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[MOM3612]帝京MF松本琉雅(2年)_日本一を知る指揮官の7番を継承したドリブラーが華麗に2ゴール!

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帝京高のサイドアタッカー、MF松本琉雅のドリブルが冴える

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 選手権東京都予選Bブロック準々決勝 駒場高 0-4 帝京高]

 その瞬間。一気にゴールまで至る道筋が、目の前に開ける。運んで、運んで、右足で振り抜いた軌道を見届けると、すぐに仲間の祝福に飲み込まれる。「前を向いたらドリブルのコースが見えたので、そのまま運んで、最初はスルーパスを出そうと思ったんですけど、相手が食い付いてきたので切り返して、そのままシュートを決められました」。

 圧巻の一撃。帝京高の7番を背負ったサイドアタッカー。MF松本琉雅(2年=鹿島アントラーズノルテジュニアユース)のゴラッソが、チームに大きな勢いを付けた。

 1週間前。選手権の初戦となった目白研心戦は大苦戦。何とか延長後半の決勝ゴールで勝利を収めたものの、もちろん松本も納得の行かないゲームとなった。「動き出しとかもみんなやらなくて、王者の雰囲気を出してしまったというか、自分たちに挑戦者みたいな気持ちがなくて、受け身になってしまって、良い試合はできなかったと思います。本当に焦りました」。まさに良薬は口に苦し。1週間で再び気を引き締め直して、この日の駒場高戦に向かう。

「まず守備のところでしっかり献身的に行って、中盤のところではワンタッチ、ツ―タッチでシンプルに繋いで、ゴール前は自由に、冷静に、みたいな、しっかり決め切るところも練習でやってきました」。ゴール前は自由に、冷静に。松本がその自らの言葉を体現したのは、1点をリードした前半34分のことだった。

 FW伊藤聡太(3年)から縦パスが入る。「ごちゃごちゃってなって、自分のところにボールが来ました」。足元に落ちたボールを拾ったところから、得意のドリブルが幕を開ける。右サイドからグングンと中に切れ込みながら、エリアのすぐ外でスピードを落として切り返しで方向転換。右足を振り抜くと、ボールは左スミのゴールネットへ転がり込む。「ボールを持って、ドリブルで運んで状況を打開できるのが自分の良いところだと思います」という自己分析通りの貴重な追加点。ファインゴールでチームをさらなる勢いに乗せる。

 1ゴールでは終わらない。3-0で迎えた後半17分。今度はストライカーのような嗅覚を披露する。伊藤のスルーパスから左サイドバックのDF入江羚介(2年)が走り出したのを確認すると、すかさずポジションを取り直す。「クロスをニアに走り込んで決めるというのは練習から凄くやっているので、いつも入江から低くて速いクロスが来ますし、練習の成果がそのまま出たかなと思います」。ニアでプッシュしたボールはきっちりゴールへ。松本のドッピエッタもあって、チームも4-0で快勝。苦戦した初戦の反省をしっかり生かして、最高の形で勝利を手に入れた。

 福井へ乗り込んだ夏のインターハイでは、負傷明けということもあってメンバー外に。ただ、バックアップメンバーとしてチームには帯同していた。「バックアップの人もボトルの準備とか凄く大変だったので、そういう感謝の気持ちを忘れないでやりたいなと思いました。それからは守備も献身的に行かないといけないとか、後ろの人たちが必死に守ってくれるから自分が決めなくてはいけないとか、そういう強い気持ちが出てきました」。ピッチの外側にいたからこそ、より試合に出ることの意味を再確認することもできた。

 中学時代は鹿島アントラーズノルテジュニアユースでプレー。望んだユース昇格が叶わなかったことで、この高校の存在が自分の中で大きくなったという。「ユースへの昇格から落ちてしまった時にすぐに声を掛けてくれて。『このチームなら全国に行けるよ』と言ってもらったので決めました。凄く選手層が厚くて、練習から凄く競争があって、みんな上手くなれているなと思います」。ハイレベルな仲間と切磋琢磨してきたことで、成長してきた自分もしっかり実感しているようだ。

 夏には足を踏み入れることができなかった、ラインの向こう側。全国のピッチに立ちたい気持ちはとにかく強いが、挑戦者だというスタンスはもちろん忘れない。「自分たちは王者ではなくて、挑戦する側という認識を持って、献身的にやっていきたいと思います」。

 託された7番は、カナリア軍団が日本一になった1992年度の高校選手権でキャプテンを務め、現在は指揮官を務めている日比威監督が背負っていたものと同じ番号。伝統の継承者。松本のダイナミックなプレーが、帝京の推進力をより一層研ぎ澄ませていく。

(取材・文 土屋雅史)
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