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[MOM3614]國學院久我山GK村田新直(3年)_自分で止めて、決める。守護神が志願の5人目でPK戦の激闘に終止符!

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PKストップ直後も冷静な表情を浮かべる國學院久我山高GK村田新直

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 選手権東京都予選Aブロック準々決勝 修徳高 1-1 PK2-4 國學院久我山高]

 5人目のキッカーは立候補だったという。決めれば準決勝進出。大きなプレッシャーの掛かる場面にもかかわらず、いつも通り冷静に、淡々とスポットに向かう。「いつも練習が終わった後に遊びみたいな感じで、助走を長く取って、サラーのPKをイメージしてやっていたので、緊張はあまりなかったです」。

 國學院久我山高の絶対的守護神。GK村田新直(3年=横浜FCジュニアユース出身)が豪快なキックをゴールネットへ突き刺し、“クリロナ”ポーズを力強く決めて、PK戦までもつれ込んだ激闘に幕が下ろされた。

 難しい試合だったことは間違いない。「相手がT2首位でどんどん前から来ることは分かっていたので、こっちはそれを跳ね返す強い気持ちで臨もうと思いました」と村田も話した通り、十分想定していた相手の勢いに上回られ、先制点も献上してしまう。後半終了間際に追い付き、延長戦こそようやく攻撃の時間を長く作ったものの、100分間では決着付かず。勝敗の行方はPK戦へと委ねられる。

「試合中は全然自分が良い守備もできずに、キックも乱れていて、味方に助けられていたので、取り返すのはPK戦しかないと思っていて、自分が絶対に止めて勝とうという気持ちでしたし、チームのために止めたいなという想いでやっていました」。

 先攻の國學院久我山は1人目が失敗。1-1で迎えた後攻の修徳は2人目。村田は対峙するキッカーを見つめながら、頭の中で作戦を練ったが、読みは外れていたという。「助走的に右に蹴りそうだったんですけど、結構真ん中に来て、足が残っていたのでしっかり止められました。何回か足で止めたこともありましたし、足を残すことも結構大事だなと普段から思っていたので、それが生きたかなと思います」。とっさに出た左足がボールを蹴り出す。

 修徳の3人目。今度は読みも当たり、想像通りのコースにキックが飛んでくる。「あれも完全に左だとわかっていて、助走的に思い切り蹴ってくると思ったので、自分も思い切り飛んで跳ね返そうという気持ちでした。ちょうど力が伝わるところにボールが飛んできたので、しっかり弾けましたね」。両手で弾いたボールは左のポストに当たって、ピッチの中へ跳ね返る。

 印象的だったのは、2人目も、3人目も、スーパーな反応で相手のキックをストップしたものの、守護神はここでも冷静さを保っていた。「まだ終わっていないので、勝利が決まった時に喜びを爆発させようと思っていました」。

 そして、5人目。決めれば勝利が決まる國學院久我山は、1人だけユニフォームの色の違う選手がゆっくりとペナルティスポットへ歩み出る。「5番目、蹴りたいなって。最後に決めて勝つというのはカッコよかったので、自分もそうなりたいなと思いました」。長めの助走から村田が選んだコースはど真ん中。ゴールネットが激しく揺れる。

 右手を突き上げながら、駆け出した緑のユニフォームが宙を舞う。「ちょっと何かしらやろうと思っていたんですけど、とっさに出たのがクリロナでしたね(笑)」。ようやく飛び出した感情の発露。殊勲の“クリロナ”は、駆け寄ったチームメイトの輪の中へ消えていった。

 自ら5人目に立候補したのには、過去に目にしていたあるイメージがあったからだという。「2年前の村上健くんのイメージが強かったので、最後は自分が決めて勝ちたいなというふうに思っていました」。その2年前。國學院久我山が臨んだ高校選手権2回戦の専修大北上(岩手)戦はPK戦へ。当時の守護神だった村上健(現・慶應義塾大)は7人目のキックをストップすると、自らも冷静にキックを成功させ、勝利の立役者として脚光を浴びた。村田はあの日の村上の雄姿を、自身に重ね合わせていたのだ。

 昨年の高校選手権予選で敗れた準決勝の試合後、ベンチメンバーだった村田は“先輩”に未来を託されていた。「去年は自分もベンチで負けるところを見ていて、試合後に健くんから『次はオマエの番だぞ』と言われたんです。みんなが自分に期待してくれていると思いますし、それに応えられたらいいなと思います」。

 期待は意気に感じるタイプ。次の舞台は西が丘。1年前にチームが敗れたピッチで、相手こそ違うものの、リベンジを誓っている。「どんな試合内容でも負けたら終わりなので、これから優勝に向けて、しっかり勝ち切ることを続けたいと思います」。

 淡々と、それでいて、熱い炎を常に内側で燃やし続ける守護神。村田の力が必要な時は、これからの戦いの中で必ずまたやってくるに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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