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12年ぶりの全国へ。「目白研心さんに感謝」の1週間を経た帝京は、4ゴールを奪って駒場に快勝!

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12年ぶりの全国を目指す帝京高は4ゴールを奪って快勝!

[10.24 選手権東京都予選Bブロック準々決勝 駒場高 0-4 帝京高]

「高校サッカーの一発勝負の怖さを初戦で教えてもらって、目白研心さんには本当に感謝しないといけないと。今日の試合はそれがあっての入りだったので、本当に良い準備をして、良い形でゲームに入れました」(帝京高・日比威監督)。

 苦しんだ初戦から学んだ謙虚な姿勢が、4発快勝劇に。24日、第100回全国高校サッカー選手権東京都予選Bブロック準々決勝、関東大会予選で東京4強を経験している駒場高と、12年ぶりの全国を狙う帝京高の対峙は、前半にFW齊藤慈斗(2年)、MF松本琉雅(2年)、FW伊藤聡太(2年)と2年生アタッカーで3ゴールを挙げた帝京が、後半にも松本の追加点で4-0と勝利。ベスト4へと駒を進めている。

「自分たちに挑戦者みたいな気持ちがなくて、受け身になってしまって、良い試合はできなかったと思います。本当に焦りました」と松本も振り返った帝京の初戦は、目白研心高相手に大苦戦。先制を許しながら、1-1で突入した延長後半に決勝PKを沈め、何とか勝ち上がってきた。

 だからこそ、この日は立ち上がりが大事だという共通認識の元、帝京はいきなりフルスロットル。前半2分に伊藤が蹴った左CKから、突っ込んだDF島貫琢土(2年)のヘディングは左ポストを直撃したものの、7分には伊藤が、11分にはMF山下凜(2年)が、同じく11分にはMF狩野隆有(3年)が次々にフィニッシュ。駒場のGK熊谷航矢(2年)が好守を見せるも、カナリア軍団が攻め込み続ける。

 一方の駒場もFW菅野峻平(3年)とFW藤木速人(3年)で組んだ2トップにボールを預けつつ、左のMF後藤英太(3年)、右のMF池田幸生(3年)の両サイドハーフのクロスに活路を求めると、27分には決定機。後藤のフィードを藤木が粘って残し、菅野はマーカーを外してシュート。だが、ここは年代別代表経験者の帝京DF入江羚介(2年)が身体でブロック。先制点は奪えない。

 31分。13番が吠える。入江の正確なフィードを齊藤が丁寧に左へ落とすと、山下は縦に運んでクロス。GKが必死にパンチングで弾いたボールに、齊藤が反応する。「パンチングした時にキーパーがもう出ていて、あとは自分のところにボールが来たので、ちょっと浮いていたんですけど、自分でもよく決めたなと思います」。ストライカーの先制弾。帝京が1点をリードした。

 34分。7番が魅せる。伊藤が右サイドへ付けたボールから、松本が躊躇なくドリブル開始。「前を向いたらドリブルのコースが見えたので、そのまま運んで、最初はスルーパスを出そうと思ったんですけど、相手が食い付いてきたので切り返して、そのままシュートを決められました」。ドリブラーの面目躍如。点差が2点に開く。

 38分。10番が輝く。ここも入江の素晴らしいクサビから、齊藤は的確なポストワークで左へ。スピードを上げた山下が左サイドをぶっちぎってマイナスに折り返すと、伊藤の左足シュートは右スミのゴールネットへ吸い込まれる。「早い時間帯にゴールが決まったので、あとは自分たちのペースでやっていくだけでした」と齊藤。3-0。帝京の勢いが駒場を飲み込んだ。

 3点を追い掛ける駒場も、後半は攻撃的なカードを切りながら、ボランチのMF牧元英多(3年)の配球からチャンスを創出。交代出場のMF小林建広(3年)もボールに良く関わり、好機の芽は生み出すものの、戦線復帰したDF荻野海生(3年)を中心にした帝京ディフェンスを最後の局面までは切り崩せない。

 後半17分に帝京が手にしたゴールは、練習通りの形。左サイドで前を向いた伊藤は丁寧なスルーパス。走った入江が正確で速いクロスをニアへ届けると、松本はワンタッチでゴールへ流し込む。「クロスをニアに走り込んで決めるというのは練習から凄くやっているので、練習の成果がそのまま出たかなと思います」(松本)。

 ファイナルスコアは4-0。「ゼロで終わったというのは自信にも繋がりますし、良かった点かなとは思いますね」と指揮官も守備陣の奮闘に言及した帝京が、2年ぶりのベスト4へと駒を進める結果となった。

 帝京にとっては、1週間で修正してきた反省を十分に生かせた80分間になった。「ここ数年の間に、周りの高校よりも上のカテゴリーでやっているということからか、帝京高校のことを多少なりともリスペクトしてくれているというのがあると思う中で、目白研心さんが相当帝京をリスペクトしてくれたことで、先週のああいうゲームになったと思うんですよね。目白研心さんの力が本当に120パーセント以上出ていたはずですし、どっちが勝ってもおかしくない試合だったと思います」と日比監督。この一戦は図らずも生まれかけていた慢心の芽に、チーム全体が気付かされるきっかけになった。

 水曜日には松澤朋幸コーチが、目白研心戦の映像を使って選手たちに要点をフィードバック。「ピッチにいる選手たちだけではなくて、ピッチ外にいるスタッフも全員が同じ方向でしっかりと反省できて、良いところはいい、悪いところは悪いと素直に受け入れられました。松澤がしっかりと修正してくれたことは良かったと思いますよね」(日比監督)。齊藤も「この1週間で攻撃陣は最後の崩しの部分やフィニッシュのところも詰めてこられたので、今日はそういうのが出たのかなと思います」とその効果を口にしている。

 この日はベンチワークも、選手たちのメンタルを解きほぐすようなアプローチを採っていた。「『前半は0-0でいいんだよ。それでも何も気にしなくていいし、それで点数を獲ってきたら素晴らしいよ』と。『延長も含めて100分間あるし、それならプリンスリーグより長いでしょ』と話しました」(日比監督)。実際には前半だけで3ゴール。この結果にもはっきりと改善の跡が確認できる。

 インターハイでは11年ぶりの全国切符を掴んだものの、もちろん最大の目標は選手権。稲垣祥(名古屋グランパス)や高木利弥(愛媛FC)を擁した2009年度以来の東京制覇が待ち望まれていることは、誰よりも彼らが良く分かっている。それでも、まずは一戦必勝。「自分たちは王者ではなくて、挑戦する側という認識を持って、献身的にやっていきたいと思います」(松本)。

 取り戻した謙虚さと、献身と。カナリア軍団にとって12年ぶりとなる冬の全国まで、あと2勝。

(取材・文 土屋雅史)
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