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入学直後の大一番でPK戦キッカーに立候補。武南の1年生MF松原史季は「見返したい」の思いを進化の糧に

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武南高の注目ルーキー、MF松原史季

 15年ぶりの選手権出場を狙う武南高(埼玉)に図太く、プレーヤーとしても面白い1年生がいる。MF松原史季は浦和レッズジュニアユースの右SBのレギュラーとして昨年の全日本ユース(U-15)選手権3位。だが、ユースチームに昇格することができず、「悔しくて、やっぱり1年から3年の試合に出て見返したいという気持ちがあった」。そのMFは、進学した武南の攻撃陣の中で存在感を増して来ている。

 トレーニングでは縦への鋭い仕掛けを見せる一方、アイディアあるパスで急所を突いたり、DFを引きつけてスルーして味方のチャンスに繋げたりするなど賢いプレーをしていた。身長は160cmほどと小柄だが、「それを不利と捉えないで、小さい選手が苦手なCBもいますし、潜り込めることは今後自分の武器にしていきたい」。

 まだまだミスでのロストやシュート精度を欠く部分も。だが、サッカーを楽しむこと、相手を欺くようなプレーをすることを心掛けてきたというMFは、高校サッカーのスピード感や中学時代と異なるポジションにも慣れ、徐々に自分のやりたいことを表現できて来ている。強烈なシュートも備える1年生が選手権予選でチームを勝利へ導くような活躍をしても、不思議ではない。

 彼が抱く高校サッカーでの特別な決意。それは入学直後から見られた。関東大会出場権を懸けた埼玉県予選準決勝(4月)で、武南は後半終了の失点で追いつかれ、勝負の行方はPK戦へ。この試合、途中出場していた松原はキッカーに立候補した。

「あそこで『蹴りたい人いるか』みたいなことを(ゲームキャプテンの)中村優斗君が言って、まだ途中出場で怪我もしていたので、『一個見せ場作っとかないと』と思って、自分が立候補して行きました。遠慮していたら(昇格できなかった浦和を)見返せないので、そういうところは積極的に行こうと思っていた」。松原は2人目のキッカーとして登場して成功。チームも勝利し、関東大会出場を決めた。

 本人は中学時代、チームで決定的な仕事や結果を出すことができず、評価を上げられなかったと感じている。現在も「まだまだ足りない部分がある」と自己分析。それでも、伝統校のAチームの公式戦で揉まれながら成長するMFは、メンタル面の強さも含めて楽しみな存在だ。

「メッシやアザールのように、パスもドリブルもシュートも何でもできて、自分中心で組み立てるゲームを昔からしたいと思っていました。個人でも行けるし、他人使っても行ける選手になっていきたいです」。向上心強い1年生。選手権は3年生への恩返しの思いも込めて戦い、必ず予選を突破し、全国で活躍して関係者たちにアピールする。

(取材・文 吉田太郎)
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