でも、なかなか無失点で終わることができなかった。だが、この大事な一戦で達成した完封勝利に、大きな手応えを隠せない。

「やっと役目を果たせたかなって。でも、次があるので、この無失点という試合を継続できるように、これからも精進してまいりたいと思います」。丁寧過ぎて、横綱昇進の口上のようになってしまった言い回しが微笑ましい。大森学園高のディフェンスリーダー、DF若原竜貴(3年=S.victoire.S.C.出身)の醸し出す安定感が、チームを東京8強へと導いた。

 失点の続くチームは、守備に若干の不安を抱えていた。「Tリーグ(東京都リーグ)でも自分たちの集中が切れてしまう時間でやっぱり失点していて、選手権でも1回戦は5-0で前半を折り返したんですけど、後半の集中が切れたところでまた失点してしまったので、今日は1試合を通してしっかり締めていこうということで、試合前からずっと話していました」。若原は強い決意を胸に、日大二高と対峙するピッチへ向かう。

「相手は9番、10番と大きな選手が2枚並んでいたんですけど、自分たちがいつもやっていることを信じれば、絶対に競り合いも勝てると思っていましたし、実際そんなに負けてはいなかったので、自信を持ってやろうという形でできました」。日大二のパワフルな2トップにも、センターバックの相方を務めるDF大澤郁輝(2年)とのコンビで的確に対応。決定機は作らせない。

 前半30分にPKで先制点を奪うと、以降は冷静なゲーム運びで時計の針を進めていく。「とりあえず1-0で勝っていて、失点しなければ勝てるという状況だったので、とにかく自分は点を取られないことだけを考えて、2点目は信頼している前の選手に任せようと思っていました」。なかなか2点目こそ奪えなかったものの、ディフェンス時の高い集中力は持続。ゴールに鍵を掛け続ける。

 ファイナルスコアは1-0。「力が拮抗している時間帯に先制点が獲れて、その後の試合展開は楽にはなったんですけど、相手も集中を切らさずに、最後まで前にプレッシャーに来ていたので、勝てて嬉しかったです」。公式戦ではインターハイ支部予選以来となる、実に久々の完封勝利。小川伸太郎監督も「今日の勝因は本当にディフェンス陣が頑張って、ゼロに抑えたというところですね。今シーズンでは稀に見る失点ゼロで終われました(笑)」と言及したように、若原を中心とした守備陣の奮闘がウノゼロ勝利を手繰り寄せた。

 4バックを敷くディフェンスラインで、3年生は若原1人だけ。ゆえに心掛けていることがあるという。「やっぱり仲間を鼓舞することです。1年生は自分たちとはまた違うものを背負っていますし、もちろん初めての選手権ということで緊張している部分も絶対にあると思うので、自分も初めての選手権なんですけど、上級生としてのプライドというのはあります」。

 自ら明かしたように、今大会は若原にとっても初めてピッチに立つ選手権。「去年は本当に苦しい時期が続いて、最後にはメンバー落ちもしてしまったんですけど、ここまで努力してきて良かったなって思います」と振り返った1年前を考えれば、この充実した時間を簡単には終わらせたくない。

「これまで大森学園の歴史として、ベスト4進出というのが叶わなくて、“ベスト8止まり”というのが自分たちのレッテルとしてあった中で、『本当に歴史を覆そう』と言ってみんな選手権に挑んでいるので、1年生,2年生、3年生も関係なく、勝利に貪欲にプレーしています」。さらに続けた言葉に、本気で歴史を覆そうという決意が滲み出る。

「念願のベスト4、西が丘に立つという目標を掲げてチームとしてもこれまでやってきたので、無失点を継続できるように、またこの1週間しっかりトレーニングをして臨みたいです。やるからには勝つしかないので、勝ちに貪欲に、最後まで諦めずに、ゴールを目指して頑張りたいと思います」。

 夢にまで見た西が丘のピッチまでは、あと1勝。ようやく無失点の感覚を取り戻した守備を束ねる若原の躍動が、大森学園の新たな歴史へと続く扉をこじ開けるには必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)
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